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9月19日(金)発売の撃論ムック「猟奇的な韓国」に「崩壊進行中の韓国経済の病理」を寄稿しました。
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20億ドルの支援要請めぐりIMFと正式協議開始で合意=アイスランド首相
http://jp.reuters.com/article/domesticFunds/idJPnJT829800320081024
 アイスランドのハーデ首相は24日、議会が20億ドルの支援要請をめぐり国際通貨基金(IMF)と正式協議を開始することで合意したことを明らかにした。
 ハーデ首相は、国内テレビが報じた会見で、IMFが受け入れ難い条件を提示しているとは思わないと語った。』
 
 昨日、アイスランドがIMFと21億ドル(約2000億円←円建計算が凄い違和感!)の緊急支援の協議開始で合意に至ったことが報道されました。西欧諸国としては、1976年の英国への緊急援助以来、実に32年ぶりの事になります。各種報道を見る限り、アイスランドは例のカルマル同盟諸国にも緊急支援を依頼しており、さらに日本に対しても支援を求めています。恐らくIMF経由になるでしょうが、日本からも緊急支援が提供される可能性が高いと思います。
 アイスランドは金融立国モデルにより繁栄し、金融立国モデルにより破綻しました。これを機会に、国のビジネスモデルとも言うべき「国家のモデル」について整理しておくべきではないかと思いました。
 国家のモデルと書くと、やたら抽象的ですが、以下の三つの指標+1を並べるだけで、かなりの部分が理解できます。
Ⅰ. GDPの規模と構成(個人消費、住宅投資、設備投資、政府支出、及び純輸出(または純輸入))
Ⅱ. 国際収支(経常収支、資本収支、外貨準備高増減、及び経常収支をブレイクダウンした貿易収支、サービス収支、所得収支等)
Ⅲ. 対外資産負債残高(International Investment Position)
+1 為替相場
 要はわたしが「本当はヤバイ!韓国経済」で使った手法ですが、アイスランドの場合、実は日本語のデータがあまり揃っていません。(JETROにすら、何もありませんでした orz) それでもまあ、Central Bank of Iceland(アイスランド中央銀行。以下、面倒くさいのでアイ銀)に統計が載っているので、できる限りやってみましょう。

【アイスランド 国家モデル】
Ⅰ. GDP:200億ドル(内、金融不動産が26%を占める)※このデータのみ、Wikiから。
 輸出:306,001Mクローナ(47.8億ドル)
 輸入:393,978Mクローナ(61.6億ドル)
  
Ⅱ. 国際収支 2007年 単位:Mクローナ
 経常収支 ▲199,874(41.2億ドル)
  貿易収支 ▲87,977(13.7億ドル)
  サービス収支 ▲42,705(6.7億ドル)
 ※貿易サービス収支 ▲130,682(20.4億ドル)
  所得収支 ▲65,342(10.2億ドル)
 資本収支 171,156(26.7億ドル)
 外貨準備高 6,695増加(1億ドル増加)
※経常収支の推移は、アイ銀がグラフ化してくれていますので、ご覧下さい。
http://www.sedlabanki.is/lisalib/getfile.aspx?itemid=3650&proc=4

Ⅲ. 対外資産負債残高 2007年 単位:Mクローナ(ドル)
 対外債権 6,649,563(1039億ドル)
 対外債務 8,037,241(1255.8億ドル)
 対外純債務 1,387,678(216.8億ドル)
※これも、アイ銀がグラフ化してくれています。
http://www.sedlabanki.is/lisalib/getfile.aspx?itemid=3653&proc=4

+1 通貨ですが、暴落後の今の為替レートを使うわけには行きませんので、暫定的に07年末時点の1ドル64クローナを採用します。(この後、08年3月位から下落が始まりました。)
 現在の為替レートでは(取引が成立しにくいそうですが)、1ドル190クローナとなっています。

 凄い・・・・。いや、酷い・・・。
純輸入(≒貿易サービス収支 ▲20.4億ドル)対GDP比率=10.2%
対外債務対GDP比率=628%(6.28倍)
所得収支赤字対GDP比率=5.1%
 しかも、3月以降のクローナ暴落により、対外債務のドル建て額面が三倍に膨れ上がっているのです。こりゃ、どう考えても持続不可能でしょう。
 「本当にヤバイ!中国経済」の二章で、スイスの国際収支や対外債権、GDPについて分析しました。スイスの所得収支黒字対GDP比率は、10%(でした)。対するアイスランドは、所得収支「赤字」対GDP比率が5%。アイスランドをスイスと同じ「金融立国」と呼ぶのは、無茶な話でしょう。アイスランドは、ただひたすらに海外からお金を借りていた(例:イギリス人の預金を、高金利で集めた)だけです。
 今や、世界屈指の対外純債権国であるスイスでさえふらついているのに、高金利で海外マネー(フェイクマネー)を引き寄せ、純輸入状態が続く中、金融と不動産バブルでGDPを嵩上げしていただけのアイスランドが、中長期的に成長していけるわけが無かったのです。
 アイスランドのWikiには、以下の文章が掲載されています。

『全体のGDPは少ないが、国民一人当たりでは世界でもトップレベル(2006年時点で世界5位)に位置する。さらに国際競争力も高く、世界4位、ヨーロッパ1位となっており、小国ながら特筆すべき経済力を持っている。』

 この「特筆すべき経済力」の正体は、GDPの六倍(07年末当時)にまで膨れ上がった対外債務だったわけです。このようにアイスランドの「国家のモデル」を無視して、「アイスランドは世界屈指の高成長国。日本も金融立国アイスランドを見習え!」などと莫迦な事を主張していた日本のメディア、似非経済評論家の何と多かったことか。
 かく言うわたしも、上記のような「アイスランドの国家モデル」など知らないままに、「へえ~、アイスランドって、凄いんだ」とか思っていたので、あまり他人の事を悪し様に言えません。(注:韓国については、言えますが。)

 ちなみに、韓国はアイスランドに比べると貿易赤字も酷くないし、外貨準備高も多く、対外債務もマシなので、破綻しない、という理屈は成り立ちません。なぜならばアイスランドと韓国は「国家のモデル」が異なるからです。
 そもそもアイスランドが仮初ながらも「金融立国」で国民を食べさせることができたのは、人口がわずかに31万人だからです。対する韓国の人口は5000万人に近いのです。5000万の国民を金融で食わせることなどできるはずもありません。
 もちろん韓国は特に「金融立国」を目指していたわけではなく、かつての日本、現在の中国型の輸出立国型、製造立国型のモデルを志向していたわけです。
 輸出立国であるからには、当然ながら貿易収支、経常収支の黒字を維持し、対外債権を積み上げていくことになります。その韓国が、貿易赤字、経常収支赤字、純債務国化、為替暴落、外貨準備減少となっている、つまり「国家のモデル」が崩壊しつつあるからこそ、危機なのです。
 
 念のため書いておきますが、国家のモデルは不変である必要はありません。当たり前の話しですが、外部環境、内部環境の変化に従い、国家のモデルは自らも変化を繰り返していかねばならないのです。
 現在進行中の世界的な危機は、各国に「国家のモデル」の変更、すなわちパラダイム・シフトを強いています。日本の近未来の「国家のモデル」は、一体どのような姿をとるのでしょうか。

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