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「バランスシートが傷んで、民間が前向きの行動をとれないときには、市場は『政府にお金を借りて使ってください。そうしないと経済全体が死んでしまいます』というシグナルを出しているわけで、そのシグナルが超低金利なのである。(世界同時バランスシート不況 P142より)」

 企業の財務分析をする際には、バランスシート(貸借対照表)を数年分見ると、その企業に何が起こっていたか、何となく概要はつかめます。バランスシート「全体」を眺め、方向性の「感触」を掴んだ上で、細かいバランスシートのブレイクダウン(細分化)や損益計算書、他財務諸表の分析に入るわけです。
 というわけで、「バランスシート思考 
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10403130486.html  」の続編になります。(続編と言うほど、話は繋がっていないのですが)
 
 今頃になって、リチャード・クー&村山昇作:著「世界同時バランスシート不況 金融資本主義に未来はあるか(徳間書店)」を読んでいます。この本、当ブログの常連さんにとっては、あまりもにも面白く、一気に読めると思います。
 偶然、クー氏とわたくしが似たような図↓(これ)を作られており、吃驚してしまいました。(P129)

1995年武村正義元蔵相「財政危機宣言」以降の日本政府の負債
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_24.html#Takemura

 もちろん、わたくしとクー氏は目的が全然違うため、グラフの時期は異なっています。わたくしは、武村蔵相(当時)が95年の11月国会で「財政危機宣言!」をしたにも関わらず、その後の長期金利が下がり続けていることを示すために、スタートは1995年です。クー氏の方は、日本のバランスシート不況の全体像を説明し、格付け機関などを批判するためなので、スタートが1983年になっていました。
 ついでに、ソースも違うのですが、もちろん両者共に同じようなグラフになっています。

 さて、この本には上記「政府の負債&長期金利推移」以外にも沢山の図が盛り込まれているのですが、その中でも圧倒的に素晴らしかったものを引用させて頂きました。(携帯の方には、申し訳ないのですが)

アメリカ大恐慌期 全加盟銀行のバランスシート変遷
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_25.html#USBS

 クー氏は世界大恐慌期(1929-)における、アメリカの全加盟銀行のバランスシートの変遷を、グラフ化されたのです。それぞれの時期は、以下の通りとなっています。

 ◇1929年 世界大恐慌が始まる
   当時のアメリカ大統領ハーバート・フーヴァーが、「不況は回復する」という古典派経済学のコンセプトを貫き、政府の経済介入を最小限に抑える政策を継続
 ◇1933年 アメリカの恐慌のピーク
   大統領選において、フーヴァーがルーズベルトに大敗北。ルーズベルトのニューディール政策が始まる
 ◇1936年 恐慌の悪化は食い止められ、経済回復の兆しが見える
  ニューディール政策により恐慌の悪化は食い止められたものの、財政健全派の声が大きくなり、政府は緊縮財政路線に転換。この後、再びアメリカ経済は危機的な状況へ逆戻りする。
 
 ここからの説明は、できればリンク先の三つのグラフをご覧頂きながら、読み進めて頂きたく存じます。
 ニューヨークの株価大暴落の後に、恐慌経済に突入したアメリカは、極端なマネーサプライの縮小とデフレ状態に陥りました。民間が負債縮小に走る中、フーヴァー大統領の方針により、政府までもが国債発行を増やそうとしなかったため、アメリカ国内には「お金の借り手」が誰もいなくなってしまったのです。
 結果、アメリカ経済はフロー(GDP)もストック(バランスシート)も崩壊状態に陥ります。GDPはピークから四割超も減少、失業率は全国で25%超、都市部では50%超という、まさしく「経済破綻」な状況に至ってしまったのです。
 1933年の「米国全加盟銀行のバランスシート」を見ると、預金(注:何度も書きましたが、銀行にとっては負債)が4年前から三割も減ってしまっている事実に驚かされます。預金とはもちろん、民間の家計や企業にとっての「資産」になります。恐慌経済下で政府までもが支出を拡大しなかった結果、フローはもちろん、ストックまでもがゾッとするような損害を被ってしまったわけです。
 この段階で登場した新大統領ルーズベルトが、大々的な公共事業の拡大(政府の負債及び支出の拡大)に乗り出します。いわゆる「ニューディール政策」です。
 政府が最後の借りて、使い手としての役割を拡大した結果、銀行の預金残高は急激に回復しました。1936年には、銀行の預金(しつこいですが、負債)は341億ドルと、大恐慌発生時の1929年の水準を回復したわけです。

 ここで注意して欲しいのは、銀行の「資産側」で何が起きていたか、になります。
 1933年と36年のバランスシート(資産側)を比べると、実は「民間向け信用(要は民間向け貸出)」は増加するどころか、却って減少しており、「公的部門向け信用(要は政府向け貸出)」だけが大きく拡大している事実に気がつくと思います(86.3億ドル⇒163億ドル。ほとんど倍増です。)。
 銀行の負債側に計上された預金の変動とは、要はマネーサプライの変化です。確かに、ニューディールにより景気がある程度回復した時点で、銀行のマネーサプライ(預金)は激増しています。アメリカのバーナンキFRB議長などは、これを根拠に、
「恐慌下では、マネーサプライを拡大させれば、景気回復が達成できる」
 と主張しており、日本にも同じようなことを言っている経済評論家が少なくありません。
 しかし、負債側ではなく資産側を見ると、ニューディールによる景気回復時点で、マネーサプライが拡大した「原因」が、実は公的部門向け信用、すなわち政府への貸出が拡大したためであることが分かるのです。すなわち、マネーサプライの拡大は、あくまで「政府への貸し出し増」の結果であり、別に景気回復の原因でも何でもないわけです。
 
 三つのバランスシートを眺めるだけで、上記のようなロジックが導き出せます。
 ちなみに、1936年にアメリカの景気が回復した結果、上にも書いたように「財政健全化」の叫びが高まり、ルーズベルト大統領は緊縮財政に舵を切ります(まんま、橋本政権です)。結果、再びアメリカは恐慌状態に逆戻りし、完全回復は1941年の第二次大戦参戦を待たなければなりませんでした。
 現在の日本は、1937年から40年くらいまでのアメリカと、全く同じ状況に陥っているわけです。だからと言って、「戦争が必要だ!」などと言っているわけではもちろんありません。日本人らしく、そろそろオリジナリティに富んだ、かつスマートな解決策を産み出すべき時期がきたのではないかと考えているだけです。(確かに麻生前総理は、これにトライはしたものの、失敗しました)
 
 とりあえず、日本の国債金利が世界最低な理由として「従順な日本人が『買い支えている』からだ!」「このままでは買い支えできなくなる!」などと、非常に定性的、感情論的な解釈を大声で叫んでいる似非評論家たちを、何とかしなければなりません。そんな感情的、イメージ的な理屈で、日本中の金融機関が国債購入に殺到するはずがないのです。 
 日本の国債金利が安い理由は、本日冒頭の引用部をご覧下さい。この引用文を読んだ後では、「従順な日本人が買い支えているからだ」系の発言をしている人たちが、いかに経済に無知で、レベルが低いかが理解できると思います。


「うむ、確かに極端にレベルが低い」と思われた方は、
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