新世紀のビッグブラザーへ blog-日本の田植え祭

http://www25.atwiki.jp/tauesai/pages/1.html

三橋貴明診断士事務所  を開設しました。お仕事のご依頼はこちらから 
Klugにて「三橋貴明の『経済記事にはもうだまされない』」連載中

Voice+で中国経済に関して連載中
共同キャンペーン 日本の田植え祭  
共同提案者 渡邉哲也氏ブログ
放送倫理・番組向上機構に意見を送るス

「NHK集団訴訟祭」開催中!
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10277069511.html

 G8財務相会合が終了しました。共同声明を超簡略化して書くと、
「現在の世界経済は、株式市場の回復など安定化を示す兆候がある。しかし、一方で失業者の増加など大きなリスクが引き続き存在する。システム上重要な金融機関の健全性を確保するために、必要となるあらゆる行動を取る。出口戦略はまだ描ける状況ではない
 こんなところでしょうか。
 中でも重要に思っているのは、「金融機関の健全性を確保」という部分で、要するに欧州の銀行問題なわけです。
 折角なので、ここでかつての日本や現在の欧米金融機関で問題になっている「不良債権」の処理について説明しておきましょう。企業会計を理解している人であれば、何を今更、という感じだと思いますが、理解していない方が恐らく過半数だと思います。

 ここからは添付の図を見ながらお読み下さい。



新世紀のビッグブラザーへ blog


①自己資本100の銀行があったとします。当初のバランスシートは、借方に100(現預金)、貸方も100(自己資本)になり、左右がバランスしています。(バランスシートは必ず左右がバランスします。
②この銀行が預金などで現金200を集め、それをそのまま即座に企業に貸し出すと、貸方に200(負債=預金)、借方にも200(資産=貸付金)が計上され、資産合計は300で左右が一致します。
③ところが、この企業への貸出200が不良債権化し、半分は事実上回収不可能ということが確定いたしました。(別に企業への貸出でなく、証券化商品に投資し、商品価格が暴落したときも同様です)
④この銀行は回収不可能となった100について「貸倒引当金」として、損失処理を行います。(評価損、と呼ばれているのも同じ意味) 損益計算書上で、貸倒引当金▲100が計上されます。この銀行は他の損益が±0(と仮定)なので、貸倒引当金分の▲100が、丸ごと純利益▲100(=純損失100)となってしまいます。
損益計算書の最終利益は、バランスシートの貸方(純資産の部)に組み入れられます。今回は▲100なので、自己資本が丸ごと消滅してしまうわけですね。
⑥結果、資産及び純資産から100ずつ差っ引かれ、総資産の合計が200となり、左右が一致しました。

 めでたし、めでたし、とはなりません。
 この銀行は企業融資の半分(100)を損失処理し、資産残高を圧縮したわけですが、別に資産が減ったからといって負債まで減るわけではありませんので。企業融資という資産が半減しても、負債の200はそのまま残るのです。(=返済しなければならないのです)
 今回の欧州金融機関で問題になっているのは、多くの金融機関がアメリカ製の証券化商品に投資をしていた(=バランスシートの借方に資産計上されていた)状況で、サブプライム危機で証券化商品の「価値」が大暴落しているはずなのですが、それが表に出てこないことです。もしも表に出すと、上記のプロセス通り損益計算書上での「損失処理」が求められる可能性があります。そうなると、欧州の金融機関は自己資本の額と評価損の額を勝負させなければならなくなるわけです。
 勝負をさせて、万が一「評価損>自己資本」になってしまった場合、その瞬間、その金融機関は債務超過確定で、あぼ~んです。

(※説明を簡略化させるため、レベル3資産とかBIS規制とか、銀行の自己資本の詳細等には踏み込みませんので、突っ込まないでね♪♪)

 一応、アメリカの金融機関は、ストレステスト(健全性審査)をして、資産サイドの中身の調査結果を明らかにしています。微妙に突っ込みたいところが多々あるものの、とりあえずデンジャラスな銀行などには、アメリカ政府が増資(貸方の自己資本のところを増やせと)を命じていますので、曲がりなりにも「対応」はしているわけです。
 ところが、欧州諸国がこれを拒否し続けているので、非常に困ったことになっているのです。
 今回のG8財務相会合では、さすがに欧州諸国の中からも、
ストレステスト、やった方がいいんでね?
 という声が上がってきたようですね。(先日は、フィンランドのカタイネンさんの発言をご紹介しましたが)

伊財務相:欧州はストレステストで議論開始すべきだ
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=axWHhb5e.JVM
 イタリアのトレモンティ経済・財務相は13日、主要8カ国(G8)財務相会合閉幕後の記者会見で、欧州各国の当局者が銀行のストレステスト(健全性審査)に関して議論を開始すべきだと語った。同相は「ストレステストの議論を開始する必要があるのなら、欧州レベルで開始すべきだと思う。これまでわれわれはこの問題で深い議論を開始していない」と述べた。 』

 議論も開始していないんかい! と突っ込みたくなったのは、別にわたしだけではないと思いますが、まあ、とにもかくにもこういう声が出始めたことは、評価すべきかなあと思います。個人的には、ストレステストの結果が分かるまでは、欧州経済はどう転ぶか全く予想がつかない状況だと思いますけどね。

おまけ:中国の個人消費関連で面白いデータを(NO様から)貰いましたもので。

「消費より貯蓄重視」中国、人民銀調査で47%」 2009年6月13日 読売新聞夕刊
 中国人民銀行(中央銀行)が12日発表した四半期に1度の消費者意識調査によると、お金の使い道について「より多く貯蓄に回す」と答えた人の割合は47.0%に達した。将来への不安が根強いことを示しており、個人消費になかなか火が付かない情勢だ。
 調査は5月に全国50都市で実施。収入を「より多く消費に回す」と答えた人の割合は15.1%。前回調査より14.6ポイントの大幅な低下となった。
 人民銀は「都市住民の消費はより慎重になっている」と分析した。』

 実際問題として、中国の家計の貯蓄率はジリ上がりに上げて来ていますので、予想通りといえば予想通りです。
 中国の家計の貯蓄率は、実は通年で見ると2008年が最高で、今年の第1四半期はさらにそれを上回っています。(この辺、Voice+のWeb連載の第三回のメインテーマです。)
 政府支出を拡大し、GDPを下支えしようと中国政府は頑張っているものの、肝心要の個人消費には届いていないようですね。企業側に回ったお金がどうなったかについては、Voice+第二回で細かく書きましたので、そちらをご覧下さい。(本日掲載されるはずです。)
http://voiceplus-php.jp/web_serialization/china_economy/index.html

 少し古いですが、日本の定額給付金関連の記事。

定額給付金「消費に回す」が58% 日経新聞社調べ
http://www.j-cast.com/2009/01/29034453.html
日経新聞社は2009年1月29日、消費者に定額給付金の使い道について聞いたインターネット調査で、「消費に回す」と回答した人が58%にのぼったことを明らかにした。具体的な使い道は「食費」が20%と一番多く、「旅行・レジャー」(11%)、「家電製品」(7%)と続いた。給付金の支給は銀行振り込みで行われるにも関わらず、「貯蓄・ローン返済など」に回すという回答は約30%だった。(後略)』

 中国で定額給付金を実施した場合、「消費に回す」の比率はどの程度になるんですかねえ。

欧州諸国、ストレス・テストの議論もしていないのかい!と呆れ返った人は、

↓このリンクをクリックを。

新世紀のビッグブラザーへ blog

人気ブログランキングへ


 新世紀のビッグブラザーへ ホームページ はこちらです。
 
新世紀のビッグブラザーへ blog一覧 はこちらです。
 
関連blogへのリンク一覧 はこちらです。

 兄弟ブログYahoo!版へ