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『G0.5(後編)③』三橋貴明 AJER2014.3.18(3)
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わたくしは「民主主義で戦う」といった表現を頻繁に使いますが、民主主義が「完璧に素晴らしいシステム」であるなどとは微塵も思っていません(特に、09年8月末以降)。他にまともな手法があるなら、民主主義のような不完全なシステムは、さっさと放棄しても構わないと思います。
とはいえ、チャーチルではないですが、民主主義が、
「他の方式よりもマシ」
であることは確かであり、特に国民主権に基づく民主主義のシステムは、渋々ではあっても維持していかなければならないと考えているわけです。
さて、現在のユーロ圏の「国民」は、主権の一部(あるいは多く)を奪われた状態にあります。金融主権は全ての国が持たず(ECBが持っています)、財政主権も制限されています。
主権がない以上、民主主義で問題を解決することはできません。と言いますか、民主主義があったところで、主権がなければあまり意味を持たないわけです。
国民が投票行動によって、問題を解決できない場合、どうしたらいいのか。特に、失業率が25%を上回っている(若年層失業率は50%超)国の国民は?
失業者は所得を稼げませんので、最終的には飢えて死ぬという話になってしまいます。飢え死にを避けるための政策を政府に「民主主義」によって実行させようとしても、それが不可能な場合は?
犯罪、テロ、暴動です。(あるいは外国への移民です)
『デモ暴徒化、70人負傷=政治家と銀行家に抗議-スペイン
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201403/2014032300178&g=int
スペインの首都マドリードで22日、経済危機を引き起こした政治家や銀行家が罰せられていないことに抗議するデモが行われ、夜になって暴徒化、警官隊と衝突した。17人が逮捕され、救急当局によれば、警官30人とデモ隊41人が負傷した。
デモにはスペイン全土から数万人が集結。若年層の失業率が50%を上回る現在の危機は、政治家と銀行家の癒着が原因だったと主張し、参加者は「盗んだ金をやつらに支払わせろ」と訴えた。』
失業は苦しいですが、「長期の失業」は更に苦しいというか、人間を絶望させます。絶望した人間はいずれ立ち上がり、政府を打倒します。政府は打倒されることを防ぐために、彼らを救済する雇用政策等を打たなければなりません。
とはいえ、スペイン政府はユーロの呪縛に囚われたままで、雇用対策を打つことができません。最も手っ取り早い「国際競争力(グローバル市場における価格競争力)」向上の手段である、為替レートの下落も、スペインでは(対ユーロ諸国では)起きません。ユーロ加盟国以外に対しては、ユーロはむしろ高騰しているため、価格競争力は落ちています。
さらに、関税で自国産業を守ることもできず(対ユーロ諸国で)、物価上昇率0.1%(対前年比)と、ほぼデフレ状態にありながら、通貨を発行し、国債の貨幣化を実施することもできない。
しかも、上記は「ユーロというシステム」によって強制されているため、民主主義でも解決できないのです(ユーロ離脱をしない限り)。スペインの人々は、もはや暴動を起こす以外に「手がない」というところまで追いつめられてしまっているわけです。
スペインのお隣のフランスでは、やはり10%を超える失業率に国民が苦しむ中、「民主主義」に興味深い動きが起きています。
『仏統一地方選第1回投票、極右が躍進 オランド大統領の左派連合苦戦
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPL4N0ML0C920140324
フランスで23日実施された統一地方選の第1回投票は、移民排斥をとなえる極右政党、国民戦線(FN)が躍進する一方、オランド大統領の左派連合は、出口調査で得票率が野党を下回り、大統領に対する国民の不信が浮き彫りとなった。
今回の選挙は2012年のオランド大統領就任以来初の全国選挙。第2回投票は、30日に行われる。
大統領は、失業対策の失敗により支持率が急落している。
調査会社BVAの出口調査によると、オランド大統領率いる左派連合の得票率は43%で、野党保守派の48%を下回っている。FNは7%。
FNのルペン党首は、2011年に父から党首を引き継いで以来、党のイメージをソフトなものに転換している。第1回投票の結果について、TF1テレビに対し「FNは、主要な独立勢力の段階に到達した。国家レベルでも地方レベルでも、ひとつの政治勢力となった」と述べた。』
前にも書きましたが、国民戦線は「移民排斥」を唱えてはいません。
「移民は制限する。ただし、フランスの文化を尊重、保護する移民は拒まない」
「フランス国籍を持つ移民や移民二世・三世でも、犯罪を行った場合は出身国へ強制送還させる」
上記が国民戦線の移民政策ですが、これで何故に「移民排斥の政党」というレッテルを貼られなければいけないのか、正直、分かりません。
国民戦線については、フランスのインテリ紙ルモンドが長い論評を書いていました。
『マスコミとの関係が深まる 躍進する《国民戦線》
http://www.diplo.jp/articles14/1403FN.html
』
一部だけ引用しますが、
「なぜメディアは、移民・治安悪化という二つの論点にもっと集中しないのだろう? 「フランス優先」に「フランス贔屓」が取って代わったという、意味のない揚げ足取りは別として、国民戦線はこの問題については政策を変えてはいないのだが。この批評の欠如はおそらく、国民戦線の提起したものの見方があたりまえになったせいである。多数の保守層(特にフランス南部の議員のあいだに)にそうした見方が広まったせいなのだ。」
なるほど。フランスでも移民問題や治安悪化に関する「ものの見方」が変わりつつあるわけですね。
別に、わたくしは国民戦線を贔屓したいわけでも何でもありません。何しろ、ナチス・ドイツを生み出したのはドイツの民主主義です。国民戦線が将来的に「新たなナチス」にならないと保証できる人は、この世に一人もいません。将来は、常に不確定です。
○○が善。○○が悪。
こういった、単純でナイーブなものの見方を、日本国民はそろそろ改めるべきだと考えているだけです。民主主義にしても、別に「善」ではありません。単なる手法の一つに過ぎません。
民主主義が役に立たず、暴動に走った「失業率25%超の国」スペインの人々は、善ですか? 悪ですか?
民主主義により、「移民制限」を唱える国民戦線が支持率を伸ばしているフランスは、正ですか? 邪ですか?
本ブログの読者様であれば、現実の出来事には「善? 悪?」の二項対立で切り捨てることができないもの、あるいは切り捨てることが困難なものが多数存在することを理解できるはずです。
幸いと言っては何ですが、昨今の世界では「民主主義」を考える事例に事欠かないわけでございます。日本国民にとっては、民主主義を学びなおす「機会」と言えます。
というわけで、明日の後編は台湾とロシア。
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Klugにて「三橋貴明の『経済記事にはもうだまされない』」
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