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『中国について語ろう①』三橋貴明 AJER2014.10.14(5)

http://youtu.be/1dTfhR8UNKE

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一般参加可能な講演会のお知らせ

2014/11/04 『Voice』特別シンポジウム「2015年の安倍政権を占う」

小浜逸郎氏、藤井聡氏、三橋貴明氏、柴山桂太氏が安倍政権の経済政策を斬る! http://voice.peatix.com/

2014/11/14 東京都トラック協会 ロジスティクス研究会 三橋貴明氏 講演会 テーマ「生産性向上のためのインフラ整備-運送サービスで考える-」

http://ws.formzu.net/fgen/S54394876/

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 本日はKADOKAWA/中経出版「原発再稼働で日本は大復活する! 」の発売日です。

 タイトルに「原発再稼働」と入っていますが、実は本書は大きく二部構成になっています。一部の方には、原子力発電所の話は全く出てきません。
 一部のテーマは、ずばり「ウクライナ危機とガス」になります。



ロシアとウクライナのガス協議、合意に至らず-29日に再交渉
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NDTI3R6KLVRX01.html
 ロシアからウクライナへの天然ガス供給再開に向け、欧州連合(EU)の仲介で21日にブリュッセルで開かれた協議は今後の支払いをめぐり両国の溝が埋まらず、29日の次回会合で合意を目指すことになった。
 EUの行政執行機関、欧州委員会のエッティンガー委員(エネルギー担当)は21日、ロシア国営ガス会社ガスプロムからウクライナ国営エネルギー会社ナフトガスへの供給再開を図る合意案を当事国政府と企業で議論する必要があると説明した。合意の草案はウクライナが年内に未払いのガス代金31億ドル(約3300億円)を支払えば、ロシアは3月までガス価格を1000立方メートル当たり100ドル引き下げ、385ドルにするという内容。
 ロシアのノバク・エネルギー相は債務支払い条件に関して交渉担当者は合意したが、今後の供給に対する前払いの財源についてまだ議論が必要だと述べた。ウクライナのプロダン・エネルギー相は今後数カ月のガス供給量がまだ決まっていないと語った。
 エッティンガー委員は協議終了後、記者団に対し「全員が宿題を持ち帰り、29日までに準備を万全に整えて決定に臨むとわれわれは決断した」と説明。「欧州全体に今冬の供給を確保する上で一定の展望が開けた」と語った。 』


 そもそも、なぜウクライナとロシアは「ガス戦争」を経た上で、熱い戦争に突入したのか。実は、ウクライナの歴史が大きく絡んできます。


 日本国民は、ウクライナの歴史をほとんど知りません。

 わたくしは、これまで著作にギリシャ、ミャンマー、スウェーデン、韓国などの歴史を組み込んできました。とはいえ、ウクライナほど「悲惨な歴史」を経験した国は、他に知りません

 そもそも、ウクライナはマッキンダーの地政学でいう「ハートランド」に位置しています。ウクライナ「地域」のコサックたちは、周囲にモスクワ大公国(ロシア)、ポーランド=リトアニア、ハプスブルク、そしてオスマントルコと「大国」に囲まれ、国境線が目まぐるしく変わっていきます。


 ボフダン・フメリニツキー、そしてイヴァン・マゼーパと、ウクライナ・コサックに担ぎ出されたヘトマン(将軍)たちが、何度も独立戦争を戦います。とはいえ、最終的にマゼーパ軍とカール12世(スウェーデン王)の連合軍が、大北方戦争においてモスクワのピョートル一世の軍とポルタヴァの地で「決戦」します。結果は、モスクワ軍の完勝に終わりました。ウクライナ独立の夢は、この時点で一度、完全に途絶えます。

 ポルタヴァ以降も、ウクライナ地域はモスクワ大国とポーランドに分割され、最終的にはエカチェリーナ二世時代に「ロシアの一地方」すなわち「小ロシア」になりました(本当にこう呼ばれていた)。


 その後、ウクライナ地域は第一次世界大戦末期に一度、ウクライナ国民共和国として独立。ところが、その後、ウクライナ地域では共和国軍、モスクワのボルシェビキ、ドイツ・オーストリア連合軍、ポーランド軍、フランス軍、ルーマニア軍が入り乱れて殺し合う戦場と化してしまいます。最終的に、ボルシェビキが勝者となり、ウクライナ国民共和国は崩壊。ウクライナ社会主義ソヴィエト共和国として、ソ連の一部になってしまいました。

 現代のウクライナ人は(特に西部のウクライナ人は)、ウクライナ社会主義ソヴィエト共和国について、
ロシアに占領されていた時代
 として捉えており、ウクライナ人国家とは認めていません。


 ウクライナ社会主義ソヴィエト共和国時代のウクライナは、スターリンによる弾圧を受け、「ヨーロッパのパン籠」と呼ばれるほど豊かな地であるにも関わらず、350万人もの餓死者を出します。さらに、ドイツのバルバロッサ作戦以降、ウクライナは独ソ戦の主戦場となり、何と人口の六分の一、530万人もの犠牲者を出してしまったのです。

 第二次世界大戦が終わり、1969年。ソ連によるガスの西欧への輸出が始まりました。ウクライナ・ルートでパイプラインが整備され、当初はドイツ、イタリア、オーストリアに天然ガスが輸出されました。


 ソ連崩壊後、ウクライナはようやく念願の独立を達成するわけですが、今度はロシアとの間に度重なる「ガス戦争」を繰り広げることになります。理由は、書籍の方で詳しく書きましたが、いずれにせよ日本国内の報道にのみ接していると、ウクライナを舞台とする「ガス戦争」について、
「ロシアが政治的に天然ガスを利用し、ウクライナや欧州に圧力をかけている」
 と、読み取れてしまうかも知れません。とはいえ、上記は一方的な見方というよりは、普通に間違いです。


 ロシアのガスプロム社は、単にウクライナがガス代金を滞納しているため、ガス供給をストップしているだけなのです。無論、ガスプロム社がガス価格を引き上げていったのは確かですが、元々のCIS諸国に対する価格は、市場を無視した「ダンピング価格」でした。

 要するに、ロシア側が安くガスを提供することで、CIS諸国に政治的影響力を発揮しようとしたのです。つまり、ガス価格の(市場価格に合わせた)引き上げではなく、かつての極端に安いガス価格の方が、「天然ガスを政治利用」していたわけでございます。


 この種の話は、国内マスコミにはまず報じられません。是非とも「原発再稼働で日本は大復活する! 」第一部で、現在進行形で続いているウクライナ危機の「真相」を知って頂きたいと思います。日本のエネルギー安全保障とも、直接的に関係がある問題なのです。

(明日に続きます)


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