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『ウクライナ危機①』三橋貴明 AJER2014.8.19(3)

http://youtu.be/cyaQKYmCqLo

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2014年9月13日(土) 大念寺本堂 三橋貴明講演会

 テーマ「増税による「国民経済の崖」を乗り越えるには、どうしたらいいのか?」

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_47.html#Koen

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 土木、建設業界の人手不足感は、消費税増税の反動で一服感(凄まじい悪化が止まった、程度ですが)がありますが、「人手不足」という問題自体は、我が国の他の産業に伝播していっています。予想通りです。そして、素晴らしいことです。

 昨日、ある方に聞いたのですが、都内の「から揚げ専門店」の業績が好調になり、新たなチャネルで販売を始めようとしても、人手が完全に不足しているとのことでございます。人手不足に陥っている外食産業は、別にすき屋やワタミに限らないのです。


 最近、わたくしは講演の最後に、必ずこの話をします。


「何しろ少子高齢化なわけですから、今後の日本では需要に対し供給能力、特に「人材」という供給能力が不足していくでしょう。すなわち、人手不足の深刻化です。
 もっとも、人手不足というのは、働き手にとっては嬉しい環境です。何しろ、前と同じ労働を提供するだけで、所得が増えるのです。前以上の労働を提供しても、所得が減るのがデフレですから、真逆になるわけです。
 では、わたくし達、経営者にとってはどうか。(三橋の講演は、中小企業関連の団体が多いので、大抵は聞き手は経営者です)
 経営者は、判断を迫られることになります。確かに、人件費が上昇していきます。とはいえ、高い人件費を費やし、人材を雇用した方が、儲かるかも知れない。あるいは、儲からないかも知れない。分かりません。
 分かりませんが、儲かるかもしれないと考えた経営者が、実質賃金の上昇を受け入れたとき、日本はようやく【国民が豊かになる経済】を取り戻すことができるでしょう。要は、儲かるか、儲からないかの問題であり、儲かるならば少々高い賃金であっても、経営者は人を雇用することを決断するのです。
 今後の日本は、少子高齢化で生産年齢人口が減っていきます。素晴らしい話です。何しろ、需要に対し供給能力が減るので、高度成長期と同じく、恒常的なインフレギャップ状態になるわけです。高度成長期のインフレ率は、GDPデフレータベースで5%を超えていました。
 供給能力に対し、需要が大きくなっていた(5%ほど)ため、企業は設備投資を拡大し、人材が雇用され、働く人々の生産性が劇的に向上し、日本は高度成長したのです。今後の日本は、高度成長期と同じ【環境】を迎えることになります。

 もっとも、当たり前ですが、高度成長期と同じインフレギャップ状態になったとしても、企業が投資を増やさず、政府や国民が生産性向上のための努力をしなければ、経済は成長しません
 また、我が国が今後、高度成長期と同じインフレギャップ状態になるとして、一つだけ、絶対にやってはならないことがあります。それは、インフレギャップを外国人で埋めようとすることです


 現在の日本は、未だ「真の意味の人手不足」ではありません。と、再三、書いてきました。何しろ、完全雇用が達成されたわけでもなく、労働参加率(生産年齢人口の中で、労働市場に参加している割合)も世界一というわけではないのです。


 というわけで、試みに日本の生産年齢人口と労働参加率をグラフ化してみました。


【日本の生産年齢人口(左軸、万人)と労働参加率(右軸)】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_47.html#Sanka


 上記の通り、すでに生産年齢人口の減少と労働参加率の増加が始まっています。

 ここからは「推測」ですが、我が国は人口構成という「構造問題」から、必然的にインフレギャップ状態(しつこいですが「高度成長期と同じく」)になるはずだったのではないでしょうか。ところが、97年の橋本緊縮財政によりデフレ(総需要の縮小)が始まり、生産年齢人口の減少という「供給能力の縮小」が吸収されてしまったように思えるのです。 


 分かりやすく言うと、日本はとっくに人手不足状態にならなければならなかったのが、デフレで需要が増えないため、問題が顕在化しなかっただけなのでは? という仮説です。

 現在は、需要の縮小が(消費税増税前までは)止まっていましたので、労働参加率が普通に増えています。すなわち、日本人が前よりも働きだしたのです。


 あとは、働く日本人の実質賃金が上昇する「構造」を取り戻すことができれば、柴山先生も主張されている「賃金主導の成長」を実現できるはずです。当たり前ですが、外国移民の受入(=外国人労働者の受入)や、労働規制の緩和、労働時間規制の緩和、配偶者控除の廃止等、不要に労働市場の競争を激化させる政策を採ってしまうと、元の木阿弥になってしまいます。(消費税増税による、需要強制縮小策も、もちろん大問題です。)


 何で、労働参加率についてしつこく取り上げているかと言えば、アメリカでは日本と真逆の減少(労働参加率の低下)が起きているためです。


FRB副議長:米労働参加率の低下を懸念-長期の成長鈍化も
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NA4HRA6KLVR401.html
 米連邦準備制度理事会(FRB)のフィッシャー副議長は、米国で労働力の供給が伸び悩んでいることについて、長期的な経済成長の鈍化につながりかねず、「懸念材料」だと述べた。米経済は住宅部門が回復の重しになっているほか、新興市場の「広範な」減速にも見舞われているとも語った。
 同副議長は11日、スウェーデン財務省がストックホルムで開催した会合の講演テキストで、労働参加率の低下に関し、低成長による部分がどの程度なのか「かなりの不確実性」があるとしつつも、おおむね高齢化を反映したものだとの考えを示した。7月の米雇用統
計では、労働参加率は62.9% と1978年以来の低水準近辺となった。 』


ジャクソンホールでのイエレン議長講演要旨
http://www.asahi.com/business/reuters/CRBKBN0GM1H1.html
(前略)<労働参加率>
 2008年以来見られている労働参加率の低下には、1)定年退職、2)障害、3)学校への入学、4)労働者の失望を含むその他の要因、という4つの要素が大きくなったことが背景として挙げられる。
 これらのうち、労働市場が軟調だったことが労働者の失望が増大した直接の要因だった可能性が高い。このため、労働需要がさらに増加し失望した労働者の多くが労働市場に呼び戻されると予測することは理にかなっている。
 実際、労働参加率が昨年終盤から横ばいとなっていることは、労働市場をめぐる状況に著しい改善が見られていることを受け、失望した労働者が労働市場に戻りつつあることを一部反映している可能性がある。
 これが事実なら、労働参加率の循環的な低下は和らいだ可能性がある。(後略)』


 ここからは、またもや仮説になってしまいますが、労働市場の競争が極めて厳しく、実質賃金の切り下げ競争が起きている国、つまりは、
ワーキングプアになりやすい国
 があったとします。


 太平洋の反対側に、労働市場の規制緩和が進められ、実質賃金が下がっているものの、構造的に人手不足であるため、上の国と比べると相対的には、
ワーキングプアになりにくい国
 がありました。(例えば、ですよ。例えば)


 さて、どちらの国の生産年齢人口の国民の方が、積極的に労働市場に参加し、労働参加率を押し上げるでしょうか。より分かりやすく書くと、どちらの国の国民が積極的に「勤労」の精神を発揮するでしょうか。


 という、極めて重大な「問い」を、読者の皆様に投げかけたいわけです。ここに、日本経済の「繁栄」の鍵があります。



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