「SPA 11月25日号」P4に、インタビュー記事が載っています。内容はIMFと日本の1000億ドル資金供給についてです。 http://spa.fusosha.co.jp/
「夕刊フジ 11月14日版 韓国経済“崩壊”危機…止まらぬウォン安、年末要注意」にインタビュー記事が載りました。 http://www.zakzak.co.jp/top/200811/t2008111445_all.html
「Voice 12月号 特集 金融危機を突破する法」に「特集Ⅱ 東アジアの危険な火種 韓国経済は崩壊寸前だ ウォン暴落、純債務国化-悪循環は連鎖する」を寄稿しました。 http://www.amazon.co.jp/dp/B001IUMRZW/

 今回のサブプライム危機において、欧州経済はアメリカ並の、あるいはそれを上回るようなダメージを受け、ユーロは対ドルで大きく値を下げました。本日のエントリーの「欧州」には、マーストリヒト条約を批准していないイギリスや、ユーロを導入していないスウェーデンなどは含みません。あくまでユーロを導入している大陸欧州諸国とご理解下さい。
 欧州の不動産バブルが語られる際に、よく「欧州諸国(注:ドイツを除く)」という言葉が入ります。なぜ「ドイツを除く」なのかと言えば、無論、ドイツでは不動産バブルが発生していなかったからです。バブル発生どころか、ドイツの不動産価格はここ数年、微減を続けていました。これはなぜでしょうか。
 理由は、ITバブル崩壊後のドイツを襲った「バランスシート不況」にあります。そしてこのドイツのバランスシート不況こそが、現在の欧州バブル崩壊の主因なのです。
 結構複雑なのですが、できるだけ分かりやすい解説になるように頑張ります。
 まず、サブプライム危機の遠因となったITバブル崩壊ですが、これは何もアメリカや日本だけの話ではありませんでした。
 二十世紀末、他の多くの国々と同様にドイツにおいてもITバブルが荒れ狂い、そして崩壊しました。ITバブル崩壊により、ドイツの新興株式市場ノイマルクトは、ピークから九割以上も下落するという壊滅的な状況になりました。
 バブル崩壊により何が起きたかと言えば、それまで「行け行けどんどん」のノリで融資を受け、事業を拡大していたドイツの企業が、「借金は返さなければならないんだ」と考え始めたことでした。当たり前じゃん、などと言うなかれ。これは実は「バランスシート(貸借対照表)不況」を引き起こす、経済的にかなり危険な事態なのです。
  バランスシート不況とは、企業が(負債が膨れ上がった)バランスシート調整を優先し、積極的な投資行動を取らない結果、景気が低迷することを意味します。要は、企業が自社のバランスシートに積み上がった負債の額に恐れをなし、収益を再投資するのではなく、債務返済に充当すること優先するわけです。一社や二社ならともかく、多くの企業が揃って債務返済を優先し始めると、設備投資などが縮小し、企業のバランスシートが綺麗になるまで、中長期的に経済は低迷します。
 バブル崩壊後の日本と同じじゃん、と思った方は、鋭いです。バブル崩壊後の日本企業もやはりバランスシートを美しくすることを優先し、景気は中期的に低迷しました。(おかげで、現在の日本企業のバランスシートはピッカピカで、キャッシュ余剰状態になってしまいました。)
 このバランスシート不況が厄介なのは、金融政策(要は利下げ)の効果が薄くなるか、あるいは殆ど無効になってしまうという点です。バブル崩壊後の日本でゼロ金利政策が採られましたが、どれだけ金利が安くても、銀行貸出は増えず、景気は加速しませんでした。当たり前です。当時の日本企業はお金を借りるよりも、返すことに焦点を当てていました。要は、借り手がいないのですから、金利が高かろうが安かろうが、銀行貸出は増えないのです。
 バランスシート不況に対応するには、金融政策ではなく財政政策が必要なのです。ITバブル崩壊後のドイツも、バブル崩壊後の日本のように財政赤字で経済を下支えするべきでした。
 が、できませんでした。なぜならば、EU(欧州連合)のマーストリヒト条約の第5附属議定書に基づき、ユーロ導入国は「財政赤字を3%以下に収めること」が義務付けられているためです。ドイツはEUに加盟していたため、日本のように大々的に財政支出を行えず、手足を縛られたような状況にあったわけです。
 バランスシート不況に財政政策で対応できない中、ドイツの不況が他の欧州諸国にも影響を及ぼし始めました。慌てたECB(欧州中央銀行)は、金利を2%にまで下げ、欧州全域の景気低迷をまぬがれようと試みました。
 先述したように、バランスシート不況に金融政策で対応することは困難です。結果、大本のドイツは景気低迷が続く中、バランスシート不況に陥っていない他の欧州諸国で、史上最大の不動産バブルが始まりました。今回の欧州不動産バブルは、まさにEU、マーストリヒト条約の「あだ花」なのです。
 ドイツの不況対策のために実施した利下げが、当のドイツには殆ど効果が無く、他のEU加盟諸国に不動産バブルを引き起こし、そして崩壊する。何というか、経済史の教科書に絶対載りそうな、分かりやすい事例です。(それを言ったら、サブプライム危機そのものが載るでしょうが)
 話はまだ終わりません。
 今回の欧州バブル崩壊の結果、今度は欧州諸国の家計や投資家たちが揃って考え始める可能性が高いのです。
「借金は返さなければならないんだ」
 結果、欧州の殆どの国々がバランスシート不況に突入した場合、果たしてマーストリヒト条約は維持できるのでしょうか。バランスシート不況時には、たとえゼロ金利であっても誰もお金を借りてくれない(景気が加速しない)可能性が高く、対抗手段は財政支出拡大しかありません。

 欧州だけではなく、バブルが崩壊した世界の多くの国は、同じようにバランスシート不況に陥る危険性があります。本家本元のアメリカも、同様です。

米クレジットカード業界、記録的な損失計上へ=バンカメCEO
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-34985720081119
 バンク・オブ・アメリカ(BAC.N: 株価, 企業情報, レポート)のルイス最高経営責任者(CEO)は、国内経済は今後も悪化するとし、クレジットカード業界は記録的な損失を計上するとの見通しを示した。
 同CEOは「業界で経験したことのないほどの損失となる可能性がある」と述べた。
 金融危機が続いていることを考慮すれば、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)では0.5%ポイント追加利下げする可能性が高いと指摘した。(後略)』

 クレジットカード業界が記録的な損失計上・・・。貸し倒れ状況がものすごいことになっている以外に考えられません。しかしそれでも、世界経済はアメリカ人がクレジットカードでどんどん買い物することを望んでいるのです。(もはや望み薄な気が致しますが。)
 どうかアメリカ人が、クレジットカードの利用は借金であることに気がつき、「借金は返さなければならないんだ」などと考えませんように・・・。
 
【おまけ】
最近、ほぼ毎日のように韓国経済(と言うか、ウォン)関連のお仕事を頂きます。日本の大手メディアが状況に気がついたときは、もはや話は終わっていることが多いのですが、今回は果たしてどうでしょうか。

 人気ブログランキングに参加しました。
 ウォン下落が洒落にならない韓国経済wktk!な方は↓このリンクをクリックを。
http://blog.with2.net/in.php?636493  
 ※おかげさまで、人気ブログランキングの「ニュース部門」で首位奪還致しました。皆様のご協力に感謝します m(_ _)m

 新世紀のビッグブラザーへ ホームページは↓こちらです。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/index.htm
 新世紀のビッグブラザーへ blog一覧は↓こちらです。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/blog.html