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 ある方が最近、
「経済学者は現状分析をしない」
 と仰って、なるほどと思いました。
 そもそもケインズ学派にしてもフリードマン学派(新自由主義)にしても、「学派」と言っている時点で、違和感を覚えざるを得ないのです。なぜならば、各国家の内部環境、外部環境は瞬間ごとに異なるため、そこに一つのコンセプトに基づくソリューション(解決策)が適応可能とは、どう考えても思えないからです。
 例えば、企業診断を行い、ソリューションを提案する際に、異なる企業に同じ提案をすることは絶対にないわけです。同時に、昨年は有効だったソリューションが、今年も通用するとは限りません。と言うか、ほとんどのケースで通用しないのです。
 一応、わたしは経済学部出身で、診断士として経済学も学んで(課目の一つにあるのです)いるわけですが、いわゆる経済学者の本などはほとんど読みません。特に、日本の経済学者の本は、一切読みません。どうせ間違っているからです。
 彼らが間違っていないのであれば、今のように「円高で日本は破綻する」だの「日本政府は財政破綻する」などのヘンテコ論が、日本で蔓延しているはずがありません。

 経済学者の本はほとんど読まないわたくしですが、ビル・エモット氏の著作は読みます。
 エモット氏は別に経済学者というわけではなく、「ジャーナリスト」だと思っていますが、経済学者ではない故に、必ず「現状分析」を行っているところに同意できる箇所が多いのです。
 これに対し、経済学者は「何々論によると」だとか「何々モデルによると」から始めるので、現実との乖離が大きくなってしまうような気がします。
 ちなみに、わたしがビル・エモット氏に最初に感銘を受けたのは、氏が何かの著作で、
「日本政府が財政破綻するなど、金融関係者は誰一人として考えてねえよw 財政破綻する政府の国債金利が2%を切っているなんて、どんなブラック・ジョークだよ、m9(^Д^)プギャー www」(注:実際のエモット氏の文章は、こんな下品な口調だったわけではありません。)
 といった感じの文章を書いており、目を開かされたからです。
 あ、そりゃそうだな、という感じでした。
 それ以降、「なぜ日本の国債金利は低いのか」「なぜ日本政府の負債は増えたのか」などについて分析を始め、リチャード・クー氏の「バランスシート不況論」及び廣宮孝信氏の「国債を刷れ!」などにめぐり合い、最終的に全てのパーツがピタリと合いまいた。

①バブル崩壊により、企業の活動が激変した。具体的には、
 ①-1 バブルで膨らんだ負債返済に専念⇒ストック(バランスシート)上で、企業の負債が(2008年末までに)300兆円も減った
 ①-2 投資活動が激減した⇒フロー(GDP)上で、民間企業設備投資は毎年平均16兆円も(対91年比で)減り続けた
②企業の投資活動が激減した結果、
 ②-1 中央銀行が政策金利をゼロに引き下げても、誰も金を借りないという状況に至った
 ②-2 【国内に金融資産が充分な日本】は、銀行などが手元の金の運用先に困る状況に陥った
③政府が国債を発行する(企業の代わりに借金をする)ことで、機関投資家のマネーを引き受け、同時に景気対策を行った
 ③-1 日本政府は恐ろしいほどの低金利で資金調達が可能になった
 ③-2 日本政府の支出拡大により、GDP崩壊は免れた
 ③-3 日本政府の負債残高が積み上がった
④1996年頃、財務省(当時は大蔵省)が唐突に「財政問題」を騒ぎ始め、1997年以降、緊縮財政が始まった。結果、
 ④-1 1997年に一時的にデフレを脱却したにも関わらず、再度デフレに叩き落された
 ④-2 政府支出(特に公共投資)が押さえつけられた結果、名目GDPが成長しなくなった
 ④-3 名目GDPが成長しなくなった結果、政府負債残高の名目GDP比が上昇し、「いわゆる財政問題」の見た目が悪化した
⑤ 2002年頃、日本の供給過剰はピークに達したが、
 ⑤-1 史上最大の外需拡大局面(と言うか、アメリカ国民の借金拡大)により、過剰供給能力を輸出に振り向けることができた
 ⑤-2 プライマリーバランス論の登場により、政府支出がさらに押さえつけられ、公的債務(政府負債残高)対GDP比率が悪化した
⑥ サブプライム危機により、外需拡大局面が終了し、現在に至る
 ⑥-1 不況不況といいながら、なぜか日本国家の全体のバランスシート(政府じゃないです)は、バブル崩壊時よりも「良好」になっている。
■1990年3月 日本国家のバランスシート
 ★資産:4329兆円
 ★負債:4294兆円
 ★純資産:35兆円 <<<<<注目
■2008年12月 日本国家のバランスシート
 ★資産:5463兆円
 ★負債:5254兆円
 ★純資産:209兆円 <<<<<注目
 バランスシート(ストック面)が美しくなっているのは、その分だけ日本の家計や企業が消費や投資をしなかった事実を意味しているので、GDP(フロー面)が低成長だったことを裏付けている。とは言え、普通の国は不況下においてはストック面とフロー面が共に悪化していくので、日本はやはり変な国である。
⑥-2 現状は「バランスシートのお掃除が完了した」2002年のような状況にあるが、もはや供給過剰は国内で引き受けるしかないのが現状

 というのが、バブル崩壊以降の日本経済の「大まかな」流れなわけです。
 「なぜ日本の国債金利は低いのか」「なぜ日本政府の負債は増えたのか」の二つが、論理的に説明されていると思います。
 きちんと「現状」を流れで見ると、日本の何が問題なのか、何が強みなのか、そして何が解決策なのかが、ボンヤリとではありますが、皆さんにも見えてくるのではないでしょうか。
 ちなみに、上記の②-2に【国内に金融資産が充分な日本】と書きましたが、バブル崩壊時に日本の金融資産が不充分だった場合、同じ流れにはなりませんでした。

「バブル崩壊」
   ↓
「企業投資激減」 

 ここまでの流れは同じだとしても、政府が財政支出を拡大する際に、国内金融資産が不充分な場合は、「海外から外貨建てで資金を調達」しなければならないわけです。こうなると、国のリスクやら為替相場やら、あるいは世界的なマネーの供給環境により、国債金利は激しく上下する(かなりの高確率で上昇する)ことになったでしょう。

 現在、世界の多くの国々が1990年前後の日本と同じようなバブル崩壊局面を迎えています。
 そもそも日本のバブルは国内の金余りが原因だったのですが、2001年以降のバブル諸国の多くは、マネーについて海外依存でした(日本も金主の一国でした。)海外マネー(要は対外債務)によりバブル化した国々は、バブル崩壊の後始末(政府支出拡大)についても、海外依存にならざるを得ません。
 すなわち、上記で説明した日本と同じ流れになる国は、まず存在しないわけです。
 GDPの崩壊を、海外向け外貨建て国債による、政府の資金調達で下支えしなければならない多くの国々は、ほぼ確実に長期金利が上昇していくでしょう。最終的に政府のデフォルト(債務不履行)に至る国も出てくるかも知れません。
 とは言え、それをもって「日本も財政破綻!」などと騒ぐのは、どう考えても「バカ」としか言いようがないわけです。他国と内部環境が全く異なる日本が、同じ道を歩む可能性はありません
 
 この話、明後日に続きます。(明日は衆院解散に合わせ、集合知プロジェクトVol.4です。)


バブル崩壊後の日本国家のバランスシートが「良好」になっている事実に驚いた方は、↓このリンクをクリックを。

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