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丸の内本店~『経済ニュースの裏を読め!』(TAC出版)刊行記念~三橋貴明氏 講演&サイン会
http://www.maruzen.co.jp/Blog/Blog/maruzen02/P/8889.aspx

※先日、出演した「桜プロジェクト 【民主党政権で日本経済が危ない!本当の理由】 」何と、早くも合計視聴数37,000突破!
チャンネル桜 三橋貴明 民主党政権で日本経済が危ない!本当の理由
http://www.nicovideo.jp/watch/1259867029
Youtube版 
http://www.youtube.com/watch?v=QmRz77q6tXY



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 上記「桜プロジェクト 【民主党政権で日本経済が危ない!本当の理由】」の視聴が半端なく伸びていて、吃驚しています。視聴している方々が、どのような「チャネル」で本動画の情報を知ったのか、とても興味があります。
 内容がウケている理由は分かるんです。何しろ、日本の歴史上初めて、「データ」と「グラフ」を使い、財務省式「国民一人当たり借金!」が明確な嘘であることを説明した動画なんですから。(これまで、口で説明したコメンテータはいましたが。河村さんとか、榊原さんとか) 何を大げさなことを・・・と思われるかも知れませんが、逆に「この程度のこと」が「歴史上初めて」になってしまうほど、日本の報道は腐っていたということです。
 本動画を見て、面白く思われた方は、ぜひチャンネル桜にフィードバックして差し上げて下さい。
( info@ch-sakura.jp )反響が大きければ、桜や水島さんも喜ばれるでしょう。

米失業率10%、大統領へ怒りの声「ペテン師だ」(情報提供 一黙様)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20091206-OYT1T00354.htm
 アメリカの失業率が10%を超えた。1983年以来、26年ぶりの危機的水準だ。
 オバマ大統領は4日、雇用問題について国民の声を聞く全国行脚を始めたが、最初に訪れた米産業革命の発祥地、ペンシルベニア州のアレンタウンで待ち受けていたのは、冷ややかな「歓待」だった。
 「大統領、小さな企業が資金を借りられるよう、何をしてくれますか。みんなそれが知りたいのです」
 社会人の就職を支援する地元のコミュニティー大学。質疑の時間になると、厳しい質問が飛んだ。
 「約束する。銀行の人に年内に会う」と大統領。だが、聴衆には不信が渦巻く。(後略)』

 ↑この記事からすると、タイトルは「二つのアメリカ」シリーズの方が相応しいように思えますが、今回はもう少し大きな話です。
 実は、最近読んだ二つの本が、偶然「グローバリズム」や「自由貿易」について疑問視しており、非常に感銘を受けたのです。

経済学はなぜ間違え続けるのか ―マルクスもケインズも見逃した経済の2つの法則 (再登場!) 木下栄蔵:著 徳間書店(
http://www.amazon.co.jp/dp/4198627355/  )
自由貿易の罠 覚醒する保護主義 中野剛志:著 青土社(
http://www.amazon.co.jp/dp/4791765117/  )

 予め書いておきますが、両著ともにグローバリズムや自由貿易を、単純に否定しているわけでも何でもありません。グローバリズムや自由貿易が、その国にとって「害になる時期がある」と言っているだけです。
 そもそも、現在はアメリカ自らがグローバリズム路線を放棄し、保護主義に傾きつつあるわけです。それにも関わらず、単純に「グローバリズムは絶対正義!」「自由貿易こそ、我が神」というノリで、
「三橋!(や木下氏や中野氏) てめえ、何を我々の『神』を全面否定してやがるんだ!」 
 と、反駁するアホが国内の自称評論家連中には多そうなので、予め申し上げておきます。グローバリズムや自由貿易を妄信するのは、「憲法九条教」の信者や「護憲戦士」たちと変わりません。

 まず、木下氏ですが、自由貿易を正当化する基本理論とも言うべき「リカードの比較優位説」を、例によりオペレーションズリサーチの手法で検証し、
主問題経済下(三橋注:通常経済下)においては、リカードの比較優位説が作動し、貿易が正当化され、グローバリゼーションが正しい政策になります。このときは、グローバリゼーションにより全てのプレーヤーが豊かになります。
 一方、双対問題経済下(三橋注:恐慌経済下)においては、リカードの比較優位説は作動せず、貿易は正当化されず、鎖国が正しい政策になります。このときグローバリゼーションを行えば、すべてのプレーヤーが貧しくなります。(経済学はなぜ間違えるのか P146)」
 と表現しています。


 そもそも、リカードはアダム・スミスの流れを継ぐ、バリバリの古典派経済学者なわけです。当然ながら、リカードは経済フェーズについて「通常経済(アダム・スミスの経済)」しか想定していません。恐慌経済下においても比較優位論が成り立つかどうか、リカード自身は、別に検証も何もしていないわけです。
 恐慌経済下とは、どんな状況でしょうか。ずばり、現在の世界です。
 アメリカ経済の現況は、上記の記事の通りです。失業率の悪化、地方銀行の経営破綻(すでに09年だけで130行が破綻)、これまでアメリカ経済を(それどころか世界経済を)牽引してきた家計の「負債減少」という、まさしく木下氏の定義した恐慌経済そのまんまの状況になっています。

恐慌経済(=ケインズ経済)
 ■企業:企業は自社の債務(借金)を最小に
 ■消費者(家計):消費者は自らの債務(借金)を最小にするように行動するか、ケインズ経済を肌で感じ取り、貯蓄に励む

 ちなみに、現在のアメリカは家計の方がダメージを受けていますが、企業側も投資(及び負債)を減らし、恐慌経済下の行動をきちんと取っています。(注:ウォール街は除く) 日本のバブル崩壊は、家計よりも企業のダメージが目立ちましたが、アメリカは逆になっているだけです。
 この状況では、オバマ大統領が全国を行脚すると、失業や資産価格下落、所得低迷に苦しむ国民から「どうしてくれるんだ!」と罵声を浴びる羽目になるわけです。そんな環境下で、
「いや。このまま自由貿易を続け、グローバリゼーションを推し進めれば、あなた方の問題はきっと解決します」
 などと言えるはずがありません。自由貿易を続けても、中国などからどんどん安い製品が入ってくるだけで、国内の雇用環境は確実に悪化します。
 もちろん、アメリカ政府は財政出動を行い、国内の景気の下支えをしようとするでしょう。しかし、政府が「国民のお金(あえて血税とは書きませんが)」を使い、国内に需要を作り出したとして、自由貿易を続けると、折角苦労して創出した需要を海外諸国に奪われる(輸入増、という形で)結果になってしまうのです。輸入とは、その国のGDPの「控除項目」です。輸入が一方的に増えれば、GDPがその分だけ減少し、国内の需要が奪われてしまいます。
 はい。重要な部分なので、しつこく書きます。
輸入とは、自国の需要を他国に奪われることです。そして輸出とは、他国の需要を奪い取る行為なのです」
 ちなみに、分かると思いますが、別に重商主義的なことを煽っているわけではありません。単純に、事実として輸出入とは「そういう意味だよ」と言っているだけです。
 
 もちろん、経済のフェーズが「通常経済」にあるときは、自由貿易大いに結構です。
 しかし、現在のように世界最大の市場(アメリカ)までもが恐慌経済に陥っている状況で、自由貿易を推進したら、全世界の国々が「安値競争」「通貨安競争」に陥り、互いの需要を奪い合う不毛な争いに突入してしまいます。(結果、木下氏の言うように『全てのプレーヤーが貧しくなる』わけです)
 それを避けるために、諸国が自国需要を保護(関税やら、何やらで)しようとした時点で、もはや自由貿易ではなくなります。

 ここまでは、実需面の話。

 アメリカの場合は(日本もですが)、ここに「グローバル化されてしまった金融」という問題が加わります。すなわち、上記の読売の記事に登場した人々を助けようと、政府が国内にお金を大量に供給しても、それが金融のグローバルプレーヤー(要はウォール街)により、海外投資に持ち出されてしまうという問題です。
 ウォール街の人々にとっては、国内で利回りが稼げないならば、海外にもっていけば「自分たちは」儲かるわけです。こうなると、政府が「国民のお金」を国内に蒔いても蒔いても、ウォール街によりどんどん海外に持ち出されてしまうという、非常に嫌な状態に陥ってしまいます。
 お分かりでしょうけれども、政府のお金が国内の「投資」に向かえば、それはアメリカのGDPを押し上げます。ところが、海外投資に向かった場合は、国内のGDPとは無関係になってしまうのです。 
 
 日本の場合、バブル崩壊時点で金融機関は「グローバルプレーヤー」ではありませんでした。そのため、その後の恐慌経済期(今もですが)、国内の金融機関はひたすら国債を買い続け、低利回りにも我慢していました。(別に金融機関のみならず、彼らにお金を「貸している」我々一般国民も、我慢していたわけですが)
 しかし、それでもやはり「国内の需要創出」のために使われるべきマネーが、海外ファンドなどにより国外に持ち出されるケースが頻発したのです。(円キャリーなど)
 
 バブル崩壊時点で、国内の金融機関がグローバルプレーヤーだったアメリカと、そうではなかった日本。果たして、どちらが「幸運」だったのか、ちょっと考えてみるのも面白いかも知れません。

明日に続く。

日本に「ウォール街」や「シティ」が存在せず、もしかして幸運だったのでは・・・と「考え込まれた」方は、
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