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『「原発ゼロ」の真実①』三橋貴明 AJER2014.7.15(3)

http://youtu.be/txi8clj3I_8

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 本日は三橋経済塾第三期第七回講義の開催日です。塾生の皆様、よろしくお願いいたします。


『〈格安タクシー禁止〉「規制強化で脱デフレを」三橋貴明氏/「価格規制緩和こそ必要」高橋洋一氏
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140718/plc14071815300016-n1.htm
 タクシー業界の過当競争を是正するため、事業者に強制的な値上げと台数削減を求めることができる通称「タクシー減車法」が今年1月に施行された。平成14年の参入規制緩和を見直したもので、国土交通省による格安タクシー業者への値上げ勧告が始まっている。一方で格安業者が裁判所に強制値上げの差し止めを求める動きも出てきた。行政による格安タクシー禁止の是非について、経済評論家の三橋貴明氏と、嘉悦大教授の高橋洋一氏に見解を聞いた。(溝上健良)

≪三橋貴明氏≫
 --平成14年の参入緩和について
 「経済状況によって規制緩和が正しいか正しくないかが決まるが、14年当時はデフレ下で需要不足であり、供給過剰状態のときにタクシーの参入規制を緩和したのはまずかった。結果的に料金は下がったが、競争が異様に激化してタクシー運転手の貧困化を招いてしまった。消費者としてはいい話かもしれないが、事業者側からの目線も必要だ。その点で今回、規制のあり方を見直すのは当然だといえる」
 --今回の規制強化は評価できると
 「働く人たちの所得が増えていくのが正しい政策のあり方で、そのためにある程度、料金が上がるのはやむを得ないだろう。デフレが長く続いた結果、日本人は『価格は下がるもの』と思っている人が多いが、基本的に価格は上がるもの。ここ20年、タクシー料金がほとんど変わっていないのは異常なことで、何でも『安ければいい』との考えはやめるべきだ」(後略)』


 というわけで、タクシーに限らず「サービス業」の人件費や生産性について考えてみたいと思います。


 よく、グローバリズムとは「世界市場における一物一価制」と言ったりします。一物一価とは、
「自由な市場経済において同一の市場の同一時点における同一の商品は同一の価格になる」
 という、経済学お好みの考え方です。


 例えば、LNGのスポット市場は世界的に同一価格になります。日本が原発を停め、スポット価格が上昇した結果、日本同様にLNGを大量に輸入している韓国や台湾もエネルギー価格上昇の憂き目に会っています(注:スポット市場のみで、契約は別)。


 国内はともかく、国外まで「一物一価」となりますと、これは先進国にとって不利な話になるわけです。何しろ、物価と所得は連動します。厳密に書くと、
「モノやサービスが生産され、消費・投資として購入されたときの金額が所得」
 でございますので、グローバルに一物一価ということで、日本の製品価格が中国に近づいていくと、必然、日本国民の所得も下がらざるを得ません。すなわち、底辺への競争です。


 とはいえ、本日、問題にしたいのは製品(モノ)ではなく、サービスです。サービスについてまで、グローバルな一物一価を目指す必要があるのでしょうか。タクシーの規制緩和を主張する人たちは、
「日本のタクシーの初乗り料金はアメリカと比べると高い!」
 と、批判します。が、なぜか初乗り料金約2000円のスウェーデン等とは比較しません。不思議、不思議


 という皮肉を置いておいても、サービスとは在庫ができないため、その場、その地域、その国の「条件」により、価格は変動してしかるべきであり、市場原理を単純に適用できないという点を知って欲しいわけです。


 例えば、タクシーでいえば、「地域住民の足」という役割も担っています。タクシーがなければ、移動もままならない住民がいたとき、「市場原理だ!」などとやってしまうと、地元からタクシー会社が消滅するでしょう。結果、その地域から住民が消え失せ、我が国の安全保障は脆弱化していきます。鉄道の地方路線や、航空会社の地方線についても同じことが言えます。(西田昌司先生が、JALが地方路線を「リストラ」したことに怒っていらっしゃいましたが、同じ理由です) 

 あるいは、明日、チャンネル桜(桜プロジェクト)で映像が公開される予定の「介護サービス」。


 実際に経験、あるいはせめて見学されれば分かりますが、介護サービスとは極めて高度な対人サービスです。何しろ、ニーズは要介護者ごとに異なり、しかもコミュニケーションが困難な要介護者の方々もいらっしゃいます。それでも、わずかなサイン、仕草、素振り、空気等から要介護者のニーズを理解し、サービスを提供するのが介護サービスなのです。


 当たり前ですが、介護サービスでは画一的なマニュアルに基づき、サービスを提供することはできません。少なくとも「高品質のサービス」を提供することはできません。


 要するに、サービスについて、地理的条件、安全保障の問題、サービスの「個別性」を無視し、一物一価制を当てはめようとするのは無理があると思うのです。しかも、サービス価格が他国よりも高いとは、
「ヒトにお金がかかる国」
 という話になります。


 素晴らしいじゃありませんか。ヒトが動くサービスにお金がかかり、サービスに従事する生産者の所得が増え、国内需要が活性化する。結果的に、我が国は内需中心の経済成長を達成することができます。といいますか、実際にしてきました。


 生産年齢人口が減少し、「ヒト」の数が減っていく。ならば、企業が設備投資を増やし、人材投資を拡大し、働く「ヒト」一人一人の生産性を高めればいい話です。実際に、我が国の高度成長期を牽引した主役は、生産年齢人口の増加でも輸出拡大でもなく、企業の爆発的な設備投資による生産性の向上だったのです。


 というわけで、グローバルスタンダードな製品はともかく、サービスについてまで他国と比較し、高い安いやる意味がわたくしには理解できません(わたくしがスウェーデンの話を出したのは、単なるカウンタートークです)。今後の日本が、サービスに従事する生産者の人件費が上昇していく環境になり、さらに各企業、人材の生産性向上の努力を高めれば、経済は成長するでしょう。

 それに対し、サービス業のコスト削減(≒人件費削減)を追求していくと、成長率は落ちます。しかも、サービス業の人件費削減を突き詰めると、
賃金が安い外国人にやらせればいいじゃん
 という発想になってしまうわけです。と言いますか、現在の日本で外国移民を推進している勢力は、要するに「日本国内の人件費を引き下げる(あるいは上昇させない)」ことを目的にしているのであり、わたくしとは発想が真逆なのです。


 もっとも、「国内の人件費を抑制し、グローバルで勝つことを目指す」のか、あるいは「国内の人件費を上昇させ、内需主導で成長することを目指す」のかは、結局は価値観の問題です。


 というわけで、移民推進派はいい加減に「人手不足が」だの「人口が」だの、建前を口にするのはやめて、堂々と「国内の実質賃金を引き下げるため、移民を推進します!」と主張するべきだと思うのです。その上で、民主主義で勝負をつける。これが、民主主義国家の王道だと思うのですが、いかがでしょか?
 

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