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Klugにて「三橋貴明の『経済記事にはもうだまされない』」連載中

Voice+で中国経済に関して連載中
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総選挙関連の書き込みは【集合知プロジェクト】日本が大好き!Vol.5 の方にお願いいたします。
Yahoo!版 http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/29979449.html
Ameba版 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10306223139.html

 Voice+の第一回で取り上げたネタですが、中国は自国の失業率について「登録失業率」なるワケワカメな指標しか公表しません。
http://voiceplus-php.jp/web_serialization/china_economy/001/index.html
 登録失業率とは何ぞや、と思われた方は、上記Voice+Web連載「第1回 中国の最悪の輸出品」の冒頭に、いきなり「登録失業率という謎」という項を設けて説明していますので、ご覧下さい。
 
 さて、中国が、
わが国の 登録 失業率は4.3%である!
 と発表するのはあちらの勝手ですが、問題なのはこの登録失業率4.3%を、あたかも中国全土の失業率であるかのごとく、日本のマスメディアが報じてしまう点です。「中国の最悪の輸出品(統計指標)」と国内マスメディアの無責任ぶりは、Voice+連載における一貫したテーマでした。
 ちなみに、Voice+の連載はPHP研究所がハードカバーとして出版する予定になっており、わたくしは最終章となる第四章分の原稿をすでに入れてしまっています。最終章がWebに掲載されるのは、恐らく8月10日以降になると思いますが。

中国で失業率上昇、上期4.3% 大卒3割就職できず
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090725AT2M2402U24072009.html
 中国人事社会保障省は24日、1~6月期の都市部の登録失業率が4.3%となり昨年末を0.1ポイント上回ったと発表した。同省は「雇用情勢は安定を保っている」と強調したが、新卒大学生の3割以上の就職先が決まらないほか、金融危機以降は出稼ぎ農民が低賃金労働を強いられるといった問題も表面化している。経済成長や社会安定のカギを握る雇用情勢はなお予断を許さない状況だ。
 人事社会保障省によると、4~6月期の都市部の登録失業者数は1~3月期より9万人減の906万人。企業の人員削減ペースが減速したことなどから、今年の雇用創出目標である900万人のうち63%にあたる569万人の新規就業を達成したという。
 ただ今年の新規労働力供給は2400万人にのぼる見通しで、同省政策研究局の尹成基局長は「農村の労働力や新卒者に職業訓練を実施するなど、技能向上を図ることで雇用を確保したい」との見解を示した。』

 別にわたくしがVoice+で散々に批判したからではないと思いますが、一応、日経は紙面版に、登録失業率の説明と、農民工を含めた「より広義の」失業率を載せています。(と言うか、見出しはむしろそっちにしろよっ!

『▼中国の失業率 日本経済新聞(2009年7月25日 朝刊)
 中国人事社会保障省が発表する失業率は、失業保険に加入するなど当局に登録した都市部の労働者のみを対象とした統計。全国に2億2500万人いるとされる農民工の大部分は含まれていない。同省は昨年末の都市部の登録失業率を4.2%と発表しているが、中国社会科学院は、農民工ら未登録者を計算に入れれば、実際の失業率は9.4%に高まると分析している。』

 昨年末時点で9.4%なので、現時点では二桁に届いている可能性が濃厚だと思います。何しろ、民工が一斉に解雇されたのは、今年の二月の旧正月です。
 Voice+でも書いたように、問題なのは実質的な失業率が二桁前後に達しているにも関わらず、国内メディアが、
中国の 登録 失業率は4.3%
 という見出しで記事を書いてしまうことです。よほど詳しい人でもなければ、普通に、
「ああ・・・。中国の『失業率』は4.3%なのか・・・・」
 と誤解するでしょう。日経はまだしも「登録失業率とは?」なる解説をつけていますが、他の新聞社がそれに倣うとは思えません。と言うか、オンライン版の方にもきちんと解説つけとけよ、日経・・・。

 ところで、失業率は中国のみならず、他国も「独自失業率」を発表しているケースが少なくないのですが、その場合でもまともな国は世界共通のILO基準の失業率の方も合わせて公表します(日米欧などはILO基準のみ)。

英失業率、6月は4.8% ILO基準の3~5月期は7.6%
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090715AT2R1500215072009.html
 英政府統計局が15日発表した6月の失業率は4.8%(英国基準速報値、季節調整済み)だった。失業者数は前月に比べ2万3800人増加し、156万100人となった。
 5月の失業者数の増減幅は速報値の3万9300人増から3万800人増に修正された。5月の平均賃金の上昇率は前年同月比2.2%だった。
 3~5月期の国際労働機関(ILO)基準の失業率は7.6%だった。

 ちなみに韓国の場合は、失業率が3.2%(2008年)と低いのですが、同時に「雇用率がOECD下位」という、いかにも韓国らしい面白統計になっています。
 OECD諸国の雇用率の平均は66.5%(日本は70.7%)なのですが、韓国は63.8%と下回っています。しかし、失業率は3.2%。
 何じゃそりゃ、という話ですが、要は失業率の計算時に「非経済活動人口」として除外される主婦、学生、高齢者、求職放棄者、就職準備者の人口が多いからだそうです。(ちなみに直近の韓国の失業率は3.9%) 何というか、見た目の統計指標を取り繕って、根本的な解決から目を逸らすところなど、中国と韓国はそっくりですな。

 現在、世界からは刻一刻と、需要と雇用が失われている状況です。(特に欧州は凄まじい・・・) 嫌な話(と言うかリアルな話)ですが、「戦争」はこの二つの問題を共に一気に解決してくれます。そういう意味で、現代は確かに1930年代に様々な面で似通っているわけです。
 とは言え、1930年代には一般の人々が多対多でコミュニケーションできるツール(インターネットのこと)は存在せず、マスメディア(とその裏にいる人々)のプロパガンダやミスリードに対抗することは、非常に困難でした。
 一見、似ているようでも、やはり現代は1930年代ととは違うのです。

「韓国の面白統計」という表現に(笑w)となってしまった人は、
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