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『2014年4-6月期のGDP改定値を受けて①』三橋貴明 AJER2014.9.16(11)

http://youtu.be/4toOUMcHQ5o

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 本日9月18日、スコットランドで独立の是非を問う住民投票が実施されます。現在のスコットランドは、独立派と反対派で、スコットランド社会は「真っ二つ」な状況になってしまっています。


 特に、「どぶ板」の運動を展開している独立派の反攻は凄まじく、一般市民の間で独立反対とは言えない「空気」を作り出すことに成功しているようです。とはいえ、結果は分かりません。


スコットランド きょう住民投票
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140918/k10014682281000.html
 イギリスからの独立の賛否を問うスコットランドの住民投票は、直前の世論調査で賛成と反対がほぼきっ抗した状態のまま、日本時間の18日午後から投票が始まる予定で、世界の政治経済に大きな影響力を持つイギリスが分裂する事態につながるのかどうか、有権者の判断に世界中の関心が集まっています。
 イギリス北部のスコットランドの独立を巡る住民投票は、日本時間の18日午後3時からスコットランドにある2600か所の投票所で始まります。
 直前の世論調査では、独立に賛成が48%、反対が52%と反対がややリードしていますが、その差は僅かで、賛成派・反対派の双方は直前まで運動を繰り広げてきました。
 このうち、独立賛成派の運動を主導してきたスコットランド民族党のサモンド党首は、支持者に対して、「この住民投票は人生に一度のものであり、このチャンスをつかみ取らなければならない」と述べて支持を訴えました。
 これに対して、反対派のブラウン前首相は集会で、「われわれがこれまで一緒に作り上げてきたこの国を永遠に分裂させてしまってはならない」と述べて反対を呼びかけました。
 投票では、「スコットランドは独立国になるべきか」という質問に「はい」か「いいえ」の二者択一で答えることになっていて、独立への賛成が反対を1票でも上回れば、投票率に関係なくスコットランドの独立が決まることになります。
 イギリスは先進国として政治面、経済面で国際的に大きな影響力を持つだけに、分裂して国が混乱する事態につながるのかどうかスコットランドの有権者の判断に世界中の関心が集まっています。
 投票は日本時間の19日午前6時に締め切られ、即日開票されることになっていて、19日午後には大勢が判明する見通しです。(後略)』


 さて、スコットランドの独立賛成派の言い分の一つに、「経済的な利益」を得られる、というものがあります。スコットランドには北海油田があるため、石油収入で財政が潤い、世界で有数の富裕国になれるだろうという「期待」があるのです。


 もっとも、独立派の北海油田埋蔵量210億バレル、2018年度の税収64億ポンドは、楽観的過ぎると批判はされています。反対派は、18年度の税収は35億ポンドに過ぎないと主張しています。


 経済的利益以上に、スコティッシュたちが独立を求める理由は、「民主主義」にあります。スコットランドに住まう人々は、自分たちの投票が十分に主権として反映されていないと考えているのです。(独立派は)


 特に、サッチャー政権とメジャー政権の新自由主義的な政策は、スコットランド経済に大打撃を与えました。炭鉱が閉鎖され、さらにサッチャー政権に至っては、「新自由主義者理想の税制」である人頭税を、スコットランドに先行的に導入。スコティッシュたちの猛反発を買ってしまいます。


 スコットランドにおける、イギリスの保守党の嫌われっぷりは半端ありません。スコットランド議会59議席のうち、保守党の獲得議席数は何と1です


 逆に、英国議会におけるスコットランド議員の割合は全体の9%に過ぎず、スコティッシュたちが反対する政策に声が届きにくくなっています。


 結局のところ、スコットランドの問題は、一国(あえて「一国」と書きますが)における、各地方(あえて「地方」と書きます)間の不平等感に起因していることが分かります。例えば、スペイン屈指の豊かな州であるカタルーニャ地方もまた、スペインからの独立を模索しています(11月9日に住民投票が実施される可能性があります)。


 日本でいえば、東京から地方に「所得移転」される地方交付税について、
「東京から税金が吸い上げられ、地方にばらまかれる」
 などと、ナイーブ(幼稚、という意味)な批判をする人がいます。


 とは言え、東京が首都直下型地震に見舞われたとき、わたくし達東京都民は地方の日本国民に助けてもらわなければなりません。互いに「助け合う」ことを可能とするためには、日本の各地方が(東京を含め)経済成長し、それなりの「供給能力」を持っていなければならないのです。


 すなわち、安全保障という一点をとっても、一地方からその他の地方(あるいは中央政府)に所得が移転されることは正当化されるはずです。


 もっとも、わたくしは別にスコットランドの独立派を批判しているわけではありません。何しろ、スコットランドの独立の動きには、経済問題、民主主義の問題以外にも、複数の要因があるのです。他国人であるわたくしには、うかがい知れない部分も多いのでしょう。


 例えば、現時点でイギリスが「戦争」という非常事態を迎えた場合、どうなるでしょうか。スコティッシュたちは、「国家」が他国と戦闘状態に入るという非常事態を迎えてすら、「独立」を志向するのでしょうか。(あるいは、大規模自然災害でも同じです)


 結局のところ、イングランド人とスコットランド人の間で、
「困ったときはお互い様」
 という、ナショナリズム(国民意識)の共有がなされていたか否か、の問題のようにも思えます。とはいえ、スコットランドとイングランドは、すでに300年間も一緒に生きてきたわけです。 


 そう考えたとき、
「国家とは何か?」
「国民主権とは何か?」
「ナショナリズムとは何か?」
 という、根源的な問題に頭を巡らせずにはいられないわけでございます。



本日のエントリーで改めて「国家とは何か?」について考えて下さった方は、

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