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最近の日経新聞は、内需喚起と中国重視(と言うか媚中)が交じり合う、微妙な紙面構成になっていることが多いです。以前は、輸出マンセー&中国重視だったので分かりやすかったのですが(笑
 但し、最近の日経は媚中は媚中なのですが(相変わらず)、「中国の需要」を標的市場に定めよ、というレベルの記事に留まっています。以前は、
さあ、日本人の皆さん。偉大なる中国様に投資をしましょう!
 なる無責任な論調が多かったのですが(一体、どれだけの日本人が被害を被ったことやら・・・)、最近は「中国に売り込みましょう」になっているので、まあ以前よりはマシかな、と。
 中国政府がインフラ投資を前倒ししているので、工作機械などの需要が増えているのは、これは当たり前です。需要があるのですから、日本企業はジャンジャか売り込めば良いのです。
 「中国経済がダメになる理由」に書いたように、今回の世界的な金融危機の一因は、中国が「需要」「投資」「技術」全てについて他国頼みの成長路線を爆走していたことにあります。中国が本格的に国内需要を拡大しようとしているならば、それはまことに結構なことです。
 が、公共投資でGDPと雇用を下支えしても、果たしてそれが「真の内需」すなわち民間最終消費支出(個人消費)にまできちんと波及するかどうかは、今のところ不透明です。中国の家計の貯蓄率が20%を切った、なんてニュースがない限り、ミクロ面の「消費勃興」とやらを幾ら報道されても、全く信用できません。
 
 最近、話題(?)の日経新聞のコラム「大機小機」から二連続で。(情報提供&書き起しNO様 多謝!)

「日はまた早く昇る」大機小機 2009年4月23日 日本経済新聞朝刊
 世界的不況の中で国内景気に底入れの兆しが見えてきた。在庫調整の進展による一時的現象か景気回復の始まりか、判断が分かれよう。ここで見落とせないのは「世界不況」が日本経済にプラスに働き始めたことだ。
 特に大きいのは資源価格の下落だ。海外に資源を依存する日本は、資源価格が下がれば最大の受益者となる。円高差益も加わり、交易条件の改善効果は年間15兆円と推計される。通常、交易条件が改善すると半年後に景気に浮揚力が働く。国際商品価格が下落に転じた昨年7月から半年後の今年1月に景気ウォッチャー調査の現状判断DIが好転したことと符号する。原材料費の低下が産業界を潤し始めるはずだ。
 国際金融危機のぼっ発で資金の流れも一変した。我が国の対外投資は急減し、昨年4月以降、引き揚げに転じた。しかし外資の撤退による国内株式や不動産の大量売却によって、ネット(実質)では相変わらず資本流出が続いている。だが外資の売却がそろそろ一巡して資本収支が黒字に転換する可能性も出てきた。
 これまで年間20兆円もの資本が海外に流出したが、国内で活用されることになれば、その分、内需拡大効果が期待できる。交易条件の改善効果と資本収支の赤字解消、さらに昨年来の財政出動の真水の分を合わせると約60兆円だ。国内総生産(GDP)の12%に相当する大きな力が働けば、日本経済はやがて不況から脱出するはずだ。
 金融バブルの崩壊で欧米諸国では巨額の不良債権処理と金融・産業再編の長い苦難の道が始まった。幸い我が国は5年前に「平成バブル」の処理が終了し、影響は相対的に軽い。低炭素社会への転換と世界経済の再生に向けて主導権を握る絶好の機会である。
 約80年前の世界恐慌では米国が4年、独仏は3年、英国は2年の実質マイナス成長に沈んだ。その中で日本はわずか1年で不況から脱出し、一挙に国際舞台に躍り出た。ニューディールに2年先行した高橋是清蔵相の積極財政に加え、資源価格の暴落による交易条件の改善と金輸出再禁止による金地金の大量流出から流入への転換、さらに直前の昭和金融恐慌で銀行再編と産業界の整理が完了していたことも躍進の背景であった。
 今回の不況においても、くしくも我が国は80年前の恐慌時と同様、世界に先駆けて不況からの脱出に成功し、日はまた昇るだろう。』

 おお!円高による交易条件の改善効果を数字で書いてくれるとは。三橋は「本当はヤバくない日本経済」内で、円高による輸入価格減少が国民や企業に与えるベネフィットを16兆円と試算しましたが、ほぼ同金額ですね。
 資本収支の方は、円高により日本企業の海外直接投資が増大すると思える(実際にしてます)ので、黒字(純流入)になることはないと考えていますが、果たしてどうなるでしょうか。
 この大機小機が素晴らしいと思うのは、「世界不況」を破滅をもたらすアンゴルモアの大王としてではなく、単なる「環境変化」として捉えている点です。環境変化である以上、世界不況から派生した様々な要因(円高、資源価格下落、資本収支の黒字化)を「機会」として捉えることができるわけです。
 もちろん、物事には裏面があって、円高は「輸出企業」にとって、資源価格下落は「商社」にとっては脅威でしょう。そして日本の資本収支の黒字化は、英国を初めとするファンドにとっては悪夢以外の何物でもないでしょう。だからこそ、英FT誌とかが死に物狂いで日本経済悲観論を煽り、日本人の金を海外に向けさせようと頑張っているのであると、個人的には確信しています。
 しかし、別に輸出企業や商社ばかりが日本経済のプレーヤーではないし、ましてや英国ファンドの運命など、日本国民にとっては知ったことではないでしょう。「日本国家」の経済を語る以上、マクロ的、あるいは鳥瞰的な視点での捉え方というのが極めて重要だと考えています。
 また、先日、某テレビ局の方から電話インタビューを受けた際にも話したのですが、現在の日米欧は揃ってデフレに突入しているのは間違いないところです。但し、決定的に違うところは、米欧はこれから不良債権処理、及び過剰債務の返済が始まるのに対し、日本はすでに終了しているというところです。この差は、極めて重要だと思っていますので、日経も一面でこういう事を書いて欲しいと思います。



「輸出激減を超えて」大機小機 2009年4月25日 日本経済新聞朝刊
 2008年秋以降、日本の輸出が激減している。輸出から輸入を差し引いた貿易収支も、昨年度の1年間で28年ぶりに赤字に転じた。オバマ米大統領は3月の記者会見で、「借りて使う」時代から「貯蓄して投資する」時代に変わっていく必要性を述べていた。米国向けを中心に日本の輸出の本格的な回復はどうやら期待できないようにもみえる。輸出頼みの日本経済にとって大変なことであると懸念されている。
 最大の問題は、輸出が激減すると、雇用が打ち切られてしまうことだ。もちろん政府は生活を維持するために財政支出を惜しまず、雇用機会を増やし、失業者への手当てに全力を挙げている、
 雇用問題が一時的に解決したうえで、政府が国内の経済活動を走らせる誘い水が不可欠だ。エコ住宅や自動車、介護、医療サービス、最先端の研究開発などを応援し、雇用の増加を財政支出によって誘導する。そうすれば国内市場の拡大が期待できるだろう。楽観的な見方と言われそうだが、理由はある。輸出は国内経済活動と切り離されている側面があるからだ。
 国内の消費者が日本製品を購入して日本で使えば、国内市場の拡大に寄与する。例えば、日本製の自動車を日本で乗り回したら、ガソリンや補修部品などの売り上げの増加を含め、経済活動が活発化する。しかし自動車が海の向こうに輸出されたら、国内市場の拡大はない。
 そのうえ、日本では貿易収支の黒字が累積している。これは結局のところ、輸出代金を円に換えて国内で回収せず、ドルのまま海外に還流していることを意味する。ドル売り・円買いによって、円高が進むことを恐れているからであり、国内の経済活動に寄与していない。
 したがって、この二つの側面に限ると、もともと輸出は国内の経済活動に結びついておらず、激減しても影響はないと言えるのだ。
 このことは、以前から指摘されていた。池田勇人内閣の経済ブレーンとして知られている下村治氏の著書が最近復刊された。そのなかに、1980年代半ばにかけての日本経済について、「これほど輸出が激増し、それにつれて設備投資も増えたのに、国内需要がどんどん増えるという動きは一つもないのである。国内市場はただただ落ち着いているだけだ」という記述がある。』

 面白い視点ですね。輸出は国内経済活動と切り離されている、と。07年まで続いた「実感なき好景気」を思い出すと、非常に説得力があると思います。
 08年第4四半期の日本のGDP成長率は対前期比でマイナス3.2%になりましたが、このうち、何と3.1%が外需(輸出減少の寄与度が▲2.7%、輸入増加の寄与度が▲0.4%)減少によるもので、逆に内需分はわずかに▲0.1%だったことの説明になると思います。
 最近、下村氏を見直す動きが(アメリカではミンスキー氏が見直されていますが(笑))増えてきてますが、わたしも読んでみようかな。
 しかし、麻生政権発足直後、与謝野経済財政担当大臣(当時)が、
日本経済の復活は、アメリカの需要が戻り、輸出が回復しない限り有り得ない
 と発言したときは、絶望感を覚えたものですが、与謝野氏もはっきりと宗旨替えを明言し、政府が内需拡大による経済成長路線へと大々的に舵を取り、輸出中心主義を推し進めた張本人の日経新聞にこのようなコラムが載るとは、時代は変わったものです。(しかもまだあれから一年も経っていない!)

 さて、噂の中国によるIT情報強制開示問題ですが、一応、日経にも載りました。

中国、ソフト設計図に固執 IT情報強制開示、来月に詳細
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090425AT1C2400N24042009.html
 中国政府は5月までにIT(情報技術)セキュリティー製品の技術情報をメーカーに強制開示させる制度の詳細を公表する。日米欧の各国政府は知的財産が流出する恐れがあると反対してきたが、「IT強国」を目指す中国政府は導入の意欲を改めて示した。対象範囲などによっては、日米欧企業が大きな影響を受ける恐れがある。(後略)』

 紙面版を読むと、日本政府に対して実施規則などを五月までに公表すると通告があったそうです。
 これに対し、本日午前の閣議後の会見で、河村官房長官が
中国政府にはあらゆるレベルで再考を求めている
 と発言しているため、どうやら読売の飛ばしではなさそうです。

河村長官:あらゆるレベルで再考求める-中国のIT強制認証
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003017&sid=agHXAmjyKSEo&refer=jp_japan
 
 本問題は非常に重大で、影響力も大きいため、明日のエントリーで詳しく取り上げます。



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