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 セグメンテーションとは何ぞや、と思われた方は、前回の「セグメンテーション http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10365919996.html  」を読み返してください。
 わたくしの知る限り、出版社の「出版戦略」は以下の二つに分かれます。(注:以下の「何とか戦略」は三橋が勝手につけたものです)

点数戦略:いわゆる「数打ちゃ当たる」戦略で、各書籍の市場セグメントなどは意識せず、出版点数をこなすことに重点を置く
焦点戦略:市場をセグメンテーションし、出版点数を絞り込み、各出版書籍について重点的にマーケティングを行う

 当たり前といえば当たり前ですが、規模の大きい出版社は「点数戦略」を、小さい出版社は「焦点戦略」を採っているケースが多いようです。
 ちなみに、もしも読者の皆さんが作家デビューをしたいと考えるなら、焦点戦略を採っている出版社の方が良いでしょう。焦点戦略を採っている出版社は、たとえ新人であっても、出版後の広告などについてきちんとフォローしてくれます。但し、当たり前ですが焦点戦略とは出版の「絞込み」なので、「デビューの確率」は下がります。
 逆に、点数戦略を採っている出版社は、収益性とかはあまり考えずに、本を出してくれるかも知れません。とは言え、出版後のフォローはほとんどないので、「売れる確率」は下がります。
 要は、何事もそうですが、一長一短というわけです。
 三橋がまだ本を「出したことがない」ある出版社(※この出版社は「点数戦略」を採っています)の編集さんとお話した際に、なぜ彼の出版社が「数を追っている」のかについてが話題になりました。結局、市場をセグメンテーションし、出版点数を絞り込むと、ニーズを外す確率が高まるため、「数打ちゃ当たる」の方針の下でやっているそうです。
 とは言え、現在は「数を打ってもニーズを外す」という酷い状況に陥っており、全体的に厳しい状況に至ってしまったとのことでございます。それなら焦点戦略に切り替えればいいと思われるかも知れませんが、それをすると少なくとも「売上」は確実に下がるので、なかなか踏み切れないようですね。
 
 とは言え、焦点戦略で「ニーズを捉えれば」オッケーかと言えば、そんなこともありません。中小出版社が焦点戦略で大成功し(要はベストセラー書籍を出版し)、その書籍を大量に印刷したところ、なぜかいきなり売れ行きが伸びなくなり、収益構造が一気に悪化し、最終的に倒産するというケースもあります。(俗に「ベストセラー倒産」と呼ぶそうです。)
 要は、この種の戦略やモデルに関する様々な事例をベースに、その出版社に最も相応しいマーケティング戦略を構築するというのが正解なのだと思います。(この種の戦略構築を支援するのが、中小企業診断士の仕事になりますです、はい。)
 
 ところで、ご存知の通り新聞産業のほとんどは「点数戦略(部数戦略?)」の罠に嵌まっています。全体的な需要が(紙媒体では)落ち込んでいるにも関わらず、セグメンテーションをせずに、全体をカバーしようとする戦略から抜けきれないのです。結果、全体が同時に沈んでいくという、大変笑える(個人的に)状況に至っています。
 この苦境を脱するには「焦点戦略」への転換しかありませんが、それをすると一部のセグメンテーションの読者は確実に失うことになります。すなわち、売上は一時的に下がってしまうのです。そうなると、現在のコストを吸収しきれなくなるため、主要債権者(銀行)から見捨てられる可能性が高まります。
 なかなか、にっちもさっちもいかない状況ですね、はっはっは。
 ちなみに、日本経済新聞の苦境が最も浅いのは、一応、焦点戦略を採用し、その市場セグメントの中で独占に近い立場を確立しているためです。また、雑誌の方で言えば、親会社(産経新聞)が赤字に悩む中、何と「正論」は黒字だそうです(現在、国内で発行されている雑誌のほとんどは赤字です)。日経が新聞社の中で最も健闘し、正論が黒字というのは、なかなか示唆に富んだ事実に思えるのですが、いかがでしょうか。

9月の米個人消費支出、0.5%減 新車購入補助の終了響く
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20091030AT2M3004I30102009.html
 米商務省が30日発表した9月の米個人消費支出は、季節調整済みの年率換算で10兆1667億ドル(約927兆円)となり、前月の改定値と比べ0.5%減った。8月に終了した政府の新車購入補助制度が大きく影響するとみていた市場の予測通りの結果となったが、減少は5カ月ぶりで、昨年12月の1.2%減以来9カ月ぶりの減少幅。景気は復調傾向にあるとはいえ、民需が弱いことが改めて浮き彫りになった。
 9月は、自動車や家電などの耐久消費財が前月の6.1%増から7.0%減に落ち込んだ。政府の景気対策の有無で消費が大きく振れている格好。衣料などの非耐久消費財は0.7%増。8月の消費支出は1.4%増で速報値から0.1%上方修正された。
 税引き後の可処分所得はほぼ横ばい。可処分所得に占める貯蓄を示す個人貯蓄率は前月比0.5ポイント増の3.3%。』

 予想通りとは言え、アメリカの9月の個人消費支出減少幅は、かなりショッキングです。
 特に注目すべき点は、耐久消費財が8月の6.1%増から、9月は7%減に落ち込んでしまった点になります。要するに「政府が所得移転すれば、消費は伸びるが、所得移転を中止すれば、たちまち消費は減る」という状況が明確化されてしまったわけです。
 金融政策はゼロ金利&量的緩和。ドルはジャブジャブ。それでも政府が支出を止めれば、すぐにマイナス成長。まさしくバブル崩壊以降の日本が経験した、バランスシート不況そのままです。
 恒例の「金曜日の銀行破綻」も継続しており、2009年のアメリカ銀行破綻数はすでに115に達しています。(詳細は「Failed Bank List」 http://www.fdic.gov/bank/individual/failed/banklist.html  で見れます。) 地方の銀行破綻が止まらないのは、もちろん商業用不動産問題の悪化が本格化してきたためです。
 しかも、アメリカの中小企業のファクタリングの中心であった、CITの破綻がついに確定的になりました。ファクタリングとは、中小企業などの売掛金の現金化(無論、手数料が取られます)サービスのことです。CITの破綻は、アメリカの中小企業の資金繰りを一気に悪化させることになるでしょう。
 この状況にも関わらず、FOMCは長期米国債買取を「予定通り」終了させてしまいました。さらに、米国債発行上限問題の行方も、混沌としています。
 
 アメリカ当局者が、自国経済が通常の景気循環による不景気ではない、バランスシート不況に陥っている事実を、きちんと認識しているように祈らずには入られません。

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