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崩壊する世界 繁栄する日本 「国家モデル論から解き明かす」 発売中!
Yen.SPA! 4月23日号に、インタビュー記事『「日本経済悲観論」の嘘』が掲載されています。

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 監修者さまのブログのタイトルが「第538回 CDSビッグバン 新自由主義の敗退と修正社会主義

http://blogs.yahoo.co.jp/daitojimari

 と、なかなか格好良いものになっていましたので、インスパイアされて本日のエントリー。
 これから始まる、と言うか既に始まっている新しい時代が本当に「修正社会主義」と呼ばれるのか、まあこれは後世の人が決める話ですが、これまで時代を席巻していた「新自由主義」あるいは「構造改革」なる考え方が終焉を迎えたのは、間違いないでしょう。

 何しろ本家本元のアメリカが、銀行を(事実上)国有化しまくり、自国の産業と雇用の保護に走り、財政支出を拡大した大きな政府(オバマ式に言うと「機能する有効な政府」)を目指しているわけです。
 日本では未だに「規制緩和しかない!」などと莫迦げた事を言っている時代錯誤なエコノミスト(もどき)がいますが、規制緩和とはすなわち競争激化です。競争の激化を受けた各企業は、雇用の縮小に進まざるを得ず、失業率は間違いなく上昇することになります。
 ちなみに、筆者は別に「規制緩和」「構造改革」路線を全否定しているわけでも何でもなく、その時々に応じて最適なソリューションは違うでしょう、と言いたいだけです。かつて成功したモデルが、今も有効とは限らないのです。と言うか、有効でないケースの方が多いと考えています。
 その辺は、コンサルティング誕生の地であるアメリカの方が、さすがに明確に理解していると思います。さらっ、と路線転換してみせますからね。


追加経済対策、財政支出15兆円に 贈与税、非課税枠610万円
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090409AT3S0802508042009.html
 政府・与党は8日、追加経済対策の大枠で合意した。裏付けとなる2009年度補正予算案の財政支出(真水)を約15兆円、事業規模を56兆円超とする方向。焦点となっていた贈与税減税では、住宅の購入・改修資金に充てることを条件に非課税枠を現行の110万円から610万円へ500万円上積みする。経済対策に伴う補正予算としては過去最大規模となる見通しだ。
 追加対策の内容は8日夜、自民党の細田博之、公明党の北側一雄両幹事長ら与党幹部の会談で決まった。政府・与党は10日に追加経済対策を正式決定。27日にも補正予算案と関連法案を国会に提出する見通しだ。(後略)』


 政府は15兆円という「真水」の財政支出について大枠合意しました。
 この予算を今年中に使い切ることができれば、日本のGDPは「最低でも」3%超押し上げられることになります。何で「最低でも」なのかと言えば、政府支出(だけじゃないですが)はGDPというフローに乗数効果を与えるからです。
 廣宮孝信氏の「国債を刷れ!」のP145に、乗数効果の分かりやすい例が載っています。その例によると、政府支出100に対する乗数効果は2.33倍、すなわち2倍以上の効果をGDPに与える可能性があるわけです。


 分かりやすくするために、今回の追加経済対策の例を使いますと、「エコカー購入」の促進策として3700億円の予算が当てられています。この予算を活用してエコカーを買った日本国民一人あたり、25万円お金を節約できたとします。もしかしたら、その人は浮いた25万円分の所得を丸ごと貯金するかもしれません。この場合は乗数効果はありません。
 しかし、もしかしたらその人は、25万円の半分13万円で、別の製品を買うかも知れません。この場合、13万円という新たなフロー(GDP)が産まれるのですが、このときに支払われた13万円を受け取った人も、もしかしたら半分だけ貯金し、7万円は別の製品に使うかもしれません。この場合、7万円という新たなフロー(GDP)が産まれるのですが(以下略
 つまり、エコカー購入促進策に政府が3700億円を費やした場合、それが回りまわって新たな消費を引き起こし、GDPには3700億円 x Nの効果を与えるかも知れないのです。(Nは、お金を貰った人が何%を消費に費やすか、いわゆる消費性向により決まります。)


 さて、昨日「超簡略化」した日本の問題は、フロー(GDP)であると書きましたが、そのフロー(名目値)2008年版が内閣府から速報されましたので、百分比を作成しました。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_17.html#JPGDP2008
※いつもは民間住宅、民間企業設備、公的固定資本形成(公共投資)の三つをまとめて「総固定資本形成」と呼んでいますが、今回はばらしました。


 予想通り08年の名目GDPは、前年比で1.5%ほどのマイナス成長になってしまった。が、ちょっと意外だったのは、個人消費が約293兆円と史上最高値を更新し、GDPに占めるシェアも57.8%と、やはり史上最高に達したことです。筆者は「崩壊する世界 繁栄する日本」で、日本の新たな国家のモデルにおいて個人消費を六割超まで高めろ、と主張しましたが、意外に早く実現するかもしれません。
 逆に純輸出の方は7153「億円」と、1980年にマイナス(純輸入)を記録して以来の最低値になってしまいました。まさに輸出バブルの崩壊ですね。
 円グラフを見て頂くと、日本のフロー問題の解決、すなわちGDPを成長させるのには、どの部分に力を入れれば効率的かが一目で分かりますね。無論、個人消費です。何しろ個人消費を1%増やすだけで、フローは3兆円近く増えるのですから。

 逆に、08年の実績値が1兆円に満たなかった純輸出で、3兆円を稼ぎ出そうとしたときの、その非効率性を想像してみてください。ひとこぎで100メートル進む自転車に対し、ひとこぎで1メートルも進まない自転車で競争を挑むようなものです。
 とは言え、個人消費の主体はあくまで日本国民であり、政府にどうにかなるものでもありません。と言うか、政府にどうにかなる支出項目は、あくまで政府最終消費支出と公的固定資本形成(公共投資)だけです。公共投資は民間企業設備などに好影響をもたらしますが、必ずしも直接的に消費を刺激するとは限りません。
 というわけで、麻生政権は主に個人消費活性化を目的とした政府支出を拡大することで、フローの問題を解消しようとしているわけです。(ちなみに、こちらは財政政策の話で、昨日どなたかがコメントされていたように、完全に解決するには日銀の金融政策も必要です。)


 この政府支出の財源ですが、当然ながら国債を発行して調達することになるのでしょう。
 日経の記事を見て興味深かったのは、いつもなら必ずある「赤字国債発行により、財政悪化がうんたらかんたら」という決まり文句が、入っていないことです(紙面版にはあるのかも知れないですが)。

 他のマスメディアは盛大に「財政破綻!」「選挙対策のバラマキ!」を連呼することが予想がつきますが、

■15兆円分の国債(恐ろしいことに、現在のアメリカでは、わずか一ヶ月間に発行される国債規模)を発行し、政府が市場から資金を調達。景気対策に使う。
■国債金利が上昇気配を見せたら、これまで通り日銀が買いオペレーションの国債買い取り額を増やし長期金利を下げる。
■日銀の買いオペ増額により、円が出回り、多少インフレ傾向になり、同時に円安傾向になる。デフレギャップが縮小し、極度の円高から解放された輸出企業も一息つく


 実のところ、これだけの話なので、何が問題なのか正直よく分かりません。と言うか、米英などが今しゃかりきになってやっていること、そのままです。
 「バラマキ」については、
ということは、選挙が近い時期には景気対策を一切打てないということか?
 と、質問をしたくなってしまいます。
 結局のところ、国内に「眠った」金融資産があり余っている日本が、政府の財政を不安視するなどナンセンスなわけです。起こり得ない「財政破綻」とやらがボトルネックとなり、
日本が内需拡大を疎かにすると、世界中が迷惑します。
 このまま政府支出拡大⇒フロー改善が進むと、来年の今頃には「財政破綻論」など過去の遺物と化し、みんな忘れ去っているかもしれません。マスメディアも、その頃になれば他の新たな「日本破綻論」のネタを見つけ出していることでしょう。
 もっとも、この種の「パラダイム・シフト」は、瞬間的に行われるわけではありません。徐々に、少しずつ、時間をかけて変わっていくものです。
 日本が「財政破綻論」というミスリードから解き放たれ、内需拡大により世界経済の成長に大きく貢献する日が来た場合、これはもはや「時代が変わった」と言っても過言ではないでしょう。とは言え、現代に生きる人びとが「今、時代が変わっている」と意識することはあまりなく、後々になって、
ああ、いつの間にか、時代が変わったなあ・・・
 と、振り返るものだとも思うのです。


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