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SPA2月10日号にインタビュー記事が掲載されています。「今週の演説 日米両首脳」(P4です。)
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 読者のお一人TN様からの投稿です。
 中央公論2009年2月号 http://www.chuko.co.jp/koron/  に掲載された熊野英生氏の寄稿記事「新興国カジノ経済の一斉崩壊が始まった」が大変面白いということで、ご紹介いただいたのですが、確かに面白いです。と言うよりも、前半部が扶桑社さんから発売予定の「国家のモデル」に非常に似ています。取り上げている国も、中国、アイスランド、スペイン、そして英国と、まんま同じです。(「新興国カジノ~」では、さらに東欧も取り上げられています。) 特に低金利の円建融資を世界中に供給した日本の役割と、日本から円キャリーマネーを借り入れた国の今後など、大変面白かったです。
 ※扶桑社の新作のタイトルは正しくは『崩壊する世界 繁栄する日本 ~「国家モデル論」から解き明かす~』ですが、長いので当ブログでは今後も「国家のモデル」と略して呼ばせて頂きます。

 寄稿記事自体は非常に長いのですが、最後のところだけご紹介致します。

沈んでいくカジノ経済
 9.11テロ事件以降の世界経済は、平均5%の高成長を遂げてきた。その内訳は、寄与度の七~八割を占めていた日米欧がここ数年は四割に地盤沈下し、急速に新興国経済のほうに移っている。この新興国の高成長が起こった原因をどう理解すべきだろうか。
 経済学の教科書には、経済成長は労働・資本・技術という三つの源泉の内、いずれかが貢献してもたらされるとある。この説明だけでは、ここ数年で起こったバブルと高成長のメカニズムをうまく描写できない。多くの新興国では、先進国から流入した投資マネーが、国内の購買力に変わって総需要を膨らませた。資本や技術の増加は、マネーが投資にすりかわって事後的に配分された行き先を示している。高度成長との因果関係を示すものではない。
 マネー主導の高成長を考えるとき、一例として日本から羨望の的になっていたドバイの繁栄をみてみよう。この街の繁栄は、資本投入と技術革新で支えられているわけではない。インフラ建設に携わったインド、パキスタンの出稼ぎ労働者の生産性によって支えられているわけでもない。周辺国のオイルマネーが、ドバイが提供する巨大インフラ利用に落ちてくることで成り立つビジネスモデルである。巨大インフラが富を稼ぎ続けられるかどうかは、オイルマネーの流入に依存している。
 巨大マネーが富を増やし続けられるかどうかは解けない難題である。多くの場合、資金流入を起点とした経済発展は、自国の労働生産性を引き上げるだけではなく、資産取引に流れてしまう。それがバブルに化けたとき、持続的な労働生産性上昇が阻害されて、経済成長の安定性が失われてしまう。(中略)
 資金流入が活発化する経済を正常に運営するには、金融政策がマネーの総量を過剰にしないように、金利を引き上げて流動性吸収を適切なタイミングで行うことが重要である。ところが巨大資本移動が当たり前になった現代においては、金融政策の理論も歪んでしまった。(中略)
 今後数年間の世界経済は、これまでに拡張した過剰信用や不動産資産の圧縮・償却のために購買力を奪われるだろう。日本の企業・金融機関がバランスシート調整に苦しんだ十五年間の再現である。欧米・中国政府はそうならないように、財政悪化を顧みず、一気に総需要の注入を行おうとしている。その帰結は、政府債務の増大を通じてドルなど通貨価値の下落かもしれない。筆者は、その痛みを解消しようとするときの危険は、どこかで姿を変えたバブル経済が再燃することだと考える。それを防ぐには、政府や中央銀行が、資産バブルを抑止するための新しい考え方を早く確立することにつきる。』

 ここ数年バブル景気に沸いていた国々(要するに世界のほとんどの国々)は、際限なくマネーが海外から流入してくることを前提に繁栄を謳歌していたわけです。別に各国の生産性が上がったわけでも、技術が進歩したわけでもなく、バブル目指してお金が流れ込むことで総需要が拡大していたわけですね。そういう意味で、ここ数年のバブルと80年代の日本のバブルには、一つ決定的な差があります。
 日本のバブルが好景気(にも関わらず日銀が金融緩和を行ったため)ゆえにバブルが発生したのに対し、今回のバブルはまず「マネー」ありきで、それが流れ込みバブルを形成することで、各国が好景気になったわけです。順番が違うわけですね。
 分かりやすい書き方をすると、日本のバブルは確固としたファンダメンタルの上にバブルが積み重なったのに対し、今回のバブルはマネーが次々に流れ込むことでバブルが創られてしまったわけです。つまり、バブルが解消された後に、残るものが違うわけですね。
 日本のバブルは確かに破綻しましたが、別にファンダメンタルが、異なる言い方をすれば付加価値を稼ぐ力が消えたわけではないのです。企業や家計が借金恐怖症に陥り、フロー(GDP)が高まらないという問題は抱えましたが、別に経済基盤や国家自体が崩壊するわけではありませんでした。
 しかし、今回のバブルの場合は、そうはいきません。特に新興経済諸国のバブルが崩壊し、マネーが引き上げられた後に何が残されるでしょうか。
 実は、何もないのです。新興経済諸国(恐らく英国、アイスランド、スペインなどの先進諸国も含む)は経済基盤が強固で、景気が良い故にバブルになっていたわけではなく、何もないところに膨大なお金が注ぎ込まれることでバブルになり、結果的に好景気になっていたわけですから。
 そういう意味で、最近辞意を表明したアイスランドのハーデ首相が、「アイスランドは国家破綻の危険さえある」と発言したのは、正しいのです。アイスランド経済の基盤となっていた海外マネーが引き上げられた結果、アイスランドに残された産業は、元々の基盤産業であった漁業しかないわけです。
 あ、あと膨大な対外債務。借金の山は残されました。
 元々、漁業を産業のメインに据えていた時代のアイスランドは、貧国として有名でした。どだい漁業一本で国民を富ませるなど、無理な相談なのです。世界的な需要が激減している現在は、特にそうでしょう。
 しかもかつてとは異なり、現在のアイスランドには、その人口から考えると天文学的な規模にまで積み上がった対外債務が残されています。率直に言って、どうにもならないでしょう。
 もう一つ、熊野氏の寄稿記事には重要なポイントがあります。
 それは、巨大マネーが自由自在に各国間を移動する状況では、これまでの常識であった金融政策では対応できないのではないかという、以前から何度か書いている疑問です。すなわち、バブルを防ぐことを目的にて、国内の過剰流動性を抑えるために中央銀行が金利を引き上げると、それが却って海外マネーを呼び込んで、バブルを悪化させるのではないか、というジレンマです。
 日本のデフレは長く続いていますが、この期間は日銀がゼロ金利政策を採っている時期と一致します。
 ひょっとして、デフレだからゼロ金利にしているのではなく、ゼロ金利にしているから国内マネーが海外に流出し(円キャリー!ですね)、結果的にデフレになっているのではないか、と以前から疑問に思っていたのです。
 逆に日銀が利上げをして海外マネーを呼び込めば、資産インフレが生じてデフレが解消されるのではないでしょうか。
 景気を過熱させたいのであれば、普通は金融緩和をするでしょう。しかし世界にマネーが溢れ、自由自在に動ける環境がある以上、むしろ利上げしてマネーを呼び込んでバブルを創ってしまう方が、容易に景気を過熱させることができるのではないでしょうか。
 少なくとも、ここ数年バブル景気に沸いた欧米や新興経済諸国は、高金利ゆえに資産バブルが発生し、バブルゆえに好景気だったわけです。
 現在、日本など一部の国を除き、ことごとくバブルが崩壊し、揃ってバランスシート不況に陥ろうとしています。それであれば、逆に相対的にファンダメンタルがしっかりしている日本が金利を引き上げ、マネーを呼び込むことでバブル景気になり、総需要を膨らませることで世界各国の供給を引き受ける。
 世界経済のためには、こんな考え方もありなのではないか、などと思っている次第です。

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