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 対ドルで円高が続いていますが、これはもちろんアメリカ経済の先行き不安が原因となっています。先行き不安とは言っても、ドルが暴落するとか、米国債がデフォルト刷るとか、そういうカタストロフィ的な話ではなく、単にアメリカがデフレ不況化するのではないかと不安視されているわけです。要するに、アメリカ経済の「日本化」です。


『米国債(6日):2年債0.5%割れ-雇用減で緩和観測
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=an6bnQOrwPUs
 米国債相場は上昇。2年債利回りは初めて0.5%を下回った。7月の米雇用統計で雇用者の減少幅がエコノミスト予想を上回ったのが背景。(中略)
 BGキャンター・マーケット・データによると、ニューヨーク時間午後4時4分現在、10年債利回りは前日比8ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の2.82%。同年債価格(表面利率3.5%、2020年5月償還)は22/32上げて105 23/32。
 2年債利回りは3bp下げて0.51%、週間では5bp下げた。この日は一時0.4977%と過去最低を記録した。 (後略)』


 ちなみに、米国債(十年もの)は08年12月に瞬間的に2.0x%台をつけたことがありますが、あの時はリーマン・ショック直後で、逃げ惑う世界のマネーが米国債(や日本国債)に殺到した時期でした。結果的に、米国債の金利が2%を割り込む寸前にまでいったわけですが、今回は少し情勢が違います。


 前回が「パニック買い」の結果、国債金利が下がったのに対し、今回は米国経済のファンダメンタルを反映した結果、長期金利が下がっています。現在が2.82%ですから、もしかしたら今年中に(史上初めて)米国長期金利が1%台に突入する場面を見られるかも知れません。


 なぜアメリカのファンダメンタルが悪化しているのかと言えば、もちろん「世界最大の需要」である同国の個人消費が奮わないためです。


【アメリカの家計の金融負債推移(単位:十億ドル) 2003年-2010年Q1】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_29.html#USdept


 何しろ、アメリカの家計の負債残高は、住宅ローンはもちろん、総額でも減少を続けています。その金額分、アメリカの家計がお金をフロー(GDP)に回さず、貯蓄(預金や返済)してしまっているわけでございます。


 07年までの景気拡大局面期、アメリカの家計は毎年約1兆ドルペースで負債残高を増やし続けていたわけです。その分だけ、アメリカのフロー(個人消費や住宅投資など)は拡大を続けました。

 この流れが頭打ちになり、逆転を始めてしまったわけですから、その影響は甚大としか呼びようがありません。


 さらに、失業率も9.5%という水準で高止まりしている以上、アメリカの家計が負債や支出を増やし始める局面は、そう簡単には訪れないでしょう。


7月米非農業雇用13万人減、政府部門が押し下げ-民間7万人増
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aUdmPlmi9YAU
 7月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数が国勢調査の終了に伴う解雇などが響いて予想以上に減少。民間部門の雇用者も伸びが市場予想を下回った。 (中略)
 家計調査に基づく7月の失業率は9.5%と、前月から変わらず。同調査に基づく就業者数(自営業を含む)は15万9000人減少した。雇用市場の悪化を背景に職探しをあきらめて、労働市場から退出する労働者が増えたため、失業率は横ばいで推移した。
 この統計発表後、株価は下落、政策金利の変動に敏感な2年債利回りは過去最低に下げた。景気回復が停滞し、FRBは追加刺激策を検討するとの観測が背景だ。(中略)
 経済悪化でパートタイム就労を余儀なくされている労働者や職探しをあきらめた人などを含む不完全雇用率は7月に16.5%で、前月と変わらず。 (後略) 』


 雇用環境の悪化から、就職を諦め、労働市場から退出した労働者が増えた結果、就業者数は減少したものの、失業率は横ばい。しかも、その失業率自体も9.5%という高水準。アメリカの雇用は、本当に厳しい局面を迎えつつあります。


 先日のスペインではないですが、「雇用環境の改善」と「財政健全化」は二律背反的な概念です。政府は民間企業に「人を雇え!」と命じることはできませんので、本気で雇用環境を改善したいのであれば、財政出動するしかありません。財政出動が増えれば、当然、財政は健全化と真逆の方向に向かうわけです。


 アメリカは、97年の橋本政権ばりに「デフレ化における緊縮財政」を強行するほど、愚かではないと信じたいです。とはいえ、最近のアメリカのファンダメンタルの悪化は、政府の景気対策終了が大きく影響しているため、一抹の不安を覚えざるを得ません。


 本来であれば失業率が(相対的に低く)、長期金利が世界最低で、政府の資金調達が最も楽な「ある国」こそが、自らの力で国内に需要を創出し、世界経済に貢献「しなければならない」局面だと思うわけです。ところがが、その国のマスコミでは、いまだに「輸出! 輸出! 外需! 外需!」などと言っている輩が後を絶たず、「情報力」というものについて改めて深く考え込んでしまうわけでございます。


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