株式会社三橋貴明事務所
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12月2日 「グローバル資本主義を超えて(Beyond Global Capitalism)」 (京都)
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残席が20ほどあるとのことで、本日一度だけ告知いたします。
【かんぽフォーラム2013について】
http://www.kampozaidan.or.jp/CL01_01/index.html
【日時】平成25年12月5日(木)14:00~17:00
【会場】新宿明治安田生命ホール
今年ラストの単行本執筆ということで、韓国の話を書いています。
不動産価格が低迷し、家計の負債がリーマンショック前のアメリカよりも(対可処分所得で)大きくなっている韓国の家計は、現在、借金返済に走り消費性向が落ちています。消費性向が落ちたとは、貯蓄性向が高まったという話ですが、別に預金をしているわけではなく、借金返済を始めたわけです(経済学的には借金返済も「貯蓄」になります)。
結果的に国内の消費者物価指数の上昇率が低下してきており、10月は何と0.7%。しかも、韓国統計庁の発表によると、9月の失業率は2.7%! わおっ!
失業率が完全雇用に近く、しかも物価上昇率が1%を切っているとは、韓国とは何と幸せな国でしょう。
なんてはずはもちろんなく、現実の韓国の雇用環境は酷いものです。
『韓国の失業率は12.5%、民間シンクタンクが調査 当局発表とは大きく乖離―中国メディア
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/photonews/366081/
韓国の民間シンクタンク、現代経済研究院はこのほど、10月の同国の失業者数が345万2000人に上るとの調査結果を示した。当局が発表した72万4000人の4.8倍に上る数だ。人民網が15日伝えた。
同研究院の調査対象は15歳から64歳の生産年齢人口で、失業率は12.5%と、当局発表の2.8%の4.5倍だった。
当局発表の数字が小さいことについて同研究院は、不完全失業者と求職予定者を失業者の統計に含めていないためだと説明した。』
韓国では、例えば職業安定所で仕事を紹介され、それを断ると、
「じゃあ、君は失業者に含めないから」
コンビニで1時間だけバイトすると、
「あ、君は失業者ではないね」
なんてことをやっており、見た目の失業率を大きく押し下げるという「テクニック」が露骨に駆使されています。
以前、MXの番組で日本で働いているゲストの韓国人の方が、
「韓国は失業者になりにくい国なんですよ・・・」
と、皮肉な感想を述べていたのを思い出します。
ところで、韓国は電気料金が安いことで有名です。これは別に韓国の電力サービスが優れているわけではなく(アメリカよりはマシだと思いますが)、国策として電気料金を低く抑え込んでいるためです。すなわち、企業の「国際競争力」を高めるために、政府が電力料金の値上げを認可しないためです(韓国の電力会社は株式の過半を韓国政府に持たれています)。要は、グローバル市場で勝つために、政府が大手輸出企業に対し「安い電気料金」という補助金を与えていたわけです。
とはいえ、別に韓国だからといって石炭や天然ガスを安く変えるわけではなく、しかも原発が不正部品納入問題などトラブル続きで、電力サービスのコストは上昇しています。それにも関わらず、電気料金が安いというわけで、当たり前ですが韓国の電力会社は「全て赤字」の状況に陥っています。
『韓国「安すぎる電力」を転換 需給逼迫で危機感
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1903G_Z11C13A1FF2000/
毎年、季節ごとの電力不足に悩む韓国政府が19日、電気料金を極めて低い水準に抑えてきた方針の転換を打ち出した。値上げに加えて税制も変えて、ガスなど他のエネルギーへのシフトを促す。ただ、コスト増を懸念する産業界は反発しており、本格的な方針転換には曲折も予想される。
産業通商資源省第2次官は同日の記者会見で、電気料金はガスや灯油などの価格と比べて安すぎるとの認識を表明。「持続的な調整が必要だ」との考えを示した。
韓国の電気料金は日本と同様に政府の認可制で、21日付でまず平均5.4%(産業用や住宅用などの平均値)値上げする。上げ幅は1998年以来15年ぶりの水準だ。
電力利用を分散させるため料金体系も変える。例えば時間帯別料金は、電気使用量が集中するピーク時間の単価を大幅に引き上げ、他の時間は引き下げる。
税制も変える。発電燃料の4割超を占める石炭に対し1キログラム当たり30ウォン(約2.8円)を新たに課税する一方、液化天然ガス(LNG)や灯油の税額はそれぞれ約3割減らす。冷暖房などのエネルギーを電気から他の資源にシフトさせる狙いだ。法改正を経て2014年7月以降の施行を目指す。(後略)』
当たり前の話として、韓国の電力会社の赤字(自己資本の毀損)を放置しておくと、最終的には韓国政府が(つまりは韓国国民が)責任を取ることになります。(何しろ、韓国政府は親会社なのです)しかも、一部の原発が不正部品納入トラブルで停止し、そろそろ「ギブアップ」という話なのでございます。
ちなみに、産業用電気料金は6.4%の値上げが検討されており、経済団体の全国経済人連合会(日本の経団連みたいなもの)の試算では、製造業全体で1兆4000億ウォン(約1300億円)の減益要因になるとのことでございます。
ここで、この記事を
『米韓FTAのISD条項で、韓国は63の法律改正に追い込まれている
http://wpb.shueisha.co.jp/2013/09/13/21828/2/
(前略)注目すべきは、こうしたISD条項圧力によって、アメリカの要求前から、制度変更の動きが韓国内で起きているという点だ。多摩大学の金美徳教授が言う。
「米韓FTA発効を受け、韓国電力が電気料金の値上げに動こうとしたことがありました。韓国電力は自社株を保有する外国人から、『電気料金が安いから利益が上がらず、損をした』と訴えられてはまずいと、自ら値上げを検討したのです」(後略)』
考えてみれば、韓国の電気料金が安いと、同国の電力会社に投資した外国人投資家に取っては、
「政府の規制により、不当に利益(配当金)を奪われている」
という話になりかねないわけです。と言いますか、間違いなくなります。政府の規制なしで電気代が上昇すれば、電力会社が黒字になり、外国人投資家に配当金が支払われます。
とはいえ、現実には韓国政府の規制で電気料金は抑え込まれ、外国人投資家たちは損をし続けています。
これが普通の国であれば、
「損をするのが嫌なら、株を売ればいいじゃないか」
というだけの話なのですが、韓国は米韓FTAでアメリカとISD協定を結びました。結果的に、米韓FTA発効後に韓国の電力会社が「ISDで訴えられては・・・」と考え、電気料金の値上げを検討した、と。
今回の韓国政府の電気料金引き上げへの方針転換は、果たして何が本当の理由なのでしょうか。
とはいえ、韓国政府(&韓国の電力会社)が規制を変更し、電気料金の値上げをすると、今度はサムスン電子や現代自動車などが損をします。両社(だけじゃないですが)の株主の半分程度は外国人投資家です。外国人投資家にしてみれば、
「おいおい、せっかく電気料金が安く、利益を出しやすいからサムスンに投資したのに、ここで値上げかよ・・・・」
という話になってしまいます。ここで、韓国政府が、
「黙れ! 韓国の電気料金をいかに管理するかは、我が国の主権の問題だ。電気料金の値上げが嫌なら、株を売って出て行けばいい」
と宣言できればいいわけですが、そこにISDが絡んでくると、話は厄介になります。
要するに、電気料金の問題を含む「主権の問題」に外国企業、外国人投資家が絡み、さらに「外国企業が政府を訴えるISD」が存在すると、非常に面倒くさいことになってしまうのです。と言いますか、ずばり言って「主権侵害」ですから、面倒くさいでは済まないのですが。
TPP、あるいはグローバリズムとは、最終的には「国家の主権」の問題に行き着くわけです。そもそも、日本国民の多くは(特に平成に入って以降は)「国家の主権」について真剣に考えてきませんでした。今、日本国民が「国家の主権」について真剣に考え始めなければ、我が国の将来は現在の韓国同様に「グローバリズムの優等生」へと落ちぶれることになるでしょう。
ちなみに、グローバリズムの優等生と化した日本を疑似体験したい方は、PU(パシフィックユニオン)に加盟し、グローバル資本に食い物にされている日本を描いた「顔のない独裁者 」を是非、ご一読くださいませ。
本エントリーで「国家の主権」「グローバリズム」について改めて考えて下さった方は、
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Klugにて「三橋貴明の『経済記事にはもうだまされない』」
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