三橋貴明診断士事務所
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Yahoo!版 http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/29979449.html
Ameba版 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10306223139.html
国家経済のフローたる「国内総生産(正しくは国内総支出ですが)」は、以下の通りブレイクダウンすることができます。
■個人消費(民間最終消費支出)
■政府最終消費支出
■民間住宅投資
■民間企業設備投資
■公共投資(公的資本形成)
■在庫変動
■純輸出(※財・サービスの輸出-財・サービスの輸入)
ちなみに、2008年の日本の名目GDPの百分比は、以下の通りでした。
【日本の名目GDP百分比 2008年版】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_17.html#JPGDP2008
■個人消費(民間最終消費支出):57.79%
■政府最終消費支出:18.52%
■民間住宅投資:3.24%
■民間企業設備投資:15.87%
■公共投資(公的資本形成):3.95%
■在庫変動0.48%
■純輸出(※財・サービスの輸出-財・サービスの輸入):0.14%
わたしゃあエコノミストでもなければ、経済評論家でもない、ただのコンサルタント(兼作家)なので、
「日本は○○であるべきなんだあぁっ!!!」
なんてことは、口が裂けても言いません。その時点の外部環境や内部環境に応じ、最も適切な戦略を採用するべきでしょう、というのが一貫したわたくしの立場です。
経済成長の方法というのは意外に種類が多く(当たり前ですが)、各国ごとにより様々な「国家のモデル」を持ち合わせています。(持ち合わせていました。) 但し、どの国もフロー(GDP)のみでは成長戦略を語ることはできません。ストックとの関係性に着目しなければ、正しい国家のモデルは見えてこないのです。
例えば、07年までのアメリカは家計の消費拡大により成長していました。しかし「消費」というのは、あくまでフローの一項目であり、これだけではストック側がどうなっているか分かりませんね。
現実には、アメリカの家計は借金を増やす、すなわちストック(バランスシート)上の負債を積み上げることで、消費を拡大していたわけです。そのアメリカ家計の負債の債権者は誰かと言えば、もちろん「世界中の金融機関」であり、さらに最終的な債権者は「世界中の金融機関に資金を投資するなり、預金していた人々」になります。すなわち、我々一般の日本国民も、マネーフローを辿っていくと、アメリカ国民の負債の債権者の中に含まれているわけですね。
とは言え、我々日本国民は、07年までアメリカへの直接的な輸出、間接的な輸出を拡大することで、それなりに潤っていました。アメリカ国民が消費に使うお金を(何段階も経て)貸し出し、物を販売することで儲ける、というモデルになっていたのです。
要するに、アメリカの成長戦略は、もろに「グローバルの活用」が根っこにあったわけですな。
さて、日本ですが、アメリカのように世界中からお金を借り、国民に使わせるという成長モデルが可能でしょうか。もちろん、不可能でしょう。日本人は性格的に借金を好みませんし、ましてや海外からお金を借りるというモデルを受け入れるとは、とても思えません。
すなわち、日本はアメリカとは内部環境が異なるわけです。
不況時には上記GDPの支出項目の「どれか」をドライブさせ、他支出項目への波及を期待することになります。資本主義国の場合、政府が「何とかできる」支出項目は、意外に限られています。まさか日本政府が、日本国民に、
「さあ、所得の何十パーセント以上は、必ず消費しなさい。貯蓄は禁じます」
などと命じることはできませんし、企業に、
「君たちの企業は、今年は幾ら幾ら以上、必ず投資するように。しなければ、罰します」
などと命じることも、また、不可能なのです。
結局、政府ができることは、政府最終消費支出及び公共投資を拡大するか、あるいは所得移転や減税により、家計の消費や企業の投資を後押しするしかないわけです。(但し、所得移転や減税そのものは、フローとは無関係です。フローが増えるのは、移転された資金が使用された場合のみ)
今回の危機に際し、日本政府は様々な対策を打ってきましたが、基本的に↑これの枠内に収まっています。
例えば、エコカー減税は、減税することにより政府が家計(企業にではないです)に所得を移転し、個人消費の拡大を図ったものです。エコカー減税により個人消費が拡大すると、企業の業績がアップし、投資や(従業員給与を経た)個人消費へと波及し、いわゆる乗数効果が働くことになります。
『プリウス売れすぎで、エコカー補助延長検討へ
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090724/biz0907241611019-n1.htm
トヨタ自動車のハイブリッド車「プリウス」への注文が殺到し、いま購入の契約をしても国のエコカー購入補助が受けられる今年度末までに新車登録が間に合わなくなる可能性が出ていることについて、二階俊博経済産業相は24日の閣議後の会見で、「年度末までに解消されなければ、弾力的に考えていく必要がある」と述べ、延長や要件緩和を検討する考えを示した。(後略)』
結局、日本人にはストックはそれなりにあるのですが、「何となく」消費に使うことを躊躇い、フローが加速しなかったわけです(この点が、現在、バブルが絶賛崩壊中の他国とは違います。)。今回のエコカー減税やエコポイントは、その「何となく躊躇い」というボトルネックを外すことに成功し、効果を高かめたわけですね。
しかもエコカー減税(やエコポイント)は、所得移転とは言っても、国民が「消費」をしないことには適用されません。すなわち、政府の支出=消費の拡大(=フローの拡大)になるわけです。その点においても、定額給付金や減税よりも効果が直接的だったと思います。
さて、この種の政策が成功すると、鬱陶しい「日本破綻原理主義者」たちが、
「今年は一時的に良くなるかもしれないが、リバウンドがある。来年はどうせ元に戻るさ。所詮は需要の先取りに過ぎない」
などと言い出すわけです。この種のアホに対する反論は、意外なことに大前研一がVoiceで提言しています。
『先進国にとって重要なのは、最悪期を脱することなのだ。そのうえで、翌年には以下の政策を打てばよい。「築三十年以上の住宅を建て替える場合、200万円を給付する。先着50万人」。そうすれば皆、一斉に家を建て替えるだろう。
家の立て替えには、通常1000万円程度の費用が掛かる。このうち本人負担を800万円、残りの200万円を政府負担にする。すでに立て替えてしまった人が損だというなら、昨年11月(?原文ママ)のリーマンショック以降に立て替えた人すべてを対象にすればいい。築三十年以上の住宅は日本中にいくらでもある。来年のみならず、今後20年ぐらいは毎年1兆円の刺激策で、その経済効果が持続することになる。(Voice7月号 P47)』
別に住宅立て替えのみならず、とにかく需要がある市場に対し、政府が所得移転をすることで、フローを活性化すればいいわけです。エコカーやエコ家電が終われば、住宅。住宅が終われば、教育。教育が終われば、医療・介護。日本にはまだまだ、未成熟、不充分な需要はあります。
そんなもの、ない!という方には、
「へ~え。あなたはそんなに日本の現状に満足しているんだ。すごぶる幸せな人ですね」
との言葉を差し上げることに致します。
それにしても、大前研一。お前、つい昨年までは、
「日本政府は財政破綻! 日本政府は財政破綻!」
とか言っていたくせに、いつの間に政府支出拡大路線に宗旨替えしたんだ? と、思ってしまったのは内緒です。
大前研一の宗旨替えに驚いた方、及び「やっぱりね・・・」と思った方は、
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