新世紀のビッグブラザーへ blog
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 ああ、何か久しぶりに経済物書こうと思うのですが、全く感触がつかめない!
 ここ数日、ブログは政治物が続き、現在、執筆しているのは主に「インターネット・メディア」の追加分。さらには読んでいる本が、1Q84(今頃!)なもんですから、経済に関する脳の部位が休憩してしまっていても、仕方がないと思われませんか?
 関係ないですが、村上さんの1Q84の章タイトルに、
もうビッグ・ブラザーの出てくる幕はない
 というものがあり、
「ああ・・・、1984年の頃には、確かにもはや日本にはビッグ・ブラザーは出てくる幕がないと思っていました」
 などと感慨にふけってしまいました。まさか新世紀に入り、新たなビッグ・ブラザーの影に怯える羽目になるとは。

 中国がここ二週間で三度目となる国債札割れを起こしてしまいました。(記事翻訳 cer**jo696*様)
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601087&sid=abvOxEK1tv8w
 中国政府は、ここ2週間で3回、国債を販売予定額売り切ることに失敗した。中央銀行が、株や不動産価格バブルを防ぐために市場金利を上げるだろうという投機的観察意見があるからだ。
 中国政府財政部は、予定していた200億元ではなく18.51人民元分の6ヶ月物国債を売却したとChinabondのサイトで発表された。入札利回りは1.6011%であり、これは6月19日の182日物の利回り0.85%より高くなった。
 同様の満期の中国国債利回りは今月に入り45bp上昇している。中国の4兆元の財政刺激策がインフレを引き起こすことが憂慮されているからだ。貸出額は6月において前年比で5倍近く伸びた。中国政府は昨日、2Qの経済成長が7.9%にまで上昇を加速したと報告している。
 中国政府は7月15日においても3年物国債入札において280億元の入札額をかろうじて達成した。応札比率は1.16倍だった。その前の週では2回、札割れをおこしている。今日の入札の応札倍率は0.925倍で、これまでの国債入札での約1.5倍から落ちた。
Last Updated: July 17, 2009 01:10 EDT 』

 日本語版ブルームバーグの記事も来ました。(情報提供 ひろぽん様)

中国の国債入札:2週間で3度目の札割れ-資金は株式・不動産へ
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003011&sid=a.BIjDGWALsc&refer=jp_asia

 ちょうど先週末から月曜日にかけて書いたVoice+の連載の方がアップされたところですが(ちなみに、図3-1と3-2が逆になってしまっているので、直してもらっています)、タイトルは「第3回 中国共産党政府の誤算」となっており、まさに上記の背景を説明するものになっています。
http://voiceplus-php.jp/web_serialization/china_economy/003/index.html

 中国では、政府の「融資命令」を受けた銀行の融資拡大が続いており、何と今年の5月までで、早くも昨年(08年)の融資実績を上回ってしまったのです。これが資金繰りに苦しむ中小企業に向かえばいいのですが、ブルームバーグ(英日版)の記事にあるように、現実には株式や不動産に流れ込んでいるわけですね。
 すでに昨年以上の融資が銀行から流れ出た上に、何とその内の半分超が株式・不動産に向かっちゃったので、半端ではありません。さすがにビビッった中国政府は、銀行に「融資基準を厳格にしてね」という指示を送ったのですが、ほとんど守られていないようです。
 これ以上のバブル化を食い止めるには、中国人民銀行が利上げと総量規制(各銀行、幾らまでしか融資してはダメよ、という命令)をするしかないという「思惑」が市場に蔓延しており、国債に資金が向かいにくい環境になりつつあるようです。しかし国債で資金調達できないと、現在の中国における唯一の成長要素である政府支出拡大に齟齬が生じてしまいます。

 日米を見るまでもなく、政府の資金調達が容易な環境とは、民間の資金需要が少ない場合です。民間企業(や家計)が金を借りてくれないため、銀行などがこぞって国債購入に走り、政府は支出拡大が容易になるわけです。
 政府支出により景気が拡大すれば、民間の投資意欲が復活し、金利は上がっていくでしょう。しかし、民間の投資意欲が活発化するということは、これすなわち「好景気の到来」なので、政府は支出拡大が不要になり、国債発行額も減っていきます。
 このように、「景気」「民間の資金需要」「政府の資金需要」はバランスを取っているわけです。
 好景気が行き着くところまで行き着くと、税収が増え、政府支出が不要になった結果、プライマリーバランスが黒字化するというのは、これまでも何でも解説した通りです。

 ところが中国は、実体経済が悪化している中、政府支出の拡大と、銀行の融資拡大を両立しようとした結果、ワケワカメな状態に陥っているようですね。
 そもそも民間の資金需要がない中、銀行融資を強引に拡大しても、設備投資には向かいません。需要が拡大する見込みがない中、設備投資を増やすアホな企業はありませんので。
 中国の銀行が目標達成(実際に中国人民銀行に「融資目標」を押し付けられています)のために融資を拡大しても、その多くが不動産や株式などのバブルに向かうのは、自明の理なわけですね。
 中国政府が国債で資金調達し、公共投資などを拡大しているのは、これは別にいいのです。日本やアメリカも同じ事をしています。
 ところが、同時に「銀行融資拡大」で民間に金を流し込み、景気を強引に活性化させようとした結果、株式・不動産バブルが再燃し、挙句の果てに肝心の国債にマネーが回ってこなくなったというわけです。
 何をやっているんだ、という感じですが、中国共産党としては、日米方式の政府支出拡大のみによる「堅実な成長路線への回帰」など、選べる状況ではないのでしょう。何しろ世界最大の人口大国で、失業率が二桁前後です。

 中国共産党方式の「断固、景気回復!」路線は、市場に歪みを生じさせているだけのように見えます。結局のところ、中国がまともに経済成長を達成するには、外需の復活を待たねばならないのです。
 中国共産党政府とは言え、「市場」という化け物には太刀打ちができないわけですね。
 明日こそドイツです!

中国共産党って意外にバカ?と思った方は
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