SAPIO 12/17号に「[通貨危機]ウォン大暴落で借金国家に転落した韓国の土壇場」を寄稿しました。
http://www.zassi.net/mag_index.php?id=55
11/25 20:55~21:20 J-WAVE(FMラジオ・81.3・首都圏ネット)「JAM THE WORLD」に生放送出演しました。
http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/cgi-bin/minutes/form.cgi?event=open&start=1
「SPA 11月25日号」P4に、インタビュー記事が載っています。内容はIMFと日本の1000億ドル資金供給についてです。 
http://spa.fusosha.co.jp/backnumber2008/cat_20081125.php

 「ドル崩壊!」において「今回のサブプライム危機の原因は、二十世紀末のアメリカITバブル崩壊にあった」と書きました。
 ページの都合で「ITバブル崩壊」から「サブプライムローン問題の始まり」までのプロセスは書ききれませんでした。筆者の記憶が定かなうちに、このプロセスについて書きとめておきたいと思います。

 http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_04.html#kinrisa

 上記は2000年から今年の3月までの日米の政策金利をグラフ化したものです。
 ITバブル崩壊により不況突入が避けられない状況になったアメリカ、より具体的に言うとFRBのグリーンスパン元議長は、大いに危機感を抱きました。結果、元議長ははアメリカの政策金利を一気に引き下げ、不動産バブルを引き起こすことでアメリカの不況突入を回避することに成功しました。金利引下げ幅はご覧の通り、6.5%から段階的に1%へ落とすという、かなりドラスティックなものでした。
 ちなみに、アメリカが政策金利を1%にまで引き下げたのは、1957年以来、実に四十三年ぶりのことです。
 四十三年ぶりの低金利を受け、アメリカに不動産バブルが巻き起こりました。それまで対前年比で5%未満の上昇率だったアメリカの不動産価格は、一気に10%超、最盛期である2006年には15%近くにまで達したのです。
 住宅ローンの金利水準は史上最低。不動産価格の上昇率は年に10%超。この状況で不動産購入に手を出さない人がいたら、周囲から奇異な目で見られても仕方がないような気が致します。
 ここで注目して欲しいのは、2004年前半には、早くもFRBが利上げ政策へと転換したことです。史上最低の1%で推移していたアメリカ政策金利は、FRBの政策転換により2006年には5%超まで引き上げられました。FRBは毎月のように利上げを繰り返し、利上げ回数は合計で十七回にも達したのです。
 この連続的な利上げ行為は、何を目的としていたのでしょうか。もちろんFRBがアメリカの不動産バブルを危惧し、住宅価格高騰を押さえることが目的だったのでしょう。もっとも、グリーンスパン元議長はこの時期においても「アメリカに住宅バブルはない」と主張していましたが。(サブプライム危機勃発以降、元議長は意見を翻し、アメリカの住宅バブルを認めました。)
 この時期(04年から06年)、FRBの利上げによりアメリカの短期金利は上がり続けたのですが、なぜか長期金利は上がりませんでした。結果、短期金利を長期金利が上回る、いわゆる「逆イールド」現象が生じたのです。
 逆イールド現象が起きた理由は色々ありますが、個人的には日本とスイスが、この時期も低金利政策を維持していたのが大きいのではないかと考えています。資金需要のある企業や金融機関は、何もアメリカ国内で高金利で資金調達をする必要はなく、日ス両国から低金利のキャリー資金を引っ張ってくれば済んだわけです。
 日本が30兆円超という、史上最大の円高防止の為替介入を行い、金融市場にマネーを溢れさせたのもこの時期です。歪んだ為替介入に日米金利差拡大が加わり、日本の経常収支黒字が史上最大に達しようとしているにも関わらず、円安傾向が続き、キャリー資金が日本から世界に溢れ出ていきました。
 世界に溢れたマネーは各国でバブルを膨らませ、最後の買い手アメリカが(アメリカ人の借金により)個人消費を拡大し、世界は同時好況の美酒に酔いしれたのです。
 但し、逆イールド現象はアメリカのウォール街の金融機関に危機をもたらしました。「ドル崩壊!」のSIVの項でも解説しましたが、投資銀行やSIVのビジネスモデルの多くは「短期で調達し、長期で運用する」事、長短金利差として運用益を上げることです。つまり長期金利が短期金利を上回ることが大前提であり、逆イールド現象は彼らのモデルに「逆ザヤ」を生じさせてしまうことになります。ウォール街は高利回りの運用先を、切実に必要としていました。
 そこでウォール街が目をつけたのが、サブプライム層、即ち信用の低い人々を標的市場とした住宅ローンだったのです。サブプライムローン問題の始まりです。
 サブプライム層という新たな市場を得て、アメリカ住宅価格の上昇は結局2006年まで続き、そして破裂しました。本来はアメリカのバブル崩壊で収まる話だったところが、金融機関がサブプライムローン債権のRMBS化、CDO化、リスク回避のためのCDS購入などにより、危機を全世界に拡散させてしまったことは、ご存知の通り。

 結局のところ、世界経済は現在、04年頃にFRBがアメリカ不動産バブルを沈静化させることに失敗したツケを払い続けているわけです。

悩める中央銀行 ドル大量供給、市場に火種 (日本経済新聞2008年11月28日 朝刊)
(前略)各国中銀はドル資金を世界の金融市場に行き渡らせるネットワークを急速に構築中。金融機関が互いの健全性への疑念から資金の貸し借りを手控え、市場でドル資金が枯渇しているためだ。具体的にはFRBが各国中銀に対し互いの通貨を交換する協定に基づき、ドルを供給。各国中銀がパイプ役となり自国の金融機関に流す仕組みだ。
 昨年十二月に米欧など五中銀で始めた枠組みは、今年九月までに日銀も含めた十中銀に拡大。資金額も段階的に増え、ついに無制限となった。FRBは十月にブラジル、メキシコなど新興国の中銀にもドル供給を始め、関係者を驚かせた。
 信用低下の懸念
 一連の措置はFRBが印刷した紙幣を世界に散布する事を意味する。その規模はどれほどか。FRBがドルと引き換えに各国中銀などから受け取った外国通貨の額は六千億ドル(五十七兆円)。一年前から五千六百億ドル(五十三兆円)増えた。これにほぼ見合うドル資金が、各国に供給されたもようだ。
 だが危機がおさまれば、金融機関はしまい込んだドルを吐き出し、市場にドルが溢れ返る可能性がある。「タイミングを見極めうまく回収を進めないと、米財政赤字と相まってドルの信認が低下し、市場が不安定化しかねない」(東短リサーチの加藤出氏)。先を見据えた柔軟な国際協調策がこの先も問われる。』

 金融危機が深まる場合はもちろん、危機の終焉までもが今やドルに危機をもたらそうとしているわけです。FRBの悩みは尽きません。

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