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Yen.SPA! 4月23日号に、インタビュー記事『「日本経済悲観論」の嘘』が掲載されています。

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 3月1日時点のアメリカ自動車市場における在庫日数を纏めました。(資料提供は例によりNO様です。いつもありがとうございます。)
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_17.html#CarStock
 2月1日時点の在庫日数と比較すると、底打ちの気配がうかがえます。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_16.html#CarStock
 2009年1月から2月にかけた各自動車メーカーは、例のアレをやっている現代自動車を除き、軒並み在庫日数が膨らみ、結構絶望感を覚えたものです。ところが2月から3月にかけた数字を見てみると、各社一斉に(販売台数が少ないメーカを除き)在庫日数を減らしてきています。生産調整が終了する時期が近づいている可能性があるわけです。
 そのためか、珍しく日本経済新聞がこの件について報道していました。(わたしがNO様から本件について資料を頂き始めたのは、昨年秋からですが、日経が本件を取り上げた記憶はちょっとないです)


自動車3社、米国で在庫調整進む 2月は1割減
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20090315AT2D1301Y14032009.html
 日本の自動車大手3社が米国市場で抱える在庫が減り始めた。何日分の在庫を持っているかを示す在庫日数をみると、2月末は3社平均で91日分と1月末に比べ約1割減少。昨年末以降の減産効果で在庫調整が進んできたためだ。ただ2月の新車販売が前年同月比4割減るなど米市場は冷え込んだままで、厳しい収益環境は続きそうだ。
 在庫日数は販売店が保有する月末の在庫台数を1日あたりの販売台数で割った値。販売が滞るとこの日数が増え、減産や資金回収の長期化などで経営を圧迫する。』


 相変わらずブレイクダウンも何もせずに「自動車3社、米国で在庫調整進む 2月は1割減」などという見出しをつけるので、読者は誤解してしまいますが、ビッグスリーの中で在庫調整が大幅に進んだのはクライスラーだけです。まあ、フォードはいずれにせよ生き残りそうなので、あまり心配は要らないと思いますが、肝心要のGMの数値を見ると2月161日⇒3月147日と、精々微減といったところでしかありません。
 
そう問題は、GMなのです。
 もう一社の問題児、クライスラーが151日から100日へと一気に在庫日数を減らしてきたのですが、GMは相変わらず147日という高水準に張り付いています。
 ところで、本日3月31日と言えば、GMとクライスラーが再建計画を提出する締切日なのですが、大方の予想通り期限延長になりそうな模様です。


オバマ米大統領:GM、クライスラーに最後のチャンスを付与
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=aVoc4y_w.XoA
 オバマ米大統領は30日、米自動車メーカー、ゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーに対し、存続への最後のチャンスを与えた。同大統領は両社に対し、「国家に依存することなく、根本的な経営再建策」を策定するよう指示した。
 オバマ大統領は債権団や株主、従業員、ディーラー、部品企業には一段の犠牲が予想されると述べた。オバマ政権はGMのリック・ワゴナー最高経営責任者(CEO)に辞任を迫り、クライスラーに伊フィアットとの提携を模索するよう求めた。
 同大統領は「米自動車産業を単純になくすことはできないし、そのようなことはしてはならず、させるわけにもいかない。しかし、誤った判断を許し続けることもできない。税金を際限なく使用して自動車産業を存続させることもできない」と語った。
 両社の計画が失敗した場合に備え、政府は事前合意型の破産法適用に向けて用意を進めており、オバマ大統領はその方が債務を処理し、小規模な事業体系で再出発するのが容易になるとの認識を示した。 (後略)』


 昨日、クライスラーはイタリアのフィアットと提携関係を構築することに合意した旨を発表しましたので、何とかこちらの方は生き残り(と言うか、破綻回避)の道筋がつきそうです。AP通信によると、米政府はフィアットとの提携交渉完了に向け、60億ドルの資金と30日間の猶予を与えたとのことです。
 深刻な事態なのは間違いないのですが、持参金つけて娘を嫁に出す父親みたいで、思わず笑ってしまいました。(悪意無しに)
 そしてGMですが、29日の時点でリチャード・ワゴナー会長兼CEOが辞任する見通しになったと、アメリカのメディアが一斉に報じました。上のブルームバーグの記事を見る限り、政府が辞任を迫ったようですね。
 ワゴナー会長は、チャプター11(日本で言うと民事再生法)に基づいた再建に対し、最も否定的な立場を取ってきました。ブルームバーグの記事にもあるように、アメリカ政府はGMのチャプター11と政府主導の再建を落としどころとして考えているのではないかなあ、と思います。ワゴナー会長が退くと、チャプター11に対する取締役会の抵抗は、ほぼなくなるのではないでしょうか。
 結局のところ、現在のGMは「債権者」と「UAW」という二つのステイクホルダー(利害関係者)の間に挟まれ、身動きの取れない状況にあります。「債権者」と「UAW」という強力な団体が、互いに「お前が、より多く損をするべきだ!」と怒鳴りあっている状況で、間に入ったGMには、もはや調整能力は残っていません。
 チャプター11にした上で、政府主導で債権者、UAW、そしてGMの三者にそれぞれ負担を背負わせる以外に、もはやGMには救いの道はないように思われます。需要拡大期ならともかく、未だ新車販売が前年同月比で四割減(2月)になるような環境下で、各自のエゴが通ると思うのは無理があるのです。

 実のところ、「最後のチャンス」など、GMには始めから与えられてはいない気がしてなりません。


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