三橋貴明診断士事務所を開設しました。お仕事のご依頼はこちらから http://takaaki-mitsuhashi.com/
SPA1月13日号にインタビュー記事が掲載されています。(P4です。) http://spa.fusosha.co.jp/
集合知プロジェクト 進行中! http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/folder/1158306.html
 
 先日、中々良い質問をメールでくれた方がいたので、この場を借りてご回答いたします。

Q:外需依存度とは、GDPの成長に対し外需がどれほど寄与しているかという意味ではないのでしょうか。成長に対する寄与という点で見れば、日本は外需依存度が高いと言っても良いのではないでしょうか?

A:外需依存度は本来は「輸出対GDP比率」ですが、GDP成長への寄与度として使っている人もいます。
 それはそれで別に構わないのですが、もしも成長への外需(純輸出)の寄与度を「外需依存度」と定義するならば、少なくとも今の日本は外需依存国ではありませんし、「日本の外需依存度は高い」とは口が裂けても言えないことになります。
 なぜならば2008年のGDPにおいて、外需は成長に全く寄与していないどころか、逆に成長の足を引っ張っている有様だからです。例えば08年第三四半期を見ると、
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe083-2/rhikaku.pdf
 「財貨・サービスの純輸出 成長寄与度⇒マイナス0.2%
 また、2008年第1四半期から第3四半期までの純輸出の額を見てみましょう。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe083-2/gaku-mg0832.csv
 2008年Q1 1兆5769億円
 2008年Q2 4450億円
 2008年Q3 ▲4450億円
 純輸出の成長率を対前期比で見ると、2008年Q1が-25%、Q2が-72%、Q3が-200%となります。
 対前年比の成長率で見ても、2008年Q1が-28%、Q2が-76%、Q3が-118%となります。
 少なくとも2008年は外需(純輸出)は全く成長に寄与していないわけです。よって2008年は外需依存度を「輸出対GDP比率」で捉えようが、「GDP成長に対する外需の寄与度」で捉えようが、両方とも「嘘」ということになります。
 恐らく、元々は外需依存度を本来の意味「輸出対GDP比率」で使っていたのが、実は日本の外需依存度が他国に比べるとそれほど高くない、むしろ低いという事実が広まってきて、困り果てた日経新聞などが「外需依存度は、GDP成長に対する外需の寄与度で使っているんだ」と、定義変更にトライしたのではないでしょうか。ところが、その定義の場合でも2008年には「日本は外需依存度が高い」は明確に、もうこれ以上無いほどに明確に「嘘」「出鱈目」ということになります。
 日経新聞は昨年末時点でさえ、「日本の外需依存度は高い」を繰り返していたので、一切言い逃れが不可能なレベルのミスリードと言うことになりますね。
 ちなみに、色々調べると外需依存度を「純輸出対GDP比率」で定義している人もいます。まあ、その定義であっても日本の外需依存度は(他国と比較して)無茶苦茶低いわけなんですけどね。
 例えば日本の外需(純輸出)が±0になると、日本の名目GDPは2%減ります。
 それに対し、中国でもしも同じことが起きると、GDPの9%が消滅することになります。
 さて、外国の需要に頼らなければGDPを維持できない、外需依存国はどちらでしょうか。

インタビュー:日本は内需拡大への改革必要=三井住友FG社長
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-35768320090108
 三井住友フィナンシャルグループの北山禎介社長は、ロイターとのインタビューで、現在の世界経済は構造変化が進行しており、日本は早期に輸出主導型から内需主導型システムに転換する必要があるとの考えを示した。
 金融機関もその前提を踏まえてビジネスモデルを再構築する必要があるとし、2009年は将来の成長戦略のための布石を打つ年になると位置付けた。
 また、08年4―12月期業績は計画の範囲内で推移しており、09年3月期業績予想を変更する状況ではないと説明。ただ、与信関係費用は通期想定の3700億円から若干上振れる見通しとした。
 インタビューの一問一答は以下の通り。
 ――世界経済の動向をどうみるか。
 「米国の住宅市場の先物価格を見ると、今は2010年の秋が底値だ。4カ月前は10年6月ぐらいが底値だったことを考えると、逃げ水のように先に延びている。10年のどこかのタイミングで底値を打つのではないか。それを考えれば、09年中に株式マーケットは底を打つかもしれない」
 ――日本経済への影響は。
 「今回起こっていることは、非常に大きな構造変化だ。米国の経常収支の赤字を日本や産油国などの黒字国が埋めてきた。そのお金で大きくなった米国の消費バブルがはじけ、今後、米国は赤字を、日本などは黒字をそれぞれ減らさなくてはならない。米国に直接、あるいは中国経由で輸出をしてきた日本の産業構造が崩れる。スピード感を持って内需でけん引できる経済構造を作り上げなければならない。構造改革の挑戦状を日本は突きつけられている」(後略)』

 ようやくこの手の声が、真っ当な内需拡大論が、日本の大手企業から聞こえてくるようになりました。一年前は「日本は円高、内需拡大戦略に転換せよ!」なんて言っていたのは、自分以外にはほとんど記憶がなく、非常に寂しかった印象を覚えています。
 あんまり書くと、またネタばれになってしまうので控えめにしますが、アメリカ人がホームエクイティローンなどで借金(要は将来の所得の先食い)をしてくれる需要拡大期に、日本は(アメリカにマネーを還流させることで)円安が続いていたわけです。これはもはや、輸出企業にとっては天国のような状況だった違いないのです。
 その分、日本国民や国内の中小企業は円安で購買力を奪われ、寂しい思いを続けていました。
 恐らくこの構造が輸出企業にとってあまりにも心地が良いので、冒頭の「日本は外需依存国家」伝説に繋がったのではないでしょうか。
 
 ところで「日本は内需拡大へ」とか書くと、また「少子化で内需縮小がどうのこうの」と言ってくる人がいると思いますので、予め書いておきます。世界には人口が毎年数十万人規模で減少していながら、ここ数年、GDPが毎年5%を超える経済成長をしている国があるのですよ。しかも内需の成長中心で。(さて、どこでしょう?)
 別にその国の真似をする必要はありませんし、日本とは国家のモデルが全く違うので、そもそも真似ることはできませんが、要は最初から「○×だから、ダメ」と決めつけるべきではないということです。きちんと情報・データを集め、分析し、事例を調べ、戦略代替案を幾つも検討した後ならともかく、当初から「どうせダメだから」と勝手に思いこみ、トライもしない人には、何かを成し遂げるのは難しいと思います。
 どうなるかではなく、どうするかなのですよ、結局は。
 
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