新世紀のビッグブラザーへ blog-日本の田植え祭

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「新世紀のビッグブラザーへ」をお買い上げ頂いた皆様へのお願い
 「新世紀のビッグブラザーへ」は、内容に政治色が極めて強いため、これまで以上にアンチな方々が沸いてくることが予想されます。
 つきましては、今回はあえて掲示板を設けず、感想は以下のamazonのカスタマーレビューにお書き頂きたくお願い申し上げます。
http://www.amazon.co.jp/dp/4569771416/  
 ご協力のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。(三橋)


 現在、執筆活動はラストスパート中ですが、多少、余裕が出てきましたので、ブログは通常更新に戻ります。とは言え、投稿の方はいつでも募集しておりますので、よろしくお願いいたします。
 ちょっと古いニュースですが、

家計の金融資産3・7%減 株安で5年ぶり低水準
http://news.goo.ne.jp/article/kyodo/business/finance/CO2009061701000186.html
 日銀が17日発表した09年1~3月期の資金循環統計によると、08年度末(09年3月末)時点での家計部門の金融資産は1年前に比べ3・7%減の1410兆4430億円となり、03年度末以来、5年ぶりの低水準となった。金融危機を受けた株価下落が主因で、景気悪化の影響が家計に及んだことを裏付けた。家計の金融資産が前年同期比で減少するのは、6四半期連続。年度末では2年連続の減少。』

 日本のマスメディアは相変わらず「他国との比較」というのを一切やらず、ネガティブな記事に仕立て上げることしかしていませんので、わたしの方で日米比較をグラフ化しました。

日米家計の金融資産 比較 2008年12月末及び09年3月末
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_20.html#Kakei

 折角なので、2008年12月末時点と09年3月末の二つの時期で、両国を比較してみました。1ドル95円換算です。

■総額:日本⇒1434-1410=24兆円減 / アメリカ⇒3876-3829=47兆円減
■現預金:日本⇒792-787=5兆円減 / アメリカ⇒-581+601=20兆円増
■株式:日本⇒87-79=8兆円減 / アメリカ⇒1236-1172=64兆円減

 比較してみると、日本よりもむしろアメリカの現預金額の変動に目がいきます。何と、アメリカの家計は金融資産の総額が50兆円近く減少する中、現預金は20兆円増やしているのです。

米貯蓄率、15年ぶりの高水準 消費になお慎重
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090705AT2M0303504072009.html
 景気底入れの兆しが出始めたにもかかわらず、米家計は消費になお慎重姿勢を続けている。雇用情勢が悪化しているうえ、住宅バブル期に膨らんだ借金が重しになっているためだ。5月の貯蓄率は6.9%と約15年ぶりの水準に上昇。景気対策の柱である所得税減税が消費を押し上げるまでには至っていない。
 貯蓄率は個人が可処分所得のうちどれだけを貯蓄に回したかを示す。ブッシュ前政権の所得税還付で手取りが一時的に増えた2008年5月近辺を除くと、05年からおおむねゼロ%台にとどまっていた。』

 5月のアメリカ貯蓄率は7%に迫っていますので、6月末の家計金融資産における現預金の額は、さらに増大している可能性があります。もしかしたら今年の終わりまでに、アメリカの家計の現預金の額は日本を超えるかも知れません。(ちなみに、そもそも人口がアメリカの半分未満である日本の家計現預金の絶対額が、世界最大という方が異常なのです。)

 さて、ここで質問です。
 ストック上で家計の金融資産、特に現預金の額が増大していくことは、その国の経済のフロー(GDP)にとって良いことでしょうか? それとも悪いことでしょうか?
 現預金の場合は、株式などと異なり「時価が上がっていく」ことで増えていくことはありません。逆に、時価下落で総額が落ちていくこともありません。現預金の額は「真水」なのです。
 アメリカ人は現在、株価の時価総額が下落していく中、真水たる現預金をせっせ、せっせと貯め込んでいるわけです。貯蓄率の上昇が、それを証明しています。
 すなわち、アメリカ人の貯蓄が増加する分だけ、世界経済から「消費」が失われているということになります。消費とはGDP(フロー)の「民間最終消費支出」項目ですから、アメリカの家計が貯蓄を増やせば、その分だけGDPは「成長しない」というわけです。

 国家経済全体で見ると、ストック、特に資産の増加(例:アメリカの家計の現預金の増加)は、フロー(GDP)の成長にとってはボトルネックでしかないのです。
 バブルが大々的に崩壊した以上、今後、アメリカの家計が貯蓄を増やしていくのは、これは各家計、すなわちミクロにとっては合理的な行動です。しかし、国家経済というマクロ面で見ると、アメリカの貯蓄増加は、単に「フローの成長が妨げられる」要因に過ぎないのです。まさに合成の誤謬ですね。

 日本の経済評論家は、貯蓄率の減少などについて、まるで「家計の貯金」と同じ感覚で語ります。しかし、国家経済(のフロー)にとってみれば、日本の家計の貯蓄率増加は、裏側では個人消費の停滞を意味しているわけです。
 何度も書きましたが、今、日本で問題になっているのはフロー(GDP)であり、ストックではありません。ストック上で、家計の現預金総額が世界最大になっているというのは、日本人にしてみれば嬉しいかもしれませんが、これは裏側に「フローの停滞」という事象が存在しているわけです。

 今後も様々な経済指標が出てくることになるでしょうが、それぞれの要因について「フロー(GDP)」にとってどういう意味があるのか「ストック(国家のバランスシート)」にとってどういう意味があるのかについて、考えると面白いかもしれません。
 と言うか、↑こういう話は本来、各国の「自称」知識人やら「自称」経済評論家が、テレビや新聞で語るべきなのですが、これまでに一度も見たことがありません。
 これは日本にとっての不幸ではありますが、同時に「機会」でもあると考えています。誰にとっての機会かと言えば、もちろん、皆さんです。

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