新世紀のビッグブラザーへ blog


「ドル崩壊! 今、世界に何が起こっているのか?」が正式に発売になりました。
http://www.amazon.co.jp/dp/4883926583
http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/32119420

 折角なのでSAPIOの記事のタイトルっぽくしてみました。
 上海総合株価指数の暴落は留まるところを知らず、2008年9月12日の終値は2,079ポイント。ピークの昨年10月からの下落率は、ついに66%を突破しました。66%下落と書かれても実感が沸かないかも知れませんが、要は株価がピークの三分の一になったわけです。

11日大陸株式市場:急落、上海総合2100P割れ
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2008&d=0911&f=business_0911_020.shtml
 11日の中国大陸株式市場で上海A株相場は急反落し、上海総合指数は前営業日終値比3.337%安の2078.981ポイントと節目の2100ポイントを割り込んでこの日の取引を終えた。
 中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は10日、「インフレ圧力は過去数カ月間で明らかに弱まったが、再び強まる可能性も否定できず、引き締めを緩和することはない」と表明した。市場では、前日発表された8月のCPI上昇率が4.9%と事前予想を下回ったことで引き締め緩和への期待が強まっていただけに失望感が広がった。
 国内景気の先行き不透明感が根強い中、景気に敏感な銀行株が全面安となった。大手の物件値下げ観測が伝わった不動産株も急落。石油株も下げた。(中略)
 上海・深セン両市場を合わせた売買代金は394.59億元で、前営業日の420.45億元より減少した。』

 上海総合株価指数 11日の3.337%下落から一夜明け、12日は前営業日終値比0.033%高と小反発、と言うか超小反発しましたが、とにかく最近の中国株式市場は出来高が日々縮小しているのが気になります。要は、買い手の数が毎日減少していっているということです。
 ちなみに、バブル崩壊は買い手が消え失せても終わりません。バブル崩壊が終わり、株価が底値に達するのは、買い手ではなく「売り手」がいなくなったときです。

 中国経済の問題はもちろん株式だけではありません。不動産のバブル崩壊も顕著になってきました。が、不動産バブルの崩壊開始は地域によりバラつきが生じますので、全中国の問題として認識されるのは来年になってからのような気が致します。
 ちなみに、現在の世界経済混乱の大元たるアメリカの不動産バブル崩壊も、やはり同じように地域により開始時期にバラつきが出ました。具体的に書くと、主要都市の中で最も早く不動産バブルが崩壊したワシントンDCは2006年5月に早くもピークアウトしたのに対し、ロスアンゼルスの不動産価格が下落開始したのは2007年10月に至ってのことでした。2007年10月と言えば、すでにサブプライムローン関連の金融危機が世界的に問題になっていましたが、ロスアンゼルスの不動産価格はその時期まで上がり続けたということです。
 21世紀初頭の日本人の中国投資熱を煽った「戦犯」である日経新聞も、この情勢を受け、さすがに中国報道の姿勢を改め始めました。
 最近の日経新聞は、中国経済の負の部分に注目した「転機の中国」という特集を連載しています。ま、今の中国経済を見ると、「負の部分」以外は見当たらないんですけどね。

『日本経済新聞 2008年9月11日朝刊一面 「転機の中国 第1部 噴出す不安(2)」
「客だった千人の従業員が消えた。うちも終わりだ」中国の輸出の三割を担う広東省。有数の産業都市、東莞市で、小売店店主がため息をついた。近くの大型玩具工場が閉鎖されたためだ。
 1990年代、東莞市は玩具生産の拠点として急速に発展。ピーク時には玩具メーカーは約4000社にのぼった。それが今では約千社まで激減工場が一夜にして撤退する「夜逃げの街」ともささやかれる。東莞市の1-6月の外資導入額は前年同期比14%減と初めてマイナスに転落した。
 今月1日、台湾株式市場を「鴻海ショック」が襲った。EMS世界最大手、鴻海精密工業の4-6月期の純利益が24%減と四半期決算で七年ぶりに減り、株価がストップ安となったためだ。
 鴻海はパソコン、携帯電話から米アップルの「iPod」まで電子機器の生産を受託、中国の工場で造り、世界に輸出する。2007年の輸出額は232億ドルと中国最大の輸出企業。広東省深セン市では約20万人を雇うが、業績急降下で雇用調整は不可避だ。(後略)』

  台湾の鴻海の苦境は、「中国で生産し、世界に輸出する」というビジネスモデルが、破綻の危機に瀕していることを示しています。
  ちなみに、上記日経の記事は(後略)の後も続くので、例により要旨をまとめてみましょう。

■輸出の対GDP比は中国は約四割と、日本の二割(<<16%だろ!)を大きく上回る。中国は輸出主導で高成長を続けてきたのだ。(嗚呼!日経がこんな事を書くなんて!数字が微妙に違うけど)
■広東省の代表的輸出産業である繊維産業の輸出が1-7月期に前年同期比-31%と急減
■中国は世界に早く追いつきたくために自前の技術開発ではなく、外資から技術を導入する体質になった。中国にソニーやホンダのような研究開発型の新興企業が誕生しないのはそのため。今も高付加価値の製品や先端技術品を生産する工場の多くは外資系
■この状況で労働集約型産業が勢いを失えば中国は失速しかねない。労働集約型産業からの脱皮無しでは中国の将来は無い

 まあ、今更ですが、日経が曲がりなりにも「数字」をベースに冷静に中国経済に関する報道を始めたのはいいことです。
 しかし国内の技術が未熟な状況で、中国は外需縮小、労働集約型の輸出産業の業績悪化、国内の労賃高騰、外資流入の縮小という災禍に見舞われているわけです。中国経済の本当の問題は、株式バブルや不動産バブルの崩壊ではなく、経済成長の肝であった製造業の崩壊、つまり実体経済の根幹が痛めつけられつつある点だと思います。
 とにかくあらゆる産業の中で、製造業こそが雇用を最も効率的に作り出します。中国の実体経済、製造業の苦境は、やがて来るであろう大失業時代の明確な予兆なのです。
 「本当にヤバイ!中国経済」にも書きましたが、このまま失業率が上昇し、沿岸大都市に数百万人の失業者が溢れインフレーションが二桁に近いレベルに達していたとき、そのときこそ中国は正念場を迎えることになります。あとはただ、それが「いつか」という問題だけなのです。

  人気ブログランキングに参加してみました。
 中国経済wktkな方は、↓このリンクをクリックを。
http://blog.with2.net/in.php?636493  

 新世紀のビッグブラザーへ ホームページは↓こちらです。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/index.htm
 新世紀のビッグブラザーへ blog一覧は↓こちらです。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/blog.html