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崩壊する世界 繁栄する日本 「国家モデル論から解き明かす」 発売中!
SPA3月31日号(表紙が矢口)P4にインタビュー記事「今週の"むちゃぶり" FRB」が掲載されています。

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 タイトルの「三つの柱」とは、今後の新たな世界経済秩序構築のポイントになりそうな三つの概念、すなわち「日本の家計の金融資産、特に現預金」「アメリカの米国債と長期金利」「中国の貿易黒字」の三つを指します。
 「中国の最悪の輸出品は数字である」、などと書いておきながら、中国の指標が入っているのか。と、突っ込みが入りそうですが、「中国の貿易黒字」とは必ずしも中国の「輸出-輸入」を示す概念ではありません。「海外の中央銀行が、米国債を購入する能力」を示す象徴的な言葉、指標として「中国の貿易黒字」を採用しただけです。
 同じく、「日本の家計の金融資産、特に現預金」も、我々の預貯金のみを意味する概念ではありません。日本は世界最大の金額の現預金(ストック)を持ちながら、GDP(フロー)の低成長に甘んじてきました。(そういう国家モデルでした。)

 それは、なぜだったのか。そして、このモデルから脱却するにはどうするべきなのかを、本シリーズで解説していきます。その過程で、「日本は財政破綻する」「日本の内需拡大など、できるはずがない」といった、日本の似非知識人たちが撒き散らしている「嘘」や「誤解」も、解消していくことになります。
 最後の「アメリカの米国債と長期金利」は、世界経済の根幹を成すインフラストラクチャーである、「ドル」とそれを支える「米国債」の問題です。要は、プリンティングマネーという表現でエントリーを重ねてきた、「ドル基軸通貨制度は維持できるのか」という疑問について、分析・解説を進めていくわけです。
 誤解をされている人が多いですが、わたしは日本が大好きですが、別に反米主義者ではありません(特に親米というわけでもないですが)。何回も書きましたが、ドル基軸通貨制度が今後百年以上続き、日本がパックス・アメリカーナの元に平和とそこそこの繁栄を続けられれば、別にそれで全然オッケーです。
 アメリカが基軸通貨国である事を活用し、日本やらその他の諸国に自国の負債、借金を押し付け(米国債やら、証券化商品やら)、他国の負担の元に自分たちだけが楽に繁栄できるモデルになっていることについては、そりゃあ立腹もします。が、同時にこれほどの悪辣な仕組みを築き、それを維持しているアメリカのエリートの頭の良さには感服せざるを得ません。また、彼らの国益中心主義に対しては、素直に賞賛と羨望の念も抱いているのです。
 別にそれで終わりではなく、ならばこちらは彼ら以上に頭を働かせて、自国の国益と国民の幸福を追求すればいいじゃないか、という立場なわけです。
 要は情報力の問題です。あちらのエリートに一対一で頭脳勝負をしても勝ち目がなさそうですが、こちらは「誰もが平均的に頭が良い」という武器があるのです。この武器をフルに活かして、自分たちの国益を追求すれば良いのだと思いますし、それを可能にするツール(の一つ)がインターネットだと思っているのです。

 3月18日、アメリカの米連邦準備理事会(FRB)が、長期国債購入を軸にした金融緩和策を打ち出し、世界経済は新たなステージに一歩足を踏み入れました。このFRBによる「プリンティングマネー」開始について、海外のメディアの論調が日経にまとまっていましたので、ご紹介いたします。


『ウォールストリート・ジャーナル社説(3/20付け)
「歴史的に見れば、三千億ドルの国債購入でFRBは直接政府の借金を通貨供給に転換するわけで、これは第二次大戦中にやったことだ。また住宅ローン担保証券の追加購入で同証券から米国債に購入対策を切り替えつつある外国政府の肩代わりもしている。これらの行動の目的は銀行や住宅購入者の資金調達コストを下げることだ。」

「金価格が上昇しドルが下落した市場の反応は今後のリスクを暗示している。もう一つ大きなリスクは政治的なもので、FRBは財務省の代理機関化している」』


『ニューヨーク・タイムズ社説(3/21付け)
「FRBの目的は消費者、企業、政府の借り入れコストを下げ、経済刺激策の効果を増すことだが、これがうまくいく保証はない。失業の増大や借金の重みで金利や価格が下がってもすぐさま消費拡大には動かないかもしれない」』


『英フィナンシャル・タイムズ社説(3/20付け)
「FRBは日本で2001年から06年までにとられた量的緩和策を採用した。長期金利を引き上げないとの約束に加え国債購入に踏み切ったが、これは分別ある大胆な行動だ。成長回復の際のインフレ管理は幸運と判断が頼りだ。しかしFRBはいまだ信頼を得ており、ドルは依然強い。米政府・議会の消極姿勢とFRBの積極姿勢は対照的だ」』


 何か、一部しか読まずに批判するのもアンフェアだとは思いますが、ニューヨーク・タイムズは論調が日本のマスメディアにそっくりですね(笑。
 経済二紙の方は、概ね今回のFRBによる長期米国債買取を高く評価しているようです。中央銀行による国債の大量買取には、もちろん幾つもリスクがありますが、現在のアメリカの状況(需要激減、デフレ開始、国債残高急増)の状況では、他に手のうちようがないのも確かだと思います。


 中央銀行による国債買取のリスクですが、以下に整理してみましょう。

Ⅰ. 財政秩序の崩壊(中央銀行が、政府からの独立性を失い、無制限に紙幣を印刷し始める)
Ⅱ. 景気回復時に急激にインフレーションに突入する(特にⅠが成立していると、可能性が高まる)
Ⅲ. 自国通貨暴落の危険性(特にⅠが成立していると、可能性が高まる)


 基軸通貨国であるアメリカの場合は、特にドル急落、米国債の格下げが同時に危機に陥った結果、ドル基軸通貨制度が危機に陥るという、他国にはないリスクをも抱えているわけです。アメリカは自国の景気対策を目的とした財政支出の財源を、(基軸通貨国特権で)外国から調達できる(=リスクを外国に押し付ける)立場にはありますが、そのためにリスクが複雑に絡み合ってしまっているのも確かでしょう。
 国内に金融資産が余りまくっている日本の場合、政府の財源確保は国内問題に過ぎませんが、アメリカの場合は(証券化商品と同じく)世界が巻き込まれます。逆に、アメリカは、
「ドルと米国債を買い支えないと、お前たちがこれまで購入した米国債の価値が無に帰すぞ
 と、脅すことができる立場なわけです。問題は、これがいつまで通用するかだと思いますが。 
 とは言え、いくら基軸通貨国だからといって、本当にドルや米国債が暴落し、長期金利が急上昇したり、国内でインフレーションが発生するのは困るわけで、一応、Ⅰの問題についてFRBと財務省が共同声明を発表しています。


FRBの独立性を確認 米財務省と共同声明
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20090324AT2M2400W24032009.html
 米連邦準備理事会(FRB)と米財務省は23日、共同声明を発表し、金融危機の克服へ引き続きあらゆる手段を動員することで合意するとともに、雇用の拡大と物価の安定を目的とするFRBの金融政策の独立性を確認した。金融危機対応でFRBの役割が拡大、大量の資金供給でバランスシート(貸借対照表)が膨張するなか、ドルの信認にも影響する中央銀行の独立性への懸念が生じるのを防ぐ狙い
 共同声明は「金融と通貨安定の維持におけるFRBの役割」と題し、中央銀行であるFRBと政府との合意事項を整理。特別融資や証券買い取りなどを挙げ「異常で差し迫った状況でFRBの取った行動が、雇用の拡大や物価の安定など金融政策の本来の目的を阻害してはならない」と明記。金融政策の独立性を明確化した。』


 ところで、アメリカは米国債を海外の中央銀行に(主に)購入させ、それでも足りないので今回、FRBも買い取ることにしたわけですが、そもそも海外だろうが国内だろうが、中央銀行に国債を買わせること自体が、アメリカ以外の国からしてみればおかしいわけです。
 対米貿易黒字国が、自国通貨を切り上げないために中央銀行が為替介入した結果、中央銀行の手元に膨大なドル紙幣が溜まります。ドルを紙幣で持っていても金利を産まないため、各国の中央銀行はアメリカ国債を購入する。マネーの動きとしてはこうだったわけですが、このプロセスは「対ドル」でなければ通用しません。つまりドルが基軸通貨でなければ、別に各国の中央銀行は自国通貨でドルを買う為替介入をする必要はないわけです。
 それでは、基軸通貨国ではない国々、すなわちアメリカ以外の国々は誰に国債を売っているのか。別の言い方をすると、国債という「借金証書」と引き換えになる、現金は果たして「どこ」にあるのか
 
 明日に続く

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