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http://www.nicovideo.jp/watch/1259867029

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http://www.youtube.com/watch?v=QmRz77q6tXY




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 昨日からの続きです。
 さて、今回取り上げる二冊目の著作「自由貿易の罠 覚醒する保護主義
http://www.amazon.co.jp/dp/4791765117/  )」において、著者の中野氏はエマニュエル・トッド(フランスの人類学者)の言葉を引用し、以下のように書いています。

『グローバル化した世界においては、自由貿易体制の下では、際限なき外需の追求が、生産コストと賃金の低下圧力となり、内需が縮小し、さらなる外需の追及が進むという悪循環が生じる、とトッドは力説している。
 こうした悪循環は、日本においても発生した。2002年から2006年にかけての緩やかな景気回復は、輸出主導で進んだが、その間、国内の実質賃金は抑制され、内需は拡大しなかった。経済統計上は景気回復が示されていながら、実質賃金が上がらない国民には、その実感がなかった。
 この時期、「日本の内需は、経済の成熟化や人口の減少などによって拡大が望めないので、外需を獲得していかなければ、経済成長は望めない」という議論が支配的になり、国際競争力の強化が唱えられた。その結果として、国際競争力の強化を口実に、実質賃金が抑制されたのである。すなわち、内需は拡大しないので海外市場に進出するしかないという議論そのものが、実は、内需を抑制する原因だったのだ。日本は、この自己実現的な観念の罠にはまり、輸出促進とデフレの悪循環へと巻き込まれていったのである。(自由貿易の罠 覚醒する保護主義 P36)』

 未だに日本経済新聞は、「定義」も「相対化(=他国との比較)」もせずに「日本の輸出依存度は高い」という表現を使っていますが、当ブログが始まった頃の「日本は外需依存」信仰は、現在どころではなく、それはもう凄まじかったのです。初期のユーザの皆さまは、わたくしが「日本の輸出依存度は他国に比して小さい(除アメリカ)」「日本の外需(=純輸出)がGDPに占める割合は相対的に小さい」などとブログやVoiceに書いただけで、定義や相対化を一切せずに、
「違うの! 日本は輸出依存国なの!」
 系の、ヒステリックな書き込みが絶えなかったのを覚えていらっしゃるでしょう。
 この手のフレーズが卑怯なのは、「輸出依存とは何ぞや」という点について一切定義をしていないため、話のすり替えでしかない点です。例えば、輸出依存が「輸出をしていること」という定義であれば、そりゃあ日本は輸出依存国でしょう。(だから何?という話ですが)
 わたくしは「輸出依存度=財の輸出÷名目GDPx100%」と定義し、それを主要国と比較した上で、「日本の輸出依存度は相対的に小さい」と書いているわけです。その反論が「違うの! 日本は輸出依存国なの!」なのですから、日本社会がどれだけ上記「観念の罠」に嵌まりきっていたかが理解できます。
 すなわち、
「日本は輸出依存度が高い。日本は輸出で食べていかなければならない」
 という思い込みが社会的に共有された結果、各企業はグローバル市場における競争に突入。国際競争力に晒され、国内の平均給与が下がり、内需の頭が押さえつけられた結果、さらに輸出への依存を強めていったわけです。
 おまけに、デフレに円安です。企業の視線が海外にばかり向いてしまっても、ある意味で当然なわけです。

参考【日本の給与総額と給与所得者数推移 1972年-2007年】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_25.html#Heikinkyuyo



 グローバル市場というのは、要するに「レッド・オーシャン」です。赤い海で、中国やインドなどの国々と血みどろになりながら競合し、企業が国際競争を勝ち抜くには、実質賃金の抑制は必須です。国内の実質賃金が抑制され、購買力が押さえ込まれれば、「やはり輸出だ」という話になり、企業はますますレッド・オーシャンを突き進んでいく。見事なまでに「観念の罠」に嵌まっていたわけですね。
 とは言え、今年の始めに刊行した「崩壊する世界 繁栄する日本(扶桑社)」でも書きましたが、↑これはただ、当時の日本が「そういう国家モデルだった」というだけです。リーマン・ショック以降(本当はそれ以前から)、「世界同時好況」を支えたアメリカの家計という最終需要が崩壊していっている以上、日本も別のモデルを志向しなければならない、ただそれだけの話です。

FRB議長:米経済に「恐ろしい向かい風」-労働市場脆弱
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=arQvQtdaWOoc
 バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は7日、米経済が「恐ろしい向かい風」に直面していると指摘。脆弱(ぜいじゃく)な労働市場や厳しい信用状況の影響で、景気拡大のペースは「緩やか」なものになる可能性が高いとの認識を示した。
 バーナンキ議長はワシントン・エコノミック・クラブで講演。講演テキストによれば同議長は、「米経済は恐ろしい向かい風に直面しており、これにより拡大のペースは緩やかな状態が続きそうだ」と言及。またインフレ率については「落ち着いた状態」が続き、低下する可能性もあるとの認識を示した。 (後略)』

 アメリカの内需は縮小傾向に入りました。
 高失業率、相次ぐ銀行の破綻、商業用不動産バブルの崩壊、そして家計の負債の減少。バーナンキ議長の言う「インフレ率が落ち着いた状態」というのも、逆にアメリカ国内のデフレギャップ拡大を予見させ、不気味な感じです。
 現在のアメリカは、かつての日本の「細川政権~村山政権」の時期に該当するように思えます。ウォール街は低金利マネーを活用し「グローバル市場」で儲ける一方、国内市場は低迷、資産デフレや失業の悪化により「冷え冷え~」とした状態に陥っています。
 高失業率を解決し、国内市場を再び活性化させようと思えば、最も手っ取り早いのが保護主義なわけです。「保護主義」と書くと、また「世界大恐慌後のブロック経済化が何ちゃら!」と、単純な批判をする人がいます。しかし、アメリカ政府が「国民のお金」を使い、国内景気を活性化させようとしているにも関わらず、その需要を「輸入」という形で外国(中国とか)に奪われたり、ウォール街が「国民のお金」を海外に持ち出し、あちこちでバブルを作っている状況が問題であるのは間違いないのです。
 しかも、アメリカの場合、英語が「世界共通言語」と化しているため、本来は国内の労働者を潤すはずの需要(出版やコールセンターなど)までもが、海外に奪われてしまっています(と言うか、アメリカ企業が低コストに魅かれて、オフショアしただけなんですが)。

 その点、日本には実に素晴らしいリソース、すなわち「日本語という独自言語を喋る、1億人を超える国民」が存在しています。この「独自言語」というのも、言ってみれば参入障壁の一つであり、保護主義の一要因と言えないこともない気がします。やはりこの辺りが、日本の新しい国家モデル構築の際のヒントだと思います。

 グローバル化の進展は、通常経済のフェーズでは有利に働きますが、恐慌経済下では国内の雇用や需要が奪われ、不利に働きます。実践主義の戦略家ぞろいのアメリカが、この事実に気がついていないはずがありません(と言うか、政府首脳部が気がつかずとも、議員は気がつきます)。そろそろ表立って「保護主義」の議論が始まるのではないかなあ、と、予感がしています。
 恐らく、何か別の「美名」が使われるのではないでしょうか。「伝統主義経済」とか「国民主義経済」とか何とか。


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