税収弾性値(後編)

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『「原発ゼロ」の真実①』三橋貴明 AJER2014.7.15(3)

http://youtu.be/txi8clj3I_8

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 さて、税収弾性値の最終回です。
 甘利明経済再生担当大臣は7月11日、
財政健全化は名目GDP(国内総生産)の拡大を通じてしかできないことを心に刻む必要がある」
 と発言しています。


 まことにごもっともでございますが、ならば甘利大臣が「名目GDP(総需要)の縮小」をもたらす消費税増税に反対されないのはなぜなのでしょうか。甘利大臣は、別に消費税増税に反対するために上記の発言をしたわけではなく、単に法人税減税の方便として「名目GDP拡大で財政健全化」論を用いているに過ぎません。


 現在の政府、自民党では、
「法人税を減税するとして、その財源はどうするのか?」
 という、まことに「くだらない議論」が展開されているわけですが、甘利大臣は、
「法人税を減税しても、結果として企業の投資が伸び、名目GDPが成長すれば、財政健全化に向かう」
 と、言いたかったのだと思います。


 確かに、法人税を減税し、企業の「国内への設備投資」が増えれば、名目GDPが成長し、税収が増えるため、「法人税減税の財源を~」などとやることはナンセンスです。とはいえ、ならばなおのこと総需要(名目GDP)を引き下げる消費税増税に反対しなければならない上に、法人税減税も「設備投資減税」にすればいいでしょう? 何で無条件の法人税実効税率の引き下げなのですか?


 といった「真っ当な議論」が全く行われていないのが、現在の政府と自民党なのでございます。というわけで、「声を出すべき」自民党議員に、色々と知恵を付けて回っているわけでございます。


 とりあえず、一昨日、昨日と「税収弾性値」について取り上げましたが、本日が一応、最終回。本人は「はじめまして」などと書いていますが、実はこれまでに何度もご投稿下さっている成田佐倉@霞が関様のご投稿。


---税収弾性値に関する財務省への挑戦状 by成田佐倉@霞が関---
 はじめまして、成田佐倉@霞が関と申します。12月初旬予定の消費税増税の判断及びその前の有識者会合までに自分ができることを考えまして、税収の弾性値に関する財務省への挑戦状をたたきつけたいと思います。税収の弾性値の定義を確認した上で、当方の挑戦状(「成田佐倉レポート」)をお読みいただけますと幸いでございます。


■税収の弾性値の定義=(税収の変化率)/(名目GDP成長率) (絶対値評価)


 財務省は平成26年度予算に関しても、税収の弾性値1.1と推計している
http://www.mof.go.jp/budget/topics/outlook/sy2601a.htm


 この税収の弾性値1.1の根拠としては、2011年12月の審議会報告書「財政の健全化に向けた考え方」において考えを明らかにしており、現在もなお、正確なものであると主張している。
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia231209/01.pdf


 しかし、この税収の弾性値1.1の推計は明確に誤りである。税収の弾性値の実現値は図のとおりである。財務省の推計と乖離していることが分かる。なお、震災以降の数値は、原子力発電所の稼働がストップした影響で電気代が高まり、製造業が経済成長の恩恵を受けにくい状況にあることを加味する必要がある。


【図 日本の税収変化率と名目GDP成長率】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_47.html#taxgdp


【図 日本の税収弾性値(絶対値評価)】


http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_47.html#danseiti


 財務省は「財政の健全化に向けた考え方」においては、税収の弾性値の定義について、以下のように評価している。


 「特に、2000年度から2009年度までの毎年の税収弾性値を単純平均した数値をもって税収弾性値を4とする主張があるが、この分析は『単年度の税収の増減は、その年の経済成長率だけですべて説明できる』という成り立ち得ない仮定に基づくものであり、学術的には信頼できないものである。このような問題点を踏まえた回帰分析の手法が、先行研究15においても、また、内閣府の研究会が本年10月27 日にとりまとめた報告書16においても用いられており、これらの研究では、税収弾性値は従来考えられていた数値と大きな差はないとの結論となっている。」


 しかし、この財務省の見解は誤りだと言える。

 第一に、税収の弾性値の解釈が間違っている。税収の弾性値は定義のとおり、名目GDP成長によって、税収がどの程度変化するかの値であり、税収の変化を経済成長率”だけ”で”すべて”説明している訳ではない。つまり、解釈としては、「経済成長率と税収の変化にどの程度の関連性があるかどうかをあらわすもの」とすべきであり、財務省の解釈は、税収の弾性値の定義の曲解に基づくもので、学術的に信頼できないものである。


 第二に、研究会等の結果を基に、税収の弾性値を回帰分析的に捉えるべきであることを主張しているが、この研究結果に導かれる過程には誤りがある。


 1番目の誤りとしては、概要P2にあるとおり、「税収の弾性値の推計するにあたって、税制改正の影響を除いている」点だ。小学生でも分かることだが、消費税が上がったため、消費量を減らさない限りは納税額は多くなるし、所得が上がり消費金額が多くなれば、納税額は多くなる。税収の分析においては、税制の改正の影響を考慮しなければ正しい分析はできない。財務省では、”税収の弾性値については、税制の改正の影響を排除”するが、税収の分析(http://www.mof.go.jp/budget/topics/outlook/sy2601a.htm
時においては、”税制の改正を勘案”している。これは、まったくもっておかしい。平成26年度の税収予測は、平成25年度末までの税制改正及び経済状況(担税力等)、並びに平成26年度の税制改正を考慮した税収の弾性値と平成26年度税制改正の影響を考慮した予測を行うことが本来の姿である。


概要
http://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/k-s-kouzou/shiryou/k-s-3kai/pdf/1.pdf
本文
http://www5.cao.go.jp/keizai2/keizai-syakai/k-s-kouzou/shiryou/k-s-3kai/pdf/2.pdf


 2番目の誤りとしては、概要P4にあるとおり、税収の弾性値を回帰分析的にとらえている点である。この回帰式から得られる回帰係数βを持って、税収の弾性値と定義しているが、このような捉え方では、経済成長率の変化によって、回帰定数αが変化し、税収に変化をもたらす視点を無視していることになる


 繰り返しになるが、税収の弾性値が有意義であるのは、「経済成長率と税収の変化にどの程度の関連性があるかどうかをあらわすもの」だからであり、「経済成長率によって経済構造が変化し、それが税収の変化をもたらす点を無視し、経済成長率のみで説明できる税収への影響度合いを考えること」は無意味であるし、経済成長率の税収への影響の考慮に資するデータとはならない。


 第三に、財務省のビルトインスタビライザーに関する認識が誤っている点である。財務省では、税収の弾性値に関してわざわざ以下のような説明ページを用いて、分析をしているが、その中にある、


「近年の税収弾性値は高くなっており、経済成長により大幅な税収増が見込めるとの指摘もありますが、比較的安定的な経済成長を実現していたバブル期以前の平均的な税収弾性値は1.1です。研究者の分析では、近年は分母である成長率がゼロ%前後であることなどから数字が大きく振れやすくなっており、所得税の累進性が緩和されてきたことや、比較的弾性値の低い消費税のウェイトが上がってきていること等を踏まえれば、本来の税収弾性値は低下傾向(1強程度)と見られています。(注1)税収弾性値とは、経済成長に応じて税収がどの程度増加するかをあらわす指標で、具体的には、税収の伸び率を名目GDP成長率で除して算出されます。 (注2)2001年から2009年までの各年の税収弾性値を単純に平均すれば4との試算もありますが、これは、税収伸率▲2.7%、名目成長率▲0.7%というマイナス成長下での数値です。しかも、例えば2002年11.2(税収▲8.6%、名目成長率▲0.8%)といった異常値も含んでいます。」

 との記述は誤りである。


財務省説明ページ
https://www.mof.go.jp/faq/seimu/02.htm


 財政には上記記述にもあるとおり、所得税に累進課税制度が設けられていたり、黒字法人のみ法人税を納税する制度を設け、景気を自動的に安定化させる仕組み(ビルトインスタビライザー)を内在している。現在の日本は、デフレ下の不況にあり、黒字法人企業が低迷しており、失業率も高止まりし、生活保護受給者も多くなっており、担税力が極めて低い状態である。これは何を意味するかと言えば、経済成長により、赤字法人が黒字法人となり、失業者が減り、生活保護受給者が職を得た場合には税収が大きく増えることを意味する。つまり、担税力が回復する余地が大きいのである(橋本緊縮財政以前においては、現在よりも担税力が回復する余地は現在よりも小さいと言える)。

 
 また、税収の弾性値の分母がゼロ%前後であることを持って、税収の弾性値が大きく上振れするとして、税収の弾性値が大きくなることを統計上のエラーだと解釈しているが、これは、説明になっていない。担税力の回復余地が大きいために、少しの経済成長により、税収が大きく増加するのである


 注2についてだが、税収の弾性値は経済構造によって定まるものであり、税収と経済成長との関連性を表すものであるから、マイナス成長下である場合に数値が算出できないとすることに意義は持たない。加えて、確かに、2002年はITバブル崩壊等の影響があったが、これを異常値として省くことは後年度の評価を誤る(IT産業の担税力の回復余地を低く見積もることになる)ため、適切ではない。財務省はこの点(担税力の観点)を一切無視し、財務省でありながら、ビルトインスタビライザーの機能も正しく認識していない


 筆者の主張は、以上のとおりであるが、以下、まとめと、財務省への公開質問状を掲載させていただく。公開質問状の回答はHPに掲載されたい。マスコミ関係者はじめ、一般の方で、以下の公開質問状をご覧になった場合には、財務省へ回答するよう、迫っていただければ、幸甚です。


(まとめ)
 財務省の主張する”税収の弾性値1.1”は学術的に根拠がなく、経済成長率の変化を考慮した税収の試算・推計には役立たない


(公開質問状)
①財政を司る、貴省にあって、税収の弾性値1.1の推計が現実の実績値と大きくことなることについてどのような見解であるか。具体的かつ論理的に述べていただきたい


②税収の弾性値を回帰分析的に捉えることの妥当性・意義を具体的かつ論理的に述べていただきたい。その際、税収の弾性値1.1について、税制改正の影響を除いて試算されていることの妥当性・意義について論理的に説明されたい。

③税収の弾性値1.1の使用について、「現在の我が国が、担税力の回復余地が高い」ことに関連して、経済成長による担税力の回復によって税収が大きく増えることがないとする貴省の見解が妥当性をもつことの具体的かつ論理的な説明をお願いしたい。併せて、ビルトインスタビライザーがもたらす税収への影響についても言及していただきたい。

④昨今議論されている、法人税減税について、法人税減税は、ビルトインスタビライザーの機能を弱め、経済成長が財政再建につながる効果を弱めるものと理解しているが、この理解で正しいか見解を示されたい。加えて、経済成長を促すこと、担税力回復の観点から、時限的な投資減税が有効だと思われるが、この理解についても、見解を頂きたい。

⑤貴省の経済産業省に対する今後の戦略に関しては、税収の弾性値1.1の推計の誤りを認め、ビルトインスタビライザーの機能、担税力の視点について再認識し、経済産業省に法人税減税は財政再建に役立たないとしてあきらめさせる代わりに、時限的な投資減税で手打ちとすることが現実的かつもっとも国益に叶う戦略であると思われるが、見解を伺いたい。
---


 成田佐倉@霞が関様、ありがとうございました。

 成田佐倉@霞が関氏の「税収弾性値(絶対値評価)」を見ると、バブル崩壊までは極めて安定していた税収弾性値が、バブル崩壊後に激しく変動するようになったことが分かります。図は「絶対値評価」であるため、
「名目GDPがマイナス成長になった結果、マイナス成長率以上に激しく税収が落ち込んだ」
 場合であっても、税収弾性値は「高くなる」のでご注意ください(絶対値で見ているため)。


 興味深いことに、80年代からバブル崩壊まで、税収弾性値は「財務省が言い張る1.1」前後で安定的に推移しています。すなわち、担税力がピークに達していたという話でしょう。


 ということは、財務省が「言い張る」1.1の税収弾性値を安定的に実現するためには、財務省が望む消費再増税や政府支出削減という緊縮財政ではなく、日本のインフレ率が安定的に推移するまでデフレ対策を打ち続け、名目GDPが継続的に成長する環境を実現すればいいことになります。


 日本がデフレから完全に脱却し、名目GDPが安定的に拡大し、担税力が高まれば、税収弾性値は(過去の例を見る限り)財務省が「言い張る」1.1程度で落ち着くでしょう。


 逆に、財務省式にデフレ化政策を打ち続けると、名目GDPが不安定になり、税収弾性値は「大きくなる」わけでございます。


 いずれにせよ、三日間のシリーズでお届けした税収弾性値や消費税に関する議論を「政治家」が放棄するとなると、これは国民の主権を預かる資格がないと断定せざるを得ません。皆様も、本ブログのデータをご地元の政治家の方々などに突き付け、
きちんと議論しろ!
 と、プレッシャーをかけて頂きますようお願いいたします。「きちんとした議論」が行われるかどうかで、大げさでも何でもなく今後の日本の運命が決まるのです。


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