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早くも再生回数9500!【大道無門 #197】ゲスト:三橋貴明(経済評論家・作家)


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昨日(ダーウィンの罠 前編 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10388816061.html  )の続きです。「黒旗さん」と「なろ」さんが正解です。取り上げる書籍は、木下栄蔵氏の「経済学はなぜ間違え続けるのか マルクスもケインズも見逃した経済の2つの法則」(徳間書店 http://www.amazon.co.jp/dp/4198627355/  )になります。
 2つの法則とは何ぞやと言えば、経済には「二つの局面」があり、それぞれにより民間の行動の法則が変わるという意味になります(超大雑把に書くと)。木下氏は、この二つの局面を、それぞれ「主問題経済」「双対問題経済」とOR(オペレーションズリサーチ)式に名づけていますが、さすがにコレでは誰も理解できないので、「通常経済」と「恐慌経済」と言い換えて説明しています。
 通常経済というのは、わたくしのブログで頻繁に出てくる「クラウディング・アウトが成立」する世界です。そして、恐慌経済が「クラウディング・アウトが成立しない」世界、すなわち借金返済型不況(=バランスシート不況)になります。
 それぞれの経済における法則は、以下の通りです。

【通常経済(=アダム・スミスの経済)】
 ■企業:企業は自らの利潤の最大化を求めて企業活動を行う
 ■消費者(家計):消費者は自らの効用の最大化を求めて消費活動を行う

【恐慌経済(=ケインズ経済)】
 ■企業:企業は自社の債務(借金)を最小に
 ■消費者(家計):消費者は自らの債務(借金)を最小にするように行動するか、ケインズ経済を肌で感じ取り、貯蓄に励む

 要するに、恐慌経済下では、アダム・スミスの「神の見えざる手」が働かなくなっているわけです。
 アダム・スミスの経済(=通常経済)の下では、需要と供給のバランスにより景気循環が発生し、「需要<供給」になった時点で不況に入ります(これが昨日書いた「通常経済の不況」)。
 そして、不景気の影響で企業が投資を削減し、供給が絞り込まれた結果、「需要>供給」の状況になるわけです。すると、供給不足により製品価格が上がりだし、企業の利益率上昇が期待され、投資が活発になります。結果、GDPが大きく押し上げられ、好況になるわけです。
 この時期に、国家が財政支出を拡大しようとすると、民間(主に企業)が「借りるべきお金」を政府が奪ってしまうことになります。結果、金利上昇により民間の資金調達が困難になり、経済は沈滞します。これこそがクラウディング・アウトです。
 ↑この手の状況がはっきりしているならば、竹中氏や与謝野氏の言う財政健全化論は正しく、金融政策にもそれなりの効果があるわけです。経済政策としては、財政支出を絞り込みつつ、金融緩和のみで対応するのが最も適切なソリューションになります。

 問題は、ご存知の通り90年台以降の日本においては、現実にクラウディング・アウトは全く発生していないという事実です。すなわち、バブル崩壊以降の日本は、ずっと「恐慌経済」の状態にあったのです。
 恐慌経済下では、企業や消費者が環境(債務増大)に適応しようとした結果、投資と消費が連鎖的に縮小していく現象、すなわち「恐慌」に陥ります。恐慌経済下では「神の見えざる手」は働かず、「合成の誤謬」により支配されるのです。
 なぜ通常経済から恐慌経済へのシフトが起きるのかと言えば、もちろん原因はバブル崩壊です。何度か書きましたが、バブル経済の特徴は「資産価値の上昇」でも何でもなく、「負債(債務)の極端な増加」なのです。バブル崩壊で資産が大きく毀損する中、負債総額は減ることはありません。結果、企業や消費者が上記の「恐慌経済下の行動」を採り始めるわけです。

参考【1980年以降の日本の一般企業、及び政府の負債残高推移 】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_24.html#Babble
赤い実線矢印(→)部分こそが、まさにバブル。

近代史が4回しか経験したことのないケインズ経済下において、今回の日本政府の政策(財政出動により国民所得Yを減少させなかったこと)は、近代史において初めての輝かしい成功例といえる。しかし、大きな問題は国民もマスコミもすべて成功とは思っていないことなのである。(「経済学はなぜ間違え続けるのか P71)』
三橋注:4回の経験とは、オランダチューリップバブル、イギリス南海泡沫事件、大恐慌後のアメリカ、90年代の日本。

 さて、木下氏は通常経済から恐慌経済への流れ(及び通常経済への復帰)を、一枚のフローチャートで表しています。

恐慌経済のフローチャート
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_24.html#Kyoko

 まさに、この一枚の図こそ、日本人が頭に叩き込んでおくべきチャートだと考え、そのまんま引用させて頂きました。
 この図で笑ってしまったのは、「マスコミ等の批判に負けて財政再建に走る」であったり、「マスコミ等の批判に負けて政府は公的資金を投入しない」などと、マスメディアを正しくボトルネックとして捉えているところです。まさしく、日本の経済問題(政治もだけど)は、メディア問題に直結しているわけですね。
 さて、木下氏は上記引用の通り、近代史が4回(現在は5回目)しか経験したことのない恐慌経済において、何とかGDPを崩壊させなかった日本政府を正しく評価しています。同時に、バブル崩壊後に二回、「マスコミ等の批判に負けて財政再建に走る」をやってしまい、日本経済の通常経済への復帰の足を引っ張った政権を名指ししています。そうです。橋本政権と小泉政権です。
 日本の場合は、「マスコミ等」の「等」のところに、財務省という厄介な存在が入るのですが、いずれにせよ、橋本政権と小泉政権が日本の通常経済への復帰を妨げたのは間違いありません。この辺の話は、今月18日(って、今週!)発売になる「民主党政権で日本経済が危ない!本当の理由」http://www.amazon.co.jp/dp/4776205734/  に詳しいです。
 ちなみに、わたくしは橋本政権や小泉政権の財政健全化や、竹中氏などの新自由主義者の考え方を、全面的に否定しているわけでも何でもありません。通常経済の不況下においては、彼らの政策や考え方こそが正解になります。
 通常経済下で政府の財政支出が拡大し、クラウディング・アウトが起きている状況であれば、わたしだって諸手を上げて、
新自由主義、万歳!
 とか何とか叫ぶでしょう。
 但し、現在の日本のような恐慌経済下では、間違っている。ただ、それだけの話です。
  
 昨日から継続している「ダーウィンの罠」は、明日まで続きます。なぜ、三日間もかけて詳しく解説するのかといえば、「現在の日本が未だに恐慌経済下にある」という認識こそが、日本の諸問題の多くを説明し、ソリューション(解決策)構築への道筋を示してくれるためです。
 ちなみに、ORが元になっているとは言え、木下氏の本はそれほど難解ではありません。わたくしは、先日の有楽町における街宣の往復の時間だけで読めてしまいました。わたくしがそうだったように、本ブログの読者の皆さまにとっては目が覚めるほど面白いと思います。この本、ちょうど「ジパング再来」と同じ頃に発売されているんですね。もっと早く読んでおけばよかった。。。

 それでは明日に続きます。 

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