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上記連載Klugに関連した
「対談セミナー第二弾!経済評論家「三橋貴明」×FXCMジャパン・チーフエコノミスト「村田雅志」 日本人はどこまでだまされるのか」 
 三橋貴明の始めての「対談形式」の講演会になります。単独の講演はすでに結構数を重ねているのですが、対談形式は初めてです。

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 今回のシリーズ「貯蓄の恐怖」は、あの伝説(個人的に)の「実効為替レートの名目値と実質値  http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/22031617.html  」以来の難しさなのではないかと思います。お覚悟を。

 発端は、すでに廣宮さんたちがブログを書かれている以下の記事です。

銀行の国債保有、最高水準 6月末の残高111兆円
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090828AT2C2701F27082009.html
 銀行に預金の形で集まったお金が国債市場に流れ込んでいる。資金需要の低迷により銀行が運用難に陥っているためで、国内銀行が保有する国債の残高は昨秋から急増、6月末には111兆円台と最高水準に達した。企業や個人への融資金利の基準となる長期金利の上昇を抑える効果がある一方、預金で集めたお金が民間の経済活動に回らない構図も鮮明になっている。
 銀行は預金で集めた資金を企業や個人に貸し出しているが、余った分は有価証券などで運用している。日銀の「民間金融機関の資産・負債統計」(オフショア勘定含む)によると、国内銀行の6月末の預金額は過去最高の約573兆円に拡大。一方、貸出金は約431兆円と3カ月連続で減った。預金から貸出金を引いた「預金超過額」は過去最高の142兆円に達している。この8割程度が国債に回っている計算になる。』

日本国家のバランスシート 2009年3月末日版
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_22.html#BS2009Q1

 できれば上記の「日本国家のバランスシート」を見ながら、以下のエントリーを読み進めて頂きたく存じます。
 まず、日経の記事を国家のバランスシートと絡めて整理します。

■(日経記事)国内銀行の6月末の預金額は過去最高の約573兆円に拡大⇒国家のバランスシート上の「家計の資産」及び「金融機関の負債」に占める預金額が、それぞれ573兆円
■(日経記事)貸出金は約431兆円⇒国家のバランスシート上の「金融機関の資産」及び「非金融法人企業の負債」に占める貸出金(企業融資など)が、それぞれ431兆円
※説明を簡単にするために、家計に貸し出された住宅ローンなども「企業融資」と同じ扱いとします。
■(日経記事)「預金超過額」は過去最高の142兆円に達している⇒家計(我々一般の日本国民)が銀行に預けた(と言うか、貸し付けた)お金のうち、142兆円が企業などに貸し出されず、銀行の手元で浮いている。

 この浮いた142兆円に対しても、銀行は金利を支払わねばならず、そのまま寝かせておくと、いわゆる逆ザヤが発生します。そこで、銀行は142兆円の八割を国債で運用しているわけです。(残り二割は何で運用しているんですかね・・・。まあ、いいですが。)

 さて、ここでガラリと話が変わりますが、先日、ある方が以下の本を、
「面白くないけど、必ず読んでおいて欲しい」
 という、まことに嫌な言い方で勧めてくれました。

日本を滅ぼす「経済学の錯覚」』 堂免 信義 (著)  光文社
http://www.amazon.co.jp/dp/4334933645

 この本、現在の日本で蔓延している「経済の誤解」について、かなり本質を突いた一冊になっています。
 本日は同書の中から、一つ、非常に的を射た「たとえ話」をご紹介しようと思うのですが、その前に、以下の原則を頭に入れておいて欲しいのです。

Ⅰ. フロー(GDP)はその国の全経済主体(家計、民間企業、政府等)の支出の合計である。
Ⅱ. フロー上で、誰かの支出は誰かの所得である。よって、GDPはその国の全経済主体の所得の合計である。
Ⅲ. 支出とは、消費と投資の合計である。

 上記を頭に焼き付けた上で、以下の「たとえ話」をお読みください。

『ある日突然、すべての江戸町人が稼ぎの5%を貯める決心をしたとします。銀行も郵便局もない時代ですから、タンス預金になるでしょう。5%のカネが財布からタンスに移り、翌日の町人の稼ぎは、前日の95%に落ち込みます。落ち込んでもまたその日の稼ぎの5%を貯める。この調子で「5%貯め込み」を10日間続けると、1日の稼ぎは以前の6割弱(0.95の10乗は0.58)に急落します。
 10日間で稼ぎ1日分の4割弱、年収日にしてわずか0.1%が貯まりますが、コレでは貯蓄どころか暮らしが成り立たなくなってしまいます。(日本を滅ぼす「経済学の錯覚」 P37』

 もう少し分かりやすく説明しましょう。
 GDP100億円、ストックも100億円の国があったとします。この国では投資活動が一切なく、同時に誰もが全所得を消費に回していると仮定します。すなわち、貯蓄の変動がゼロです。
 ここで、なぜかある年、国民が一斉に貯蓄意識に目覚め、所得の5%を銀行に預金してしまいました。さて、何事が生じるでしょうか。
 
 もちろん、ストックは100億円から105億円に増えます。
 しかし、国民の所得の5%が貯蓄に回った、すなわち貯蓄率5%というわけで、消費性向は100%から95%に下がります。消費が5%減ったため、投資が存在しないこの国のフロー(GDP)は前年比でマイナス5%成長となります。
 翌年、所得が5%減った状態で、さらに所得の5%を貯蓄に回した場合、フローはさらにマイナス5%となるわけです。

 ちなみに、貯蓄とは「銀行預金」などではなく、「所得のうち、消費に回らなかった分」あるいは「所得のうち、GDP拡大に回らなかった分」という定義になります。すなわち、借金返済も「貯蓄」に含まれるのです。

 さて、冒頭の日経の記事で『「預金超過額」は過去最高の142兆円』とありますが、これは「家計の所得のうち、消費(フローの一部)に回らなかった上に、企業などの投資(フローの一部)にも回らなかった金額」の累計になります。これがもし一年間の増加額で、かつ増加した預金超過を、最終的に誰も使わなかった場合、日本のGDPは一気に三割減少することになります。
 もちろん、現実にはこの預金超過額を政府が借り受け(国債発行という形で)、フローに回している(政府最終消費支出及び公共投資)ため、日本のGDPは崩壊せずに済んでいるわけです。(リチャード・クー氏の言う「所得循環に戻す」です。)

 貯蓄とは、
本来は消費としてフローの支出の一部となるべきお金が、ならなかったということを意味しています。
 その「消費に回らなかった分」のお金を、誰かが投資し、フローに戻してくれればいいのですが、そうでない場合は・・・・。

 明日に続く。 

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