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『三つの対立(後編)③』三橋貴明 AJER2014.4.15(3)

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 週刊アサヒ芸能4.17特大号「崩壊へのメルトダウン ポンコツ「韓国産原発」のずさんすぎるダダ漏れ実態を暴く!」に登場しています。


 チャンネル桜「桜プロジェクト」に出演いたしました。


【TPP】アメリカの傲慢と安倍政権の余裕、勘違いが最悪の結果に?[桜H26/4/30]
http://youtu.be/wgZScyU7wO4
【エネルギー安保】EUと台湾、ロシアと中国のリスクを見誤る[桜H26/4/30]
http://youtu.be/9c4pi10LxC4
【増税工作】借金1京円シミュレーションの突っ込みどころ[桜H26/4/30]
http://youtu.be/L7bQ00ApQ2I
【明るい経済教室】2つの「潜在GDP」について・後半 [桜H26/4/30]
http://youtu.be/LhfTvOTlKz0


 さて、アメリカでテキサス州の大手電力会社エナジー・フューチャー・ホールディングスが破綻(チャプター11)しました。


米テキサス州の電力大手が破綻 負債総額4兆円超
http://www.asahi.com/articles/ASG4Z2J95G4ZUHBI009.html
 米西部テキサス州で発電事業などを手がける電力大手エナジー・フューチャー・ホールディングス(EFH、本社テキサス州)は29日、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、経営破綻(はたん)した。負債総額は約400億ドル(約4・1兆円)。
 米調査会社によると、負債総額の大きさは、1980年以降に倒産した米企業の中では8番目の規模という。
 EFHはテキサス州の約150万世帯に電力を供給しており、破綻後も事業を続けながら経営再建をめざす。すでに、お金を借りている債権者らに借金(負債)の一部を棒引きにしてもらうことなどを柱とした再建計画をまとめていて、11カ月以内に再建手続きを終える見込みだという。』


 エナジー・フューチャーは、07年にコールバーグ・クラビス・ロバーツ、TPGキャピタル、ゴールドマン・サックス・グループというプライベートエクイティが、480億ドル(約5兆円)という、当時としては過去最大規模のLBO(レバレッジド・バイアウトで買収し、非公開化されたものです。買収グループは、天然ガスや電気料金が上昇することで、480億ドルという巨額買収を行っても「元が取れる(儲かる)」と見込んでいたようです。

 ところが、08年のリーマンショックで需要が低迷し、さらにシェールガスの開発により天然ガスの価格が下落(注:アメリカの話)。マネーゲームの見込みが外れ、破綻という結末を迎えました。


 アメリカでは、1996年にカルフォルニア州が「発送電分離」「電力小売り料金の凍結」「電力会社に卸売市場からの電気調達を義務付け」という電力自由化が実施されました。


 2000年夏に、カルフォルニアを猛暑が遅い、さらに天然ガスのコストも上昇。ところが、電力会社は卸売市場から調達する電気の調達価格上昇分をユーザーに押し付けることができず、電力危機に突入します。翌年4月には、ついに大手電力会社三社の一つパシフィック・ガス&エレクトリック社が、逆ザヤに耐えきれずに破綻。

 カルフォルニア電力危機の事例を見て、アメリカでは自由化を推進していた州までもが「自由な電力市場」に懐疑的になっていきます。カルフォルニア州を含む、四つの州が自由化を中断。さらに、三州が自由化撤退の法律を制定する始末でした。


 ちなみに、2000年から2010年までのデータを見ると、アメリカでは自由化をした州もそうでない州も、揃って電気料金が上昇しています。理由は自由化云々とは無関係に、化石燃料の価格が高騰したためです。結局のところ、電気料金は「自由化」「市場化」とは関係なく、「燃料費」に大きく左右されるということが、アメリカの事例を見ればわかるわけです。

 テキサス州は、カルフォルニア電力危機以降に自由化に踏み切った数少ない州の一つです。当初は、テキサス州の電力の需給バランスは供給予備率が30%を超え(2002年)、カルフォルニアのようにはならない「はず」でした。


 ところが、現実には電力を「市場競争」に晒したため、市場から得られる利益の水準が、巨額な電源投資を回収できる水準でないことが判明。電力サービスは、当初の時点で数千億円規模の投資が必要であるため、利益の見込みを外した場合の「損失」もまた、とんでもない規模になってしまいます。


 というわけで、テキサス州の電力事業者は発電への投資を怠るようになり、今や予備率が10%を切りかねない事態になっています(適正予備率は13%程度。現在の日本は、全ての電力会社が適正予備率を確保していません)。


 テキサス州の供給予備率は今後も低下が続き、2020年には「ゼロ」を切ってしまうと想定されています。何でそんなことが分かるのかと言えば、発電所の建設には巨額のコストはもちろん、時間も必要になるためです。現時点で発電所の建設に着手していない以上、十年後も発電能力は上がりません。火力発電所の建設には十年、原発は二十年は必要と言われています(最近のガスタービン発電は、多少は納期を短くできるそうですが)。

 テキサス州の事例、つまりは電力自由化に踏み切った結果、新規の電源投資が進まず、規制産業だった時代の余剰設備を食いつぶしてしまうケースは、アメリカのみならず、欧州でも見られます。


 もちろん、燃料費の高騰を容赦なくユーザーに転嫁する「自由化」であれば、電源投資が進むかも知れません。とはいえ、その場合は家計や企業といったユーザーが怒り狂い、さらには調達燃料の価格の見込みは、いずれにせよつきません。将来的には、いきなり天然ガスの価格が暴落し、結局は元が取れないというケースも想定されるわけです。 

 と言いますか、実際にアメリカでは天然ガスが値下がりし、今回のエナジー・フューチャー・ホールディングスの「マネーゲームの破綻」に行き着いたわけでございます。


【日本、北米、欧州の天然ガス購入価格の推移(単位:ドル/百万BTU)】

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_45.html#Gus2


 ユーザーが電力サービスに期待することは、
「安い電気を、安定的に供給してもらう」
 ことのみです。一応、電力自由化は「電気料金を引き下げる」というお題目になっていますが、前にも書いた通り、電力自由化後に電気料金が下がった国は、「日本」を除き、一か国もありません(日本も311以降は上昇しています)。理由は、電気料金が結局のところ「資源価格」に大きく依存してしまうためです。


 さらに、資源価格が下がれば下がったで、今回のように別の問題をも引き起こしてしまうのです。


 結局のところ、巨額の固定資本が必要で、さらに資源価格に大きく左右され、簡単に供給能力(発電能力)を増強できない電力サービスに、自由化の思想はなじまないのです。電力を「安く、安定的に」供給するためには、電力のプロバイダー(供給者)が電源を多様化し、経営を安定化させなければなりません(さもなければ、発電や送電網への投資が縮小し、安定性が崩れます)。


 現在の日本は、原発を停止し、電力供給能力が激減している状況でありながら、電力自由化を推進しています。理由は、信じられないことに「電気料金を引き下げる」というお題目になっているのです。現実には、電力自由化を推進したところで、電気料金は下がらず(資源価格が高騰している限り)、さらにサービスの不安定性は増していくでしょう。まさに、現在のアメリカや欧州がそうなっているわけです。

 というわけで、今回のエナジー・フューチャー・ホールディングスの破綻を契機に、改めて「電力サービス」や「電力自由化」について考えてもらいたく、本件を取り上げました。電力サービスをテキサス州のように「マネーゲームの対象」としてしまうと、最終的に困るのは国民の方なのです。


「電力サービスをマネーゲームの対象にするな!」に、ご賛同下さる方は、

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