SAPIO 12/17号に「[通貨危機]ウォン大暴落で借金国家に転落した韓国の土壇場」を寄稿しました。
http://www.zassi.net/mag_index.php?id=55
11/25 20:55~21:20 J-WAVE(FMラジオ・81.3・首都圏ネット)「JAM THE WORLD」に生放送出演しました。http://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/cgi-bin/minutes/form.cgi?event=open&start=1

「円高が進むおかげで、日本が持つ米国債の価値がどんどん落ちていっている。日銀はさっさと為替介入して、円高を食い止めろ!

 この↑文章、一見まともに見えますが、実は非常に矛盾していた主張になっています。お分かりになりました?
 日銀が円高防止の為替介入をするということは、円(通常は、政府短期証券で調達)でドルを購入して円の価値を下げる分けですが、購入されたドルは外貨準備に積み上がり、普通は米国債で運用されます。もしもそれでも円高が止まらず、為替介入の際に積み上げた米国債の価値が、円高により減じる事を恐れるのであれば、再度、円でドルを購入する為替防衛をしなければなりません。そしてそれでも円高が止まらず、米国債の価値が減じる事を恐れるのであれば・・・・永遠に終わりません。
 時々「米国債を購入することでドル基軸通貨制度を支える日本は、米国の犬だ!」などと主張する人がいます。保有する米国債などの対外債権の価値が落ちる事を恐れ、為替介入して円安誘導し、ネバーエンディングで米国債を購入し続けていったとしたら、それこそ間違いなく米国の犬でしょう。
 実際のところ、日本政府当局は我々が望むほど賢くもありませんが、↑こういう主張を繰り返す連中が叫ぶほど莫迦でもありません。
 日本は03年及び04年の為替介入時をピークに、徐々に保有する米国債の額を減らし続けています。(直近では、ピークからおよそ二割減となりました。)
 当たり前ですが、日本が保有する米国債(今年の九月末時点で総額5732億ドル)を10兆円単位で売却したりすれば、米国債の価格が暴落し、ドルが暴落し、却って自分の首を絞めるだけです。(ついでにアメリカと決定的に敵対することになります。)少しずつ売却することで、「ドル保有」のリスクを減らしていくしかないのです。
 かように為替介入で通貨高を食い止める事は、却って自国経済のリスクを高める事になります。為替介入の理由が米国債の価値維持でも、輸出企業支援でも同じことです。
 昨日のエントリーで、中国が人民元安誘導に舵を切った事を取り上げました。九月時点で米国債保有額で日本を抜いた中国は、まさに上記のネバーエンディングで米国債を買い続ける道を選択したことになります。
 m9(^Д^)プギャー、米国の犬~っ、てなもんです。
 
 何が言いたいかと言えば、「為替介入」一つとっても、その際の「お金」の流れを理解していないメディアや評論家、それに政治家が多いということです。日銀の為替介入の場合は、日本政府が「短期証券(要は借金)」で円を調達し、日銀がその円でドルを購入し、購入したドルで米国債を運用する、という流れになります。という事は、日銀が為替介入するたびに日本政府の債務が増えていくわけです。少なくとも「財政健全化!」とか叫んでいる人は、日銀に「輸出企業のために為替介入しろ!」と言う資格はないでしょう。
 現実には「日本政府は巨額債務を何とかしろ!」と叫ぶ人と、「日本は外需依存度が高い!(注:今更ですが、嘘です)円高防止の為替介入しろ!」と叫ぶ人が同一人物であるケースが多いように見受けられます。恐らくこの手の人たちは、分かっていてダブルスタンダードを用いているわけではなく、単に無知故に醜態を晒しているだけだと思います。
 
09年度経常黒字、過去最大 輸入額大幅縮小で貿易会予測
http://www.47news.jp/CN/200812/CN2008120501000619.html
 商社の業界団体、日本貿易会は5日、原油相場や食料価格の下落により輸入額が大幅に縮小し、2009年度の海外とのモノやサービス、投資などの取引を示す経常収支の黒字額が26兆9800億円に達し、過去最大となるとの予測を発表した。
 貿易会は、09年度の輸出について、世界経済の低迷で07年度実績に比べ、約7兆円減少の73兆7600億円と予想。一方で、輸入額は原油相場下落などに外国為替相場の円高も加わり、10兆円近い減少となる59兆800億円に落ち込むとしている。サービス収支の赤字幅もやや縮小する見込みとしている。
 08年度については、経常黒字が前年度比16・8%減の20兆4300億円と、7年ぶりに縮小する見通し。上半期のエネルギー・資源、食料価格の高騰が響き、輸入額が過去最高の71兆1400億円に膨らむと予想しているため。
 円相場は08年度が1ドル=101円、09年度が95円、原油価格はそれぞれ1バレル=97ドル、70ドルを前提に試算した。』

 十月末の「一年後の未来から」というエントリーで、わたしは一年後の日本が貿易赤字になっていると予想しました。
http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/19270748.html
 あの予想では、資源バブル崩壊を折り込んでいませんでしたので、もしかしたら上記日本貿易会の予想の方が正しいのかも知れません。特に原油価格がここまで一気に下落するとは、一ヶ月前には思ってもみませんでした。(一年後どころか、早くもガソリン1㍑100円を切る地域が出ましたね。)
 日本貿易会の想定では、09年は1㌦95円、1バレル70ドルとなっていますが、今の流れだと1㌦80円台、1バレル30ドル台になっていても、全く不思議ではないわけです。
 状況がこのまま推移すると、日本の09年の経済戦略を立てる際は、以下の環境が前提になります。

■輸出額↓ 輸入額↓ 純輸出↑(対08年比)
■経常収支 ↑ (注:日本の場合、貿易収支が均衡しても、所得収支黒字が巨額なので、経常収支自体は黒字を維持する)
■為替レート 円高継続(注:経常収支黒字&信用収縮継続故に)
■企業設備投資 ↓
■個人住宅投資 ↑ (注:建築法改正の反動が続くので)
■個人消費 ?

 上記が前提の場合、資源価格下落と円高を利用し、輸入産業を活性化させ、企業は設備投資よりも海外M&Aにより収益性向上を図る、という絵が描けます。今の世界的な外需縮小が続くと、輸出産業の更なる設備投資減少は避けられず、企業が利益を上げるには海外からの配当(所得収支黒字)、もしくは国内市場の拡大を図るしかありません。
 いずれにしても、日本のGDPの六割を占める個人消費(民間最終消費支出)の活性化がキーになるでしょう。

 それにしても、ウォン暴落状態の韓国の輸出が、対前年比でマイナスに落ち込んでくれたおかげで、「円安になれば、日本の輸出は復活する」論者を黙らせる事ができます。ありがとう、韓国。

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