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『2014年4-6月期のGDP改定値を受けて①』三橋貴明 AJER2014.9.16(11)
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フランスとは関係ないですが、重要なニュースなので、記録のため。
『民生用電子機器国内出荷額、8月は16.8%減
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ25HDW_V20C14A9TJ1000/
電子情報技術産業協会(JEITA)が25日に発表した8月の民生用電子機器の国内出荷額は前年同月比16.8%減の826億円だった。5カ月連続で前年実績を下回った。前年同月比の落ち込み幅が16%を超えたのは2013年6月(22.4%減)以来1年2カ月ぶり。49型以下の薄型テレビなどの映像機器を中心に失速したことが響いた。
JEITAによれば「消費増税による需要減に加え、週末を中心に悪天候が続いたことが要因」という。6~7月に開かれたサッカー・ワールドカップが終わり、「薄型テレビの販促イベントが終了したことも一因」としている。(後略)』
新車販売台数が対前年比10%近いマイナスになっているのも、天気のせい。
東京の新築マンション販売が対前年比50%近いマイナスになっているのは、台風のせい。
家電(民生用電子機器)が対前年比17%近いマイナスになっているのも、天候のせい。
何というか、「ドツボにはまる」とは、まさにこのことだなあ、と、思わざるを得ない、消費税増税の悪影響の言い訳が続きます。ここまで販売が落ちている以上、9月末に発表になる8月の鉱工業生産指数速報は悲惨なことになっているでしょう。(生産減、在庫増、稼働率減の三冠王でしょう)
結果的に、企業が生産調整に入ると、まんま97年と同じ「デフレ化」のプロセスを歩き始めるということになります。それでも安倍政権は、
「天気のせい」
と、強弁し、消費税再増税を強行するのでしょうか。
さて、フランス。
『仏、欧州景気の足かせに 成長率下方修正で企業支援へ転換
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM23H05_T20C14A9FF1000/
ユーロ圏2位の経済規模を持つフランスが欧州景気回復の足かせになっている。経済成長率は下方修正、失業率も改善の兆しはない。オランド大統領は経済政策を転換し、企業負担の軽減で経済成長を実現する青写真を描く。だが「企業優遇」との批判が噴出して支持率が低迷し、野党は攻勢を強める。ドイツなど各国は改革実現に向けた圧力をかけている。(後略)』
フランスの各経済指標をまとめておきましょう。
・失業率 10.3%(7月)
・インフレ率 0.5%(8月)
・長期金利(直近) 1.32%(!!!)
・第2四半期経済成長率 ゼロ
と、明らかに「デフレ化」しつつあるのが、現在のフランス経済というわけでございます。
フランス政府は今月の中旬に、2014年の実質成長率見込みについて、従来の1%から0.4%に引き下げました。が、どこかの国と同様に、0.4%という目標ですら達成できるのかどうか、危ぶまれています。
インフレ率が低迷し、長期金利が史上最低水準なのですから、フランス政府は、
「政府が通貨を発行し、借りて、所得になるように使う」
という、デフレ対策の王道を実施する絶好のチャンスなのでございます。
ところが、何しろフランスはユーロ加盟国でございまして、仏政府に通貨発行権はございません。金融政策の「主権」をECBに委譲している限り、フランス政府が主体的に大規模デフレ対策を打つことはできないのです。
とはいえ、何しろ失業率が二ケタの状況が続いていますので、オランド大統領は「何か」をしないわけにはいきません。金融政策は不可能。財政政策も自由にならないとなると、残るは「構造改革」しかないという話でございます。
8月下旬、オランド大統領は内閣改造を実施し、
「企業負担の軽減」
を経済成長につなげるとの方針を明らかにしました。内閣改造後、バルス仏首相は、
「企業を愛している」
と、発言。企業経営者たちの拍手喝さいを浴びたのでした。
具体的な政策としては、大規模法人税減税、企業の社会保険料の負担軽減でございまして、典型的なトリクルダウン政策です。加えて、各種の「規制緩和」を通じ、企業が事業を展開しやすい環境づくりを目指すとのことです。
覚えていない方が多いでしょうから、書いておきますが、オランド仏大統領はグローバリズムと戦うことを表明し、大統領に就任しました。選挙期間中、オランド候補(当時)の発言で最も有名なものは、
「真の敵は金融界だ」
だったのです。
当初のオランド政権が掲げていた政策は、大企業や富裕層への「増税」等、反新古典派、反トリクルダウン的な政策でした。
とはいえ、ユーロの呪縛により、いわゆるケインズ的な政策が打てず、失業率を引き下げられず、結局、オランド大統領も構造改革路線へと舵を切らざるを得なくなってしまったわけでございます。ドイツのメルケル首相は、9月22日にベルリンを訪問したバルス首相に、
「ユーロ圏は信頼されなければならない。仏改革の進展に期待している」
とプレッシャーをかけ、バルス首相は、
「フランスに向けられた不信は理解している。改革をやりきる」
と訴えたとのことでございます。エマニュエル・トッド氏ではないですが、フランスの大統領や首相が、まるでドイツの「副首相」のごとき有様になってしまっているわけです。
もっとも、オランド政権の政策転換は国民の顰蹙を買っておりまして、支持率は13%と、過去最低を更新しました。フィガロ紙は、オランド大統領の変質について、
「言っていることとやっていることが正反対」
と評し、大統領は「企業優遇」「公約違反」の批判を浴びています。
まさに、
「フランスよ、お前もか」
という感じですが、フランスはユーロ加盟国です。すなわち、金融政策、財政政策を使えない以上、オランド大統領が「何か」をやろうとした際、構造改革以外の選択肢が存在しないも同然なのです。
とはいえ、日本は違います。日本は金融財政政策のパッケージにより、正しくデフレから脱却し、内需中心の成長路線に戻る「構造」を持っています。それにも関わらず、現実の安倍政権は財政政策の拡大に乗り出さず、それどころか消費増税という緊縮財政を推進。もちろん、企業優遇の構造改革は率先して実施するという、奇妙な状況になっています。
情報の歪みとは、かくも恐ろしいものなのです。
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