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『G0.5(前編)①』三橋貴明 AJER2014.3.11(5)
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さて、クリミア自治共和国で住民投票が行われ、住民は予想通り圧倒的多数が独立とロシアへの編入を支持しました。結果的に、クリミア自治共和国議会は正式にロシアへの編入を申請し、昨日、代表団がモスクワに到着。今後の編入手続きについて協議することになっています。
無論、欧米は反発しています。
オバマ大統領は16日時点でロシアのプーチン大統領と電話会談し、住民投票について「ウクライナ憲法」に違反しており、ロシアの軍事的圧力の下で実施されたため、欧米や国際社会がクリミアの独立やロシア編入を認めることはないと強調しました。さらに、ロシアの行動について、
「ウクライナの主権と領土に対する侵害である。欧州諸国と協力してロシアにさらなる代償を科す用意がある」
と批判したわけです。
何度も繰り返しますが、違法云々いうならば、現在の暫定政権に法的な正当性があるのでしょうか。「ウクライナ憲法」は大統領を暴力で打倒することを認めているのでしょうか。よくわかりません。
欧州連合(EU)は、同じく16日時点で、クリミアの住民投票について強い非難を表明し、ロシア側にク対しリミア半島からの兵力撤退を要求しました。
さらに、17日、アメリカはロシア政府高官やヤヌコビッチ大統領ら11人の資産を凍結する大統領令を発表。EUも外相理事会を開き、ロシア政府関係者のEUへの渡航禁止措置、資産凍結措置などの制裁を決定。
オバマ大統領は、
「制裁の範囲を拡大した。さらに追加で科す用意もある」
と強調していますが、正直、あまり効果がないと思います。
話はすでにクリミアにとどまっておらず、ウクライナ北東部のハリコフ(ロシア系住民が多いのです)でも、クリミア同様に独立とロシア編入のための住民投票実施を求める動きが出てきています。ハリコフでは14日にロシア派と反ロシア派が衝突し、二名の死者を出してしまっています。さらに、16日にはロシア派が住民投票実施を求めるデモを行い、一部の過激派が地元の文化センターを襲い、ウクライナ語の本を焼くなどの示威行動に出ているのです。
すでにウクライナ紛争は、ウクライナ内の「民族紛争」と化しつつあるわけです。
さて、ロシアに対する経済制裁は有効でしょうか。と言いますか、「有効」になるまで経済制裁をエスカレートすることはできるでしょうか。正直、不可能だと考えています。
『露政府、最強の武器は年間16兆円のエネルギー輸出-制裁対抗
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N2LSWN6K50YH01.html
ウクライナ情勢をめぐり米国と欧州の当局はロシアに対する制裁に踏み切ったた。ロシアのプーチン大統領にとって、年間約1600億ドル(約16兆3000億円)に上る同国の石油・天然ガス輸出が制裁措置を抑制する最強の武器となりそうだ。
クリミア自治共和国がウクライナからロシアへの帰属替えを選んだ16日の住民投票結果を受け、米国と欧州はロシアに対しクリミアを編入しないよう警告した。欧州連合(EU)は17日、ロシアとクリミア、元ウクライナ当局者ら21人を対象に資産凍結と査証発給禁止の措置を決め、オバマ米大統領はロシア政府関係者7人に対する制裁を発動した。
世界最大の石油生産国であるロシアの原油、燃料、ガスをベースとする工業用原材料の欧州と米国への輸出額は2012年に約1600億ドル相当に上った。カナダのカールトン大学の欧州・ロシア・ユーラシア研究所のディレクター、ジェフ・サハデオ氏は、ロシアのエネルギー輸出を止めれば同国政府が必要とする外貨の流入が落ち込むが、欧州の消費者が払う代償も極めて高い上にプーチン大統領の方針転換にはつながらないかもしれないと指摘する。
サハデオ氏はオタワからの電話インタビューで「短期的にはこの方法を取るのは非常に困難であり、ロシアの行動に影響を及ぼすかどうかさえも不明だ」と指摘。欧米諸国が「エネルギー関連の制裁を選択すれば、どの国が最初にそれを無視するかという問題になる」と述べた。 』
「対欧州」で見たときのロシアの強みは、天然ガスをパイプラインで輸出していることです。すなわち、ロシアのガスを買っている欧州諸国には、ロシア以外の選択肢がありません。
これが「LNG(液化天然ガス)」で受けれいているならば、
「ロシアから買わずに、中東やインドネシア、マレーシアから買おう」
といった形で、売り先を選択することができます。ところが、パイプラインの場合はそれができません。ロシアからのガス送出が止まれば、各国の住民は凍えることになるわけです。
そして、本問題はLNGでガスを買っているはずの日本にまで、重大な問いを投げかけてきています。
【2012年度 日本の天然ガス輸入先(総輸入量8318万㌧)】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_45.html#Gus
日本の天然ガス輸入に占めるロシア産の割合は、10%弱です。もちろん、日本がロシアへの経済制裁に参加し、ガスの輸入をストップしたところで、「国民が凍える」などという事態にはなりません。
問題は、現時点で日本が原発を再稼働していないため、ガスを「高く買わされている」という現実です。単位当たりのガス単価は、欧米が10ドル未満であるのに対し、日本は17~18ドルになります。
この上、ロシア産が日本に入らないとなると、ガスを他の国から買えるとしても、更なる単価つり上げを覚悟しなければなりません。すなわち、貿易赤字が拡大し、電気料金が上昇することになります。一応、原子力規制委員会は原発の再稼働に向けた審査を開始していますが、その動きは牛歩戦術を思わせるほどに遅いです。
さて、日本はどうするべきなのでしょうか。善悪を問うているわけではありません。「日本の国益」を考えたとき、日本がウクライナ問題にどのように対処するべきなのか、エネルギー安全保障問題を含め、国民一人一人が真剣に考えるべきなのです。今後、この手の事例が頻発することは確信しており、今回の件は「序盤戦」に過ぎないと思うのです。
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