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Yahoo!版 http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/29927042.html
Ameba版 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10304146482.html
昨日のエントリーで、
「バブル崩壊後の日本は、民間負債(日本の場合は主に企業)が減っていく中、政府の負債が増えました」
と書き、ビル・エモット氏の「民間負債は公的負債に置き換えられている」とうい言葉もご紹介しました。
少なくとも、日本のように国内に金融資産が潤沢で、資金「供給」を国内で賄える国は、
■好景気⇒民間の負債が増え、政府の負債が減る
■不景気⇒民間の負債が減り、政府の負債が増える
このように、国内で負債のバランスを取っているわけです。何でバランスを取るか(取らなければならないか)と言えば、基本的に国家経済のフロー(GDP)は誰かが借金をしないことには、回らないからです。
最も理想的な経済の形は、民間、特に一般企業が負債を増やし、投資を拡大することです。企業の投資拡大により業績がアップし、家計が潤えば、フローのGDPへと景気が波及していくことになります。
あるいは、国民が住宅をローンで購入すると、フローの住宅投資が増えますが、これもやはり「借金」でフローを拡大しているわけですね。
ところが不景気になると、民間(家計や企業)が借金を躊躇することになります。これを放っておくと、フローが激減、すなわちGDPが激減してしまいますので、政府が借金し(国債発行し)、フローを下支えする必要が生じるわけですね。
ところが現実世界の多くの国々は、国内のストック(金融資産)が不充分で、フロー崩壊の危機において海外から政府が資金を調達しなければならなくなるのです。すなわち、外貨建ての対外公的債務(海外からの政府の借金)です。
政府が外貨建てで海外からお金を借りると、為替レート次第で1998年のロシアや2001年のアルゼンチンのような運命を迎えることになります。そういう意味で、現在の中東欧バルト諸国の一部の状況は非常にデンジャラスだと思います。(特に、独自通貨の国々)
国内金融資産と対外負債のバランスで言えば、少なくとも「対外純資産国」は、国内の金融資産が潤沢と言っても構わないと考えていました。ところが、現実には対外純資産国であるはずのドイツや中国までもが、国債の札割れを起こしてしまっています。
う~む・・・・という感じです。
さて、バランスといえば、この話。
実は、ヤバ韓を書いた頃からこの話を書きたいと思っていたのですが、その内に忘れてしまい、結局、廣宮さんに先を越されてしまいました。
中国外貨準備2兆ドル【1】 http://blogs.yahoo.co.jp/eishintradejp/20195939.html
中国外貨準備2兆ドル【2】 http://blogs.yahoo.co.jp/eishintradejp/20196676.html
上記エントリーの最後の煽りのところに、
「なあんだ、外貨準備って、『対外資産のうちの政府保有分』てだけのことじゃん」
とありますが、実際その通りなのです。
【日中 対外資産・負債・純資産・外貨準備比較(09年3月末/08年末)】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_20.html#Taigaishisan
リンク先にも書いておきましたが、本来は外貨準備は対外資産の中に含まれます。今回のグラフでは、分かりやすくするために外貨準備を横に出しました。
■日本
☆対外資産:549.8兆円
★↑内、外貨準備は96.8兆円
■中国
☆対外資産:277.4兆円
★↑内、外貨準備184.9兆円
日本の外貨準備が対外資産に占める割合、17.6%。中国の外貨準備が対外資産に占める割合、66.7%。
すなわち、日本の対外資産に政府が占める割合が17.6%で、中国が66.7%というわけです。これの意味、お分かりですよね。中国は、日本と比べて経済に政府が関与する割合が圧倒的に大きいわけです。何しろ、国家の対外資産のうち、六割以上を政府が保有しているのです。
それは別に構わないのですが、日本と比べて圧倒的に「政府の持分」が大きい中国の「外貨準備=対外資産の内、政府が保有する分」のみに注目し、こんな記事↓を書くのが日本のマスメディアのスタンダードなわけですね。
『中国の外貨準備、初の2兆ドル突破 金融市場への影響力一段と
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/asia/20090715D2M1500Z15.html
中国人民銀行(中央銀行)は15日、6月末の外貨準備高が前年比17.8%増の2兆1316億ドル(約198兆円)になり、四半期末のベースで初めて2兆ドルを突破したと発表した。人民元相場を低めに抑えるため、人民元売り・ドル買いの市場介入を続けた結果、ドルが積み上がった。日本の2倍超の外貨準備を抱える中国が、20カ国・地域(G20)首脳会合などの国際協議の場や国際金融市場で一段と存在感を高めそうだ。(後略) 』
例えば、ある二つの家計があったとします。
一軒目の家計は、純資産(※資産-負債)の金額が世界一大きいが、資産に占めるお父さんの持分は二割以下しかありません。
二軒目の家計は、純資産額や資産額は小さいものの、資産に占めるお父さんの持分割合「だけ」が極端に大きく、絶対額でも一軒目(純資産世界一の家計)の「お父さん」の資産の二倍に達しています。
この状況において、お父さんの資産が大きい方の家計が、「一段と存在感を高め」云々という話になるというわけですね。日経新聞的には。
日本の外貨準備高を増やしたいならば、政府が民間の対外資産を円で買い取ってしまえばいいわけです。(すなわち、円高防止の為替介入と全く同じオペレーションです。) そうすれば、日本国家の対外資産のうち、政府保有分が増え、外貨準備が増加します。
日本の対外資産に占める政府保有分の割合は17.6%。中国の対外資産に占める政府保有分の割合は66.7%。
果たして、どちらの「バランス」の方が、適切なのでしょうか。
・・・外貨準備高など、所詮はこの程度の話でしかないのです。
中国って、結局は社会主義国家なんだなあ・・・という感想を抱いた人は
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