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チャンネルAJER 6月25日に更新しました!

『デフレ・所得・グローバル株主資本主義(後編)①』

『デフレ・所得・グローバル株主資本主義(後編)②』

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【スペシャル対談 麻生太郎×三橋貴明】
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http://www.nicovideo.jp/watch/sm18217653

 さて、本日は久しぶりにヨーロッパ。


 ユーロ圏諸国は先週、銀行危機に陥っているスペイン向けの最大1000億ユーロの融資について、お金を出す国が優先債権者としないことに同意しました。お金を出す「国」が優先債権者になると、スペインの各銀行に融資しているユーロ圏の「民間の銀行」が劣後債権者扱いになり、いざという時にお金を返してもらえない可能性があります。


 というわけで、今回の合意では各国を優先債権者としないことで同意したのですが、そうなると今度は「各国」がお金を返してもらえない可能性があります。「各国」がお金を出すとは言っても、要するに政府が財政からお金をスペインの銀行に融資するわけで、元々の出所は国民の所得です。


 国民の所得からお金を貸し出す以上、各国の政府は「必ず返してもらえる」形を取らなければ、政治的に説明ができません。とはいえ、そうすると民間の銀行が不利ということで、各国政府を優先債権者にしないことが決定しました。すると、今度はフィンランドなどの一部の国が、
優先債権者になれないなら、当然ながら担保を取る必要がある
 と言い出しており(当然だと思いますが)、ユーロ圏は例によりグダグダな状況に陥りつつあります。


 グダグダと言えば、こちらもそうです。


ギリシャ、「ショッキング」なデータで条件緩和を迫る作戦
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M6L36F6KLVRA01.html
 ギリシャ政府は国際機関の債権団の代表である通称トロイカに、「ショッキング」なデータを見せる方針だ。高失業とリセッション(景気後退)の証拠を示し、救済条件の変更が必要だと納得させたい考えだ。ケディコグロー政府報道官が明らかにした。
 同報道官は3日のメガTVとのインタビューで、「リセッションと失業について強烈な、あるいはショッキングと言っていいようなデータがある」と語った。インタビューの内容は同報道官のオフィスが電子メールで配布した。
 欧州中央銀行(ECB)と欧州連合(EU)欧州委員会、国際通貨基金(IMF)の通称トロイカの当局者らは4日からギリシャを訪れると、欧州委員会のオコナー報道官が3日ブリュッセルで明らかにした。
 ケディコグロー報道官は、ギリシャ政府が示すデータは救済合意の緊縮措置を見直す必要があるという同国の主張を補強するだろうと述べた。
 ギリシャのサマラス首相は6月27日のユーロ圏首脳宛ての書簡で、5年目に入ったリセッションと23%の失業率を理由に歳出削減目標を見直す必要性を訴えていた。 』


 お金を貸してくれるトロイカに対し、

「我が国はこれほどショッキングな状況なんだぞ!」

 と、やるわけですか。何というか、不思議なセンスです、ギリシャ政府。まあ、ほかに手がなさそうなのも事実ですが。


 元々、ギリシャの再選挙では緊縮財政反対派が6割の票を得ました。第一党に50議席プラスされるギリシャの選挙制度により、緊縮財政派が過半数の議席を獲得しましたが、それでも「民意」が反緊縮財政であることに変わりはありません


 というわけで、ギリシャ政府はECB、EU、IMFからの調査団に「ショッキングなデータ」を見せ、緊縮財政の見直しを求めようとしているわけです。ショッキングなデータとは、おそらく失業率でしょう。


【図 2012年5月時点 日米欧主要国の失業率(単位:%)】
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http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_38.html#Unemp


 上図では3月時点のギリシャの失業率の値が21.9%になっていますが、上記の記事の数値を見る限り、現在はさらに上昇しているようですね。


 ギリシャにしても、スペインにしても、失業率が20%を上回っている状況で、「外国」から緊縮財政を強要されているわけで、何と言うか「グローバリズム」的なユーロのの歪みが一気に噴出した感じです。為替レートの変動がない共通通貨ユーロのシステムは、ある意味で現代世界において最も「進化」したグローバリズム的な世界でした(ある種のブロック化でもあるわけですが)。


 為替レートの変動がないため、
「ドイツがスペインやギリシャに、製品をひたすら売りつける(ドイツの対外純資産が増え、スペインやギリシャの対外純負債が増える)」
「スペインやギリシャは経常収支が赤字化し、国内が過少貯蓄になるが、共通通貨ユーロであるため、特に問題はない。政府は国債金融市場からユーロを借り入れ、独仏などの銀行はスペインやギリシャへの対外資産(ユーロ)を不動産市場に貸し付け、バブルを膨張させる」

 というまことに歪んだシステムになっていたわけですね。


 すなわち、リーマンショック前のアメリカ同様に、経常収支赤字国であるにも関わらず、国内のバブルに外国が持つ資金を還流させ、ギリシャやスペインは成長(一応)してきたわけです。


 ところが、バブルが崩壊し、各国がデフレ化していくと、もはや打つ手が全くない状況になってしまいます。アメリカの場合は、外国の金でバブルを膨張させていたとはいえ、通貨は「基軸通貨ドル」です。自国通貨建ての問題である以上、最悪はFRBが資金を供給することで、危機を沈静化させることができます。ところが、ギリシャやスペインはそうはいきません


 ギリシャやスペインも、アメリカ同様に不良債権問題に陥りますが、最終的な金の出し手は「外国(独仏など)の銀行」でした。EUやドイツなどがギリシャやスペインに資金を融資しようとしているのは、別に両国を救うためではありません。両国にお金を貸し付けていた「自国の銀行」を救うためにこそ、EUやドイツ政府は動いているわけです。


 ギリシャやスペインは「外国から借りた金」で「外国の債権者(銀行)」を助けるという話になり、そのツケは国民が所得縮小、緊縮財政、失業率上昇という形で背負うことになります。それにしても、ギリシャもスペインもすでに失業率が20%を超えているわけで、さらに「外国の銀行」を救うために、両国の国民は失業率上昇や所得縮小に耐えなければならないのです。

 グローバリズムの象徴的な存在であったユーロが、どれほどまでに歪んだシステムであるかが改めて理解できます。


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