新世紀のビッグブラザーへ blog-日本の田植え祭

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 お知らせ。4月に書いていた本が、三橋貴明初のハードカバーで出版されることが決定致しました。この本は、扶桑社「崩壊する世界 繁栄する日本」、幻冬舎「本当はヤバくない、日本経済」に続く、『日本経済』三部作(と三橋が勝手に定義している)の最終巻に当たるものです。ハードカバーなので、ビル・エモット「日はまた沈む」並の、格好いい表紙にしたいとのことでございます。はてさて、どうなりますことやら。
 出版時期は6月末から7月初旬を予定しておりますので、ご期待下さい。(その前に、「新世紀のビッグブラザーへ」が出版になりますが。)

 さて、今回の世界的な危機の大元は何かと辿っていけば、結局はアメリカの不動産バブルに行き着きます。
 2001年に始まったFRBの政策金利引下げ(6.5%⇒1%)により、アメリカで史上空前の不動産バブルが発生し、それが世界に波及しました。(日本も少し影響を受けました。)さらに、アメリカ国民が値上がりした不動産価格分を新たに借り入れ(ホーム・エクイティ・ローン)、それを消費に費やすことで、日中などの対米輸出国も大いに潤ったのでした。
 また、アメリカ国民の住宅ローン債権は、様々な過程を経て「証券化商品」として生成され、世界中に売却されていきました。日ス両低金利国などの影響で、マネーこそ豊富に手元にあるものの、運用先に困った世界中の金融機関が、高利回りな割に「投資適格(by ムーディーズ、S&P、フィッチ)」な証券化商品に殺到したのでした。
 特に、欧州金融立国のビジネスモデルは、海外から低利で集めたマネー(=対外負債)を、証券化商品に投資する(=対外資産)ものだったため、今や非常にデンジャラスな状況に陥ってしまっています。何しろ、資産サイドにある証券化商品が暴落しても、対外負債の方まで消えるわけではありませんから。
 
 アメリカの方は、不動産バブル崩壊による家庭の債務過剰、貯蓄率向上(借金返済のため)、消費大収縮という最悪の景気環境の中、金融機関の不良債権問題にも対処しなければなりません。結果、アメリカ政府は海外に米国債を売りまくり、ドル資金をかき集めているのですが、さすがに長期金利がジリジリと上がり始めているため、FRBによる国債買取が始まり、ドルと米国債が共に史上空前のスケールで市場に供給される状況になっています。
 国内の「景気悪化」と「金融機関の不良債権」に同時に対処しなければならないという点では、欧州諸国も同様です。が、今のところ英独以外の状況がはっきりしていないので、不安を感じずにはいられません。会計基準の差異を利用し、このままディスクローズしないで証券化商品の市況回復を待つ気でしょうか。待つ気なんだろうなあ・・・。

 現在、アメリカが抱えているリスクを箇条書きにすると、

(1)長期金利上昇と、米国債の格下げリスク
(2)金融機関の不良債権問題の悪化
(3)雇用不安を中心とした景気悪化

 になりますが、この三つは互いに関連しあっています。
 そもそも金融機関の不良債権が巨額すぎ、バブル崩壊により経済のフローが急激に収縮している、すなわち(2)と(3)が同時に起きている故に、アメリカ政府は資金を必要としているのです。アメリカ政府が資金を得るために米国債を増発すると、長期金利が上昇していきます。長期金利上昇は大元の不動産バブル崩壊をさらに推し進め、(2)と(3)が共に悪化していくわけです。そして(2)と(3)の悪化が進むと、米国政府は益々国債を発行する必要性に迫られ、長期金利が上昇し・・・・、という悪循環に陥ります。
 肝心要の不動産価格ですが、3月までのケースシラー指数(現時点で最新データ)を見る限り、価格の底はまだ見えていない状況です。

【アメリカ不動産価格 ケースシラー指数 2009年3月版 】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_19.html#SP09March

 不動産価格の落ち込みが止まらない中、長期金利が上昇していくわけですから、これはかなり厳しい状態です。雇用不安が続く中、高金利で住宅を購入するもの好きは、さすがのアメリカとは言え少ないでしょう。
 さらに、景気悪化はデフレ化、特に資産価格の下落をもたらします。将来的に住宅価格が下落することが明らかな中で、今の時点で住宅を購入する人は、相当に余裕のある人に限られます。下手をすると一ヶ月購入を控えるだけで、百万円単位で住宅価格が値下がりする可能性さえあるわけです。
 そしてアメリカ国民の不動産買い控えは、銀行の不良債権問題を悪化させ、企業への貸し渋り、貸し剥しの多発により、雇用不安を加速させ、同時にアメリカ政府に更なる大量の国債発行を迫るわけです。

『PIMCOのグロス氏:米10年債利回りは差し当たり4%目指す
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=aKQ.LS_tfLhQ
 債券ファンド大手、米パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の共同投資責任者ビル・グロス氏は5日、10年物米国債の利回りは差し当たり4%を目指すだろうとの見方を示した。 (中略)
 さらに、「米国政府は少なくとも数年にわたり年1兆ドル(約96 兆円)の財政赤字を出し続けざるを得ないだろう」と指摘した。 』

『 5月米雇用者35万人減:削減幅8カ月で最小,失業率9.4%に上昇
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=a8nXPK5T7hSM
 米労働省が5日に発表した5月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比34万5000人減少と、マイナス幅が過去8カ月間で最小にとどまった。ブルームバーグ・ニュースがまとめたエコノミスト予想の中央値は52万人の減少だった。4月は50万4000人と速報値の53万9000人から修正された。
家計調査に基づく5月の失業率は9.4%と、前月の8.9%から上昇。1983年以来の高水準に達した。 (後略)』

米住宅ローン金利上昇、30年固定5.29%-昨年12月以来の最高
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=awnJ_LwHsgpw
 米フレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)が4日発表した住宅ローン金利報告によると、30年固定金利は今年最高水準を更新した。ローン金利低下に向けた米連邦準備制度理事会(FRB)の取り組みが効果をあげていない可能性が示唆された。(後略) 』

『フィッチ:米国と英国が適切な行動取ると信頼-AAA格付けの理由
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=arA8HDqhVFQw
 格付け会社のフィッチ・レーティングスのソブリン債格付け責任者のデービッド・ライリー氏は4日、シドニーでの会合で、米国と英国は景気回復のために経済の資源を再配分することが可能だとの認識を示した。同氏は「両国の適切な行動を取る能力とこれまでの実績を信頼して」おり、これが両国の格付けを「AAA」としていると指摘した。 』

 最近のブルームバーグの報道を並べるだけでも、前述の悪循環が刻一刻と進行している様相が見て取れます。
 特に、最後のフィッチの記事、「米国債の格付け」に触れた記事は重要です。何となく、市場が次第にではありますが、米国債の格下げを織り込み始めたのではないかなあ、と感じさせてくれるのです。
 以前、S&Pが言っていましたが、米国債格下げ=米国デフォルト、というわけでは必ずしもないです。とは言え、格付け会社が「米国債の格付け」に言及し始めたのが、アメリカ政府がGMのチャプター11に言及し始めたのと雰囲気がそっくりであるとは感じます。アメリカは報道で少しずつ情報をリークしながら、本来はラディカルな結末にも関わらず、影響を最小限にとどめようとする手法を頻繁に使います。
 しかし、これほど厳しい状況のアメリカでさえ、情報を隠している欧州金融立国諸国に比べると、まだしもマシに思えてしまいます。好む好まないに関わらず、これが現在の世界の現実というわけなのです。


アメリカ経済の状況が、かつての日本とそっくりと思った人は、
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