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総選挙関連の書き込みは【集合知プロジェクト】日本が大好き!Vol.7 の方にお願いいたします。
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【「ジパング再来 大恐慌に一人勝ちする日本」をお買い上げ頂いた皆様へのお願い】  「ジパング再来 大恐慌に一人勝ちする日本」のご感想は、以下のamazonのカスタマーレビューにお書き頂きたくお願い申し上げます。
http://www.amazon.co.jp/dp/4062156156/
 ご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。(三橋)


 わたくしが「ドル崩壊!」を書いた当時のアメリカの不動産ローンの状況は、サブプライムローンの延滞率(オプションARM)が20%を突破、プライムローンの延滞率が3%程度の頃でした。それが今やどの程度の水準になっているかと言えば、

-アメリカの不動産関連データ-
米国の住宅ローン延滞率と失業率
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_22.html#USRealEstate

 サブプライムローンの延滞率が40%を突破サブプライムとプライムの間に位置するAlt-Aの延滞率が20%を突破、そして、プライムローンまでもが延滞率15%突破という、もはや住宅ローンビジネスとして全く成り立たない状況になっています。サブプライムローンに至っては、貸出債権の四割が延滞状況になっているわけで、
そもそも誰じゃ!こんなローン貸し出しを拡大していったのはっ!
 という感想しか浮かんできません。
 しかも、プライムローン(優良な借り手向けの住宅ローン)までもが、延滞率15%になってしまっているのですから、この状況で不動産バブル崩壊が底打ちとか何とか言われても、「全く信用できない」でございます。図表Ⅰ-3-3の通り、失業率が二桁目前に至っている以上、今後のアメリカ不動産市場において、延滞率が一気に改善するとはとても考えられないわけです。
 さて、このサブプライムローンなどの各種住宅ローンを証券化したものが「RMBS(住宅ローン担保証券)」です。
 先日のエントリーで、
2007年まで、海外の「目ぼしい金融商品」とは、サブプライムローンを含んだCDOやRMBSでした
 と書きましたが、このサブプライムローンを証券化したRMBSを格付け機関がAAAと評価していた事実こそが、今回の世界的な危機のそもそもの原因なのです。

サブプライムRMBS価格指数
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_22.html#USRealEstate

 ご覧頂いた通り、サブプライムローンのRMBSは、ムーディーズが一気に格下げを行った2007年7月10日、いわゆる「ブラディ・チューズデイ」に前後し、価格が暴落し始めました。格付けがBBBやAのRMBSは、07年初めの5%未満、AAAであっても20%強にまで値が下がってしまったわけです。
 と言うか、価格が20%にまで暴落した証券化商品の格付けが「AAA」という時点で、もはや詐欺も同然なのですが。
 昨日のエントリーで、
日本の場合、銀行の悩みは「預けられたお金の運用先がない」ということに尽きる
 と書きましたが、運用先に悩んだ日本の銀行が、この手の証券化商品を買い求めていたら、今頃大変なことになっていたわけです(一部の金融機関は、実際になっているようですが)。

資産        | 負債
RMBS  1億円 | 銀行預金 1億円

 バランスシートが上記の状況から、RMBSの価格が八割下落した場合、バランスシートは

資産        | 負債
RMBS 2千万円 | 銀行預金 1億円

 となり、差額の8000万円分の評価損を求められます。フローの損益計算書の方に評価損8000万円が計上され、それがバランスシートの純資産部分から控除され、左右がバランスすることになります。証券化商品の時価暴落により、資産サイドが縮小しても、負債額が消えるわけではありません。(負債評価益、なる、面白会計を行わない限り) 1億円の銀行預金で購入した証券化商品が2千万円に値下がりしても、銀行は預金者に求められればきちんと1億円を返済品ければならないのです。

 実は、「レバレッジ経営」や「ROE経営」とは縁遠かった邦銀ですが、何気にレバレッジ倍率(総資産÷純資産)は高くなっています。
 IMFのGlobal Financial Stability Report2009年4月版によると、主要国の銀行のレバレッジ倍率とROEは、以下の通りとなっています。

イギリス 15.5倍   6.2%
ベルギー 33.0倍   13.2%
ルクセンブルグ 18.9倍   15.1%
アイルランド 23.9倍   19.1%
日本 30.5倍   6.1%
ドイツ 23.5倍   4.7%
オランダ 31.2倍   18.7%
フランス 24.5倍   9.8%
スイス 19.7倍   17.7%
アメリカ 9.8倍   7.8%

 レバレッジ倍率が高い割に、日本の銀行のROEは大して高くない(6.1%)ので、預金規模の割に収益性が低いことが見て取れます。逆に、日本以外のハイレバ諸国のROEは、軒並み二桁に達しているのです。
 結局のところ、邦銀はわたくしたち日本国民から預けられた膨大な資産をもてあまし、日本国債などで低利運用していたわけです。(そのため、レバレッジが大きい割りに、ROEは小さいのです。)
 とは言え、上記のROEが高い国々の銀行が「何で運用していた」のかと言えば、サブプライムローンを含んだRMBSやCDO(債務担保証券)なわけです。国内で過剰になったマネーを安全志向の国債で運用していた邦銀と、海外から借り入れてまで高利回りの証券化商品で運用していた欧州銀行群。どちらが正しかったのかは、歴史が決めてくれるでしょう。

※この辺の話は「ジパング再来 大恐慌に一人勝ちする日本 
http://www.amazon.co.jp/dp/4062156156/  」で細かく解説しています。
 
 ところで、以前、欧米銀行のレベル3資産(CDOやRMBSなど、時価が把握しにくい資産)について取り上げましたが、日本でも高リスク資産の開示義務が強化されるようです。

会計基準委、高リスク資産に開示義務 来期にも
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20090803AT2D2702J02082009.html
 上場企業の会計基準作りを手掛ける企業会計基準委員会は、金融機関などが保有する高リスク金融商品の開示を強化する。実勢価格の把握しやすさに応じて金融商品を3段階に分類するのが柱で、決算書に内訳や残高の掲載を義務付ける。財務の透明性を向上し、金融危機で時価評価が困難な証券化商品を抱えた金融機関などの信頼性向上につなげる考え。2011年3月期の適用を目指す。
 市場で売却しにくく価格下落リスクのある金融商品を金融機関や事業会社がどの程度抱えているかを、投資家や預金者、取引関係者らが把握しやすくする。現在は「売買目的」「満期保有」など保有目的に応じて財務諸表に計上しているが、これとは別に財務諸表の補足情報として掲載する。』

 まさかとは思いますが、開示義務が強化された途端、レベル3資産が次々に邦銀のバランスシートから姿を現したりはしないでしょうね(笑
 もっとも、レベル3資産を多く抱えているのであれば、邦銀のROEが(レバレッジ倍率の割に)あそこまで低いことの説明が、逆に付かなくなるわけですが。


欧州のハイレバレッジ高ROE諸国の状況と今後の運命に、戦慄を覚えた方は、↓このリンクをクリックを。

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