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チャンネルAJER更新しました!
『2014年4-6月期のGDP改定値を受けて①』三橋貴明 AJER2014.9.16(11)
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本日はチャンネル桜「桜プロジェクト」に出演いたします。
http://www.ch-sakura.jp/programs/program-info.html?id=1520
ビジネス社から「言志 2014年10月 vol.1
」(チャンネル桜責任編集)が刊行されました。すでに、Amazon在庫切れに陥っているようでございます。皆様、書店等で是非、お買い求め下さいませ。(わたくしは勿論、青山繁晴先生や中野剛志先生も寄稿されていますよ)
さて、先日、ご紹介した中野剛志先生の「世界を戦争に導くグローバリズム (集英社新書)
」も、言志Vol1同様に売れまくっていますが、本書は歴史的、政治的、経済的面から現在のグローバリズムの凋落、アメリカの中長期的な衰退について語ったものです。
特に、日本の言論人があまり注目しない「アメリカの中東戦略」について書かれた章は秀逸です。ネタばれになるため、あまり詳しくは書きませんが、シリア問題を泥沼化させてしまったオバマ政権が、
「理想主義から現実主義」
へとシフトしつつあることを解説しています。
当初、シリアの内戦をめぐり、アメリカの同盟国(サウジアラビア、イスラエル、トルコ、カタール)の足並みは、反アサドでそろっていたのですが、アメリカは軍事介入を躊躇っていました。それにも関わらず、オバマ大統領が2012年8月20日、
「化学兵器の使用はレッドライン(超えてはならない一線)を超えるもの」
と、明言してしまい、中途半端な軍事介入を余儀なくされてしまいます。結果的に、シリア情勢は泥沼化し、現在のイスラム国勃興へと繋がりました。
改めて考えてみると、「化学兵器の使用がレッドライン」になる理由が不明確です。人道上の問題があるというならば、それ以前のアサドの通常兵器による自国民殺戮も「人道上の問題」があるという話になります。通常兵器で殺されたシリア人と、化学兵器で殺されたシリア人に「差」があるはずがないわけです。
それ以前に、「国家の主権」という点でみれば、アメリカがシリアに軍事介入することは、いずれにせよ正当化されません(人道上の問題を放置せよ、という話ではありません)。
結局、アメリカは「理想主義」から「現実主義」へ政策を転換させようとしており、「人道上の問題」から軍事介入をする際も、後手後手に回らざるを得なくなっているわけでございます。以前(ブッシュ時代)のアメリカであれば、早期の段階で大規模軍事介入を実施し、アサドを打倒していたでしょう。結果、現在のイラク同様に無政府状態になったと思いますが、と言いますか、イラクの経験があるからこそ、アメリカは「現実主義」にシフトしつつあるのでしょうが、いずれにせよ、
「アメリカは世界の警察官」
という認識は、もはや改めなければならないのです。
『オバマ氏「米単独の戦いではない」中東5カ国参加、イスラム国数十人死亡
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140924/amr14092401070004-n1.htm
米軍は22日(シリア時間23日)、シリア領内でイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」に対する空爆を中東諸国と共同で実施した。米軍は8月上旬からイラクで空爆を続けているが、シリアでは初めて。米国を中心とする対テロ作戦は大きな転機を迎えた。
オバマ米大統領は23日、ニューヨークで国連を舞台にイスラム国と対抗する有志連合への協力を呼びかけるのを前に、ホワイトハウスで声明を発表。中東諸国が空爆に加わったことを挙げ、「米国単独の戦いではない」と述べた。
米中央軍によると、戦闘機、爆撃機、無人機が参加し、紅海やペルシャ湾北部の艦船から巡航ミサイル「トマホーク」も発射された。攻撃にはヨルダン、バーレーン、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)の中東諸国が加わり、イスラム国が「首都」と称するシリア北部ラッカなど4カ所で指揮統制や補給などの関連施設を計14回空爆。ロイター通信はイスラム国の戦闘員数十人が死傷したと報じた。(後略)』
昨日、アメリカ軍はイスラム国への空爆を実施しましたが、オバマ大統領は、わざわざ、
「米国単独の戦いではない」
と声明を発表しています。
中野氏の著作を読んで頂ければ分かりますが、アメリカは現在、中東、東欧(ウクライナ)、そして東アジア(東シナ海、南シナ海)と、ユーラシアの三カ所で紛争または紛争の恐れに対処しなければならない状況になっています。そして、アメリカが世界の三カ所の紛争に同時に単独で対処する能力は、もはや存在しないというのが冷徹な真実なのです。
少なくとも、中国海軍もしくは「中国の漁民」が尖閣諸島を脅かした際に、アメリカ軍が「助けに来てくれる」などと考えるのは、甘いと断ぜざるを得ません。しかも、本ブログで散々解説した通り、日米安保条約第五条は、日本に安全保障の危機が生じた際に、無条件で米軍が介入するなどとは書いてありません。しかも、介入対象は「日本の施政下の領域」における紛争であるため、中国側が尖閣諸島に(例えば)1万人の漁民を上陸させ、実効支配下においてしまうと、いずれにせよ米軍は介入しないということになってしまいます。
尖閣諸島、あるいは台湾で「有事」が起きた際に、日本はいかに対処するべきなのか。あるいは、いかに準備をするべきなのか。もしかしたら、すでに「手遅れ」なのかも知れません。あるいは、まだ間に合うかも知れません。
いずれにせよ、日本国民が、
「いざというときはアメリカが無条件で助けてくれるさ」
などと考えているならば、政府は有効な手を打ちようがないわけです。
時代は変わった。という事実が、中野氏の「世界を戦争に導くグローバリズム (集英社新書)
」を読むと如実に理解できます。アメリカはもはや、世界の警察官ではないのです。
日本国民は今こそ現実を見据え、安全保障について真剣に、本当に「真剣に」考えなければなりません。
「日本国民は今こそ安全保障について真剣に考えるべき」に、ご賛同下さる方は、
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