三橋貴明診断士事務所を開設しました。お仕事のご依頼はこちらから http://takaaki-mitsuhashi.com/
 Voice3月号に、筆者(紙媒体)初のシミュラフィクション「1ドル70円台の日本経済」が掲載されています。
 http://www.amazon.co.jp/dp/B001QCGI1Q/
 また、本シミュラフィクションをお読み頂いた方は、是非とも以下のPHPのメールアドレスまで、感想を送って下さいますようお願いいたします。
PHP研究所Voice編集部 voice@php.co.jp

 本日のタイトル「2007年7月9日を振り返って」ですが、意味がお分かりになられた方はいらっしゃいますでしょうか。いたらいたで、滅茶苦茶怖いのですが、実は2007年7月9日は韓国ウォンが、対日本円で(アジア通貨危機後の)最高値をつけた日なのです。

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_16.html#JPYKRW20090220
 2007年7月9日 100円=744.7ウォン ⇒2009年2月20日 100円=1600ウォン 
 
 およそ一年半で、韓国ウォンは対日本円で半分以下の価値に落ち込んでしまったのでした。逆の言い方をすると、日本円が対韓国ウォンで二倍(正確には2.15倍)に価値が上昇したということになります。
 韓国人売春婦が日本の新大久保や鶯谷、あるいは大塚で「お仕事」に従事し1万円稼いだとき、2007年夏のレートでは7万4470ウォンでした。これが今や16万ウォン強になってしまうわけです。
 韓国でワーキングプアを表現する際に「88万ウォン世代」という言葉があります。要は韓国大卒の非正規労働者の月給がこのくらい(日本円だと5万5000円)だという目安なのですが、韓国人売春婦が日本で仕事をすると、下手をすると一日で稼げてしまう額なのです。
 為替レートとは、かくも恐ろしきものです。
 まあ、それ以前に韓国は四年制大卒の正規雇用就職率が48%なわけで、為替レート以前の問題なのですが。

 さて、以前からわたしは韓国がアジア通貨危機に急速に経済が回復した理由として、以下三つを上げていました。

(1) 極度のウォン安
(2) 資源安(資源バブルが崩壊した現在よりも安かったのです)
(3) 世界主要国、特にアメリカの需要拡大

 しかし、正しくはもう一つあったことに気がつき、扶桑社から出る新作「崩壊する世界 繁栄する日本 -「国家モデル論」から解き明かす」では以下を追加しています。

(4) 日本からの資本財購入を可能とするレベルの円安

 ITバブル崩壊後、FRBは利下げを繰り返し、不動産バブルを煽ることで不況回避を狙いました。FRBの狙いは成功し、逆にバブルが行き過ぎたことで現在の大混乱を引き起こしたことはご存知の通りですが、FRBがFF金利を引き下げた結果、日米金利差が1%にまで縮まった時期がありました。
 日米金利差1%では、キャリートレードが成り立たず、為替レートは一気に1ドル100円に近づきました。この時期にすんなりと円高・ドル安に振れていれば、この後の展開は相当に違ったと思うのですが、日本銀行は03年及び04年に大々的な為替介入を行い、結果、ドルは反発しました。(円安になりました)
 日銀が為替介入をしたのは、別に韓国のためでも何でもないのですが、円が下落し資本財のウォン建価格が下落したことは、韓国の輸出企業を相当に助けたことは間違いありません。
 現在を見ると、(1)及び(2)の条件は回復しつつありますが、逆に(3)と(4)が全く望み薄の状況になっています。(3)(4)が成立しないということは、韓国は需要縮小期でも競争力を保てる製品を、日本からの資本財の輸入なしで生産しなければならないということになります。
 別にこれが不可能だと断言する気はないのですが、どう考えてもある程度の歳月を必要とする話です。
 要するに、韓国は朴正煕以来の「技術・資本財は日本頼み。ウォン安・外需依存で成長する」という国家のモデルを、大々的に変革しなければならないのです。一年や二年でできるわけがありません。
 韓国経済の現在の危機(破綻だけは通貨スワップで何とか先延ばしていますが)は、同国の構造問題に立脚しているわけです。しかし、韓国のメディアの以下のような記事を見ると、「あ、こりゃ絶望だな」と肩をすくめたくなるわけです。

東欧発の「為替台風」、韓国を直撃(上) -ウォンの対ドル相場、再び1500ウォン割れ-
http://www.chosunonline.com/news/20090221000008
 東欧各国が国家デフォルト(債務不履行)の危機に追い込まれたことで、国際的な金融不安が広がり、韓国の外国為替市場が再び動揺している。(後略)』

 別に韓国の貿易赤字が異様に少なく、2008年は貿易赤字になってしまったのは、東欧のせいでも、世界経済のせいでもないでしょう。
 韓国の対日貿易赤字が過剰に多く、08年は300億ドルを超えてしまったのも、東欧のせいでも、世界経済のせいでもないでしょう。
 韓国が対外純債務国に転落し、純債務額が増加しているのも、東欧のせいでもなければ、世界経済のせいでもありません。
 とにかく韓国は、内部環境に問題を抱えている故に、外部環境の変化に対応できていないのを、単純に「外部環境のせいだ!」と責任転嫁を図るのが大好きです。と言うか、それ以外の論調をわたしはあまり見たことがありません。
 外部環境の変化とは、韓国にはどうにもならない変化です。外部環境の変化で危機に陥ったならば、それに対応できるように内部環境を変化させるしかないのです。
 同じことが、日本のマスメディアや似非経済評論家にも言えます。
 主要国の金融機関が不良債権を抱え、通貨の信用が低下した結果、対円で下落するのも、新興経済諸国からのレパトリで各国の通貨が暴落しているのも、これは日本にとっては外部環境です。つまり、どうにもならない要因なのです。
 円高で日本の輸出製造業が厳しくなったからといって、「円高のせいで日本経済は破綻だ!」と叫ぶのは、こりゃ韓国と同じです。まともな企業や国、いやまともな人間であれば、外部環境の変化を受け入れた上で、それに対応する戦略を構築するでしょう。
 自分にどうにもならない外部環境を取り上げ、「外部環境変化のせいで、ダメなんだ~!」と言ったところで、別に外部環境が自分に都合の良いように変わるわけではないのです。
 
 ところで、中川氏が財務相を辞任を切っ掛けに、日本円が少し安くなり、日本のCDSが上昇しました。新聞やテレビなどの日本のマスメディアは、自ら中川氏を辞任に追い込んでおきながら、「今の円安は株価上昇を伴わない『悪い円安だ』。日本経済はやっぱり破綻だ、ざまあ見ろ!」系の論調で報道を繰り返しています。
 心底から吐き気がしますが、マスメディアが根っこから腐っているのは、これは日本の内部環境です。つまり、日本人に何とかできる問題なのです。そして、もしもマスメディアの腐敗により日本が本当に破綻したとしたら、これは間違いなく我々一人一人の責任です。誰のせいにもできません。
 
 というわけで、できることからやるだけです。為替レートの変動という外部環境の変化には、それなりの戦略を立て、実行する。内部環境のマスメディアの問題は、口コミ、インターネットなどを駆使して多くの日本人に真の情報を伝え、マスメディアのアキレス腱である広告主を利用する、すなわちビジネスの力でマスメディアを追い込めば良いのです。
 十年後とは言いません。五年後、三年後であっても、我々日本人一人一人がどのように動くかで、未来は大きく変わってくるのです。
 2007年7月9日。一年半後に韓国ウォンが対日本円で半分以下の価値になると予想した人など、わたしを含めて誰一人としていなかったのです。

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