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 本日の【Daily故人献金!ニュース】。

土地購入代にゼネコン資金=水谷建設提供の5千万円-特捜部が判断・小沢氏団体問題
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010010800990
  小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる問題で、約4億円の購入資金の一部は、中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)からの裏献金だった疑いの強いことが8日、関係者の話で分かった。複数の同社幹部らが、当時の事務担当だった石川知裕衆院議員(36)に現金5000万円を渡したと供述しており、東京地検特捜部もこの現金が購入資金に充てられたと判断しているもようだ。(後略)』

ゼネコン献金6億円=小沢氏関連団体、7年間で-陸山会へ「迂回」
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2010010800994
 小沢一郎民主党幹事長の関連政治団体が、2000~06年の7年間に、ゼネコン側から計約6億円の献金を受けていたことが8日、分かった。献金の大半は、関連団体を迂回(うかい)する形で、土地購入にゼネコンの裏献金を使った疑いが浮上した資金管理団体「陸山会」に移動されていた。(後略)』

陸山会、不透明な移動24億円 04~07年収支報告書
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20100109AT1G0803I08012010.html
 民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入問題で、2004、05、07年の政治資金収支報告書での不透明な資金移動は総額で約24億円に上ることが8日、関係者の話で分かった。うち、約16億円が小沢氏からの資金提供を巡る出入金という。関連の政治団体間で資金移動を頻繁に繰り返し、不適正な会計処理が常態化していた実態が浮かんだ。(後略)』

 まあ、04年10月の土地取引以外を見ても、小沢一郎をめぐるお金の動きは真っ黒黒なのですが、地検特捜部は、
水谷建設からの裏献金5000万円を、04年10月の土地購入に使用した。(もしかしたら、その他のゼネコンの裏献金も) 代わりに小沢一郎は水谷建設の胆沢ダム受注に便宜を図った」
 という、収賄罪に的を絞ったのではないでしょうか。(時効はどうなっているのでしょう? 詳しい方、是非、コメントを)

 さて、本日の本題に入る前に、これまでに何度か書いた(と思います)「国家の負債の種類」について整理しておきましょう。詳しくは、Klugの連載「第二回 国家の負債を整理する(2/3) 
http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2009/06/03/005630.php  」辺りをご覧下さい。
 国家の負債とは、以下の六種類に分類されます。

 (1) 政府が国内から借りた負債
 (2) 民間が国内から借りた負債
 (3) 政府が海外から外貨建てで借りた負債
 (4) 民間が海外から外貨建てで借りた負債
 (5) 政府が海外から自国通貨建てで借りた負債
 (6) 民間が海外から自国通貨建てで借りた負債

 上記の六つを全て「がっしゃんこ」したのが、以下の日本やアメリカの「国家のバランスシート」の負債サイドというわけです。

日本国家のバランスシート 2009年9月末速報値・6月末確定値(単位:兆円)
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_26.html#JPBS0909

アメリカの「国家のバランスシート」2008年版
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_26.html#USBS2008

 上記両国の「国家のバランスシート」のうち、政府以外の負債が(2)、(4)、(6)の民間の負債というわけです。
 今さら説明は要らないと思いますが、日本政府の負債(厳密には、その内の国債)の94%が(1)で、6%が(5)になります。アメリカの方は、だいたい(1)と(5)が半分ずつになっています。
 この6つを(故意に?)混同し、「日本政府はデフォルトする!」なんてやっているのが、日本のメディアに蔓延る似非知識人たちというわけです。とりあえず、「日本政府のデフォルト」「ハイパーインフレーション(※物価上昇率 年間13000%)」などの、極端な用語を使う自称経済評論家たちは、ガン無視した方がいいでしょう。どうせ、今年中に消え去るか、あるいは平気で意見を翻すに決まっています。
 歴史上、経済破綻クラスのデフォルト(すなわち「債務不履行」)は、(3)及び(4)の負債でしか発生していません。しかも、必ず通貨の暴落、いわゆる通貨危機がセットになっています。自国通貨が暴落した結果、政府もしくは民間が「外貨建て」の負債を返済できなくなり(もしくは利払いができなくなり)、デフォルトするわけです。
 ちなみに、勘違いしている人が結構多いのですが、97年のアジア通貨危機時の韓国のデフォルトは、(4)のデフォルトです。韓国は民間銀行が片っ端から債務不履行に陥り、政府自体はデフォルトを免れています。
 逆に、98年のロシアや01年のアルゼンチンは、これは(3)の債務不履行、すなわち政府のデフォルトです。とは言え、韓国もロシアもアルゼンチンも、「通貨危機」の後にデフォルトしたというプロセス自体は、全く変わっていません。
 
 同じ「通貨危機⇒デフォルト」というプロセスでありながら、なぜロシア&アルゼンチンと、韓国の経済主体が分かれてしまったかといえば、それはもちろん、それ(デフォルト)以前の「国家のモデル」の違いによります。当たり前ですが、ロシアやアルゼンチンにおいて「政府」がデフォルトしたのは、政府の(3)の負債が大きかったからです。(とは言え、両国政府共にGDPの半分程度の規模しか借りていなかったわけですが。) 逆に、韓国が((4)のデフォルトに陥ったのは、民間(特に金融機関)の負債が膨れ上がっていたためになります。
「民間の負債が過度なペースで膨れ上がる現象をバブル経済と呼ぶ」
 なんて、以前、書きました。当時の韓国は、日本などの低金利諸国から借りたお金を、東南アジアの高利回り諸国に投資し、金融機関の負債(しかも対外負債)が急激に膨れ上がるバブル状態にあったのです。
 民間の負債が膨れ上がれば、逆に政府は負債を増やす必要がありませんので、韓国政府はデフォルトを免れたというわけです。


 最近(08年)、政府は財政黒字にも関わらず、民間の金融機関が(4)をデフォルトしたヨーロッパの国があります。そう、アイスランドです。

欧州諸国の財政赤字対GDP比率の推移
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_25.html#Euro

 07年までのアイスランドは、他の欧州諸国と比べても極端な水準の「財政黒字国」でした。政府が財政黒字ということは、多くのケースで「政府が負債を増やす必要が無い」状況が起きていることを意味します。政府の財政黒字の裏で、国内の民間の負債の急激な増加、すなわちバブル経済が発生している可能性が高いわけです。
 実際、アイスランドでは民間銀行が「海外の低利回り諸国からお金を集め、高利回りな証券化商品に投資する」というモデルで大いに稼いでいました。まんま、97年の韓国と同じ状態ということですね。アメリカで不動産バブルが崩壊し、証券化商品が暴落した結果、アイスランド・クローネ(同国の通貨)の暴落が発生し、民間銀行がデフォルトしたと、プロセスまで全く同じです。
 そういえば、扶桑社から出した「崩壊する世界 繁栄する日本」において、わたくしはアイスランドについて、

『冷戦の重要拠点である事実を利用し、西側先進国である島国に、脅迫まがいの妥協を迫る。どことなく、どこかの半島国に似ているような気もするが、きっと気のせいだろう。(P66)』

 なんて書きました。民間銀行がデフォルトするまでのステップまで、両国はそっくりなんですね。
 
 さて、アイスランドの銀行は、主にイギリスやオランダの預金者からお金を集め、それを証券化商品に投資していました。最終的に海外からの借入(今さらですが、「預金」とは銀行にとって「借金」「負債」に該当します)は、同国のGDPの九倍を超えてしまうような状況に至ったのです。
 バブルが崩壊し、投資先の証券化商品が暴落したところで、同国の対外負債が消えるわけでも何でもありません。海外預金者から集めたお金をどのように返済するのか。あるいは、そもそも「国家」として返済する必要があるのかどうか。
 現在、アイスランドと英蘭両国はもめにもめています。

『2010年1月6日 「オランダ政府、アイスランド政府のローン返済拒否に失望」
http://www.portfolio.nl/article/show/3133
 オランダやイギリスからネット預金で多くの預金者を集めていたアイスランドのアイスセーブ銀行が昨年破綻した件で、アイスランド政府は約束していた両政府の肩代わり補償に対するローン返済を拒否した。
 火曜日に開かれた記者会談でアイスランドのグリムソン大臣は、オランダへの13億ユーロとイギリスへの25億ユーロの返済契約に署名しないと発表した。両国はアイスセーブに投資して失った個人預金者に対し補償金を支払っており、この分をアイスランドにローンとして貸し付けていたもの。
 これに対しオランダのボス財務大臣は「非常に失望した」と発言。また自由党の議員は「全く信用できない国である」と怒りを隠さない。同議員は欧州レベルでアイスランドとの自由貿易を停止すべきだと述べている。
 また英国の財務次官も「アイスランドは世界の経済から孤立する可能性がある」と警告を発している。』

『2010年1月7日 「アイスランドは「義務を守る」=預金返済めぐりグリムソン大統領」
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-13238320100107
 アイスランドのグリムソン大統領は6日夜の英BBCテレビの番組で、経営破たんした同国の銀行に資金を預けていた英国とオランダの預金者に対する総額50億ドルを超える返済についてアイスランドは「義務を守る」と言明した。
 アイスランド議会は12月末、英国ならびにオランダ政府が既に預金者に支払った補償金を両国政府に返済する法案をわずかな票差で可決している。
 しかしグリムソン大統領は今週5日、法案の署名を拒否すると表明し、国際金融市場やアイスランド政府に衝撃が走った。大統領の署名拒否を受け、法案成立の是非は国民投票にかけられることになった。
 大統領は「われわれが義務を果たさないとの見方は完全に間違っている。既に存在し、わたしが署名した法律の基本的原理は、アイスランドは義務を守ると宣言するというものだ」と述べた。』

 ちなみに、アイスランドのGDPは175億ドルです。イギリスやオランダに返済を求められている50億ドルとは、同国のGDPの3分の1近いわけです。(日本で言えば、150兆円の返済を求められているようなもの)
 この問題が複雑なのは、そもそも「(4)民間が海外から外貨建てで借りた負債」を、国家として海外に弁済する必要があるのかという、根本的な疑問が存在し、アイスランド国民が納得することは到底考えられないためです。国民投票にかけたところで、否決される可能性が高いと思います。(グリムソン大統領の言っている「義務を守る」とは、「署名した法律の義務は守る」ということで、彼は署名しなかったわけです。)
 
 グローバルにマネーが行き交う状況では、海外政府への貸付(要は国債購入)のみならず、「海外の銀行への預金」についても、規模によっては国際問題の種になってしまうわけです。一般国民が海外の銀行に預金したところで、それは単に「民間の経済活動」に過ぎません。
 その民間の経済活動についても、政府やその国の国民が責任を負わされるのでしょうか。あるいは、負わされるべきなのでしょうか。分かりません。
 アイスランドのケースは、ルールなしで「グローバルにマネーが行き交う状況」を受け入れてしまった世界に、重い問いを突きつけているのです。

 明日に続きます。


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