三橋貴明診断士事務所を開設しました。お仕事のご依頼はこちらから http://takaaki-mitsuhashi.com/
SPA 3月17日号(P114)に「緊急出版 『さらば日本悲観論』世界経済崩壊でも日本が繁栄するワケ」が掲載されています。
田植え祭まであと二日前!
崩壊する世界 繁栄する日本 「国家モデル論から解き明かす」いよいよ明日発売!
http://www.amazon.co.jp/dp/4594059015/

 「輸出バブルの消滅」シリーズで、中国のGDPの状況を書こうと思って資料探してみたら、驚くべき事実に(今更ながら)突き当たりました。

■中国は実質GDPの詳細どころか、全体の実数値さえ発表していない!
■中国の四半期ベースの実質GDP成長率は、対前年同期比のみで、対前期比の数字は発表していない!
■今年の1月15日に中国は唐突に「実は、07年の実質GDP成長率は13%だった!ドイツを抜いたアル!」と発表し、「名目GDP」の実数値と共に報道したが、やっぱり実質GDPの実数値は明らかにしていない!

中国、ドイツを抜き世界3位の経済大国に
http://j.people.com.cn/94476/6574730.html
 国家統計局は14日、07年の国内総生産(GDP)の伸びを1.1ポイント引き上げ13%に上方修正した。これは中国がドイツを抜いて世界3位の経済大国になったことを意味する。07年のGDPの名目総額は最終的に25兆7306億元となった。この修正により、中独両国のいずれが世界3位の経済大国かの「決着」がついた。「東方網」が伝えた。(後略)』

 結論⇒すみません、中国の実質GDPを日独韓と比較するのは、無理です。何しろ、輸出や個人消費の明細どころか、全体の数字さえ明らかにされていませんので。 m(_ _)m
 中国の実質GDPの「対前年同期比」成長率のまとめは、以下の通りです。

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_16.html#ChinaRealGDP

 しかし驚きました。
 筆者はこれまで中国の名目GDPの数値は結構扱っていたのですが、実質GDPは成長率以外はあまり気にしなかったので、気がつきませんでした。中国が実質GDPの実数値や対前期比成長率を公表しない理由は、以下の通りと推測しています。

■GDPデフレータをいじることで、実質GDPの成長率を好きなように変更できる。

 過去の名目GDPの実数値をいじるには、色々と理屈をつけなければなりませんが(実は、サービス業の生産高をきちんとカウントしていなかった、というのは一回やりました!)、実質GDPはデフレータを「えいっ!」と動かすことで、数値を自由自在に変更させることができます。もっとも、実数値を発表すると海外から突っ込まれるのが目に見えているので(そのGDPデフレータの根拠は何だ、とか何とか)、成長率だけを上方修正するわけです。
 また、対前期比の実質GDP成長率を発表しないのは、上記のように適当に数値を修正しているため、辻褄が合わない箇所が出てしまうからだと思います。
 しかし、最近の中国が対前期比の実質GDP成長率を発表しないのは、明らかに別の理由があるようにも思えます。

『国際経済学者:中国のGDP伸び率はほぼ0%近い、政府は中国経済の実態を隠蔽
http://jp.epochtimes.com/jp/2009/02/html/d16341.html
 VOAによると、中国政府がこのほど発表した08年第4四半期の国内総生産(GDP)伸び率について、一部のエコノミストは政治的および政権安定化を図る目的があり、実際のGDP伸び率は年率で約0%から1・5%と前期比で大きく下落したと指摘する。 
 中国国家統計局は1月22日、08年第4四半期の国内総生産(GDP)の伸び率が年率で前年比6・8%となったと発表した。中国の温家宝首相はこのほど、ヨッローパ諸国を訪問した際、08年第4四半期のGDP伸び率が6・8%になったことは世界に「自信、勇気と希望」を与えたと述べた。(中略)
 中国共産党政権がこのほど08年第4四半期のGDPは07年第4四半期と比べ6・8%増となったと発表したことについて、AP通信社は2月6日、米国や日本などの先進国は第3四半期と前期比でGDP伸び率を計算するが、しかし中国のように去年同期比でGDP伸び率を算出することはすでに時代遅れであり、去年同期比で算出したGDPデータは中国経済の景気後退の実態を隠すものだ、と指摘した。
 イギリスのスタンダードチャータード銀行の試算によると、08年第3四半期と比べ、中国08年第4四半期のGDP伸び率は年率に換算すると約1%。モルガン・スタンレー社は1・5%で、メリルリンチ社は0%に近いと試算した。(後略)』

 要するに、中国の実質GDPは前四半期(08年10月-12月期)から対前期比でゼロ成長に陥っている可能性が極めて高いわけです。ちなみに、これまで筆者が「輸出バブルの消滅」で検証してきた日本やドイツ、韓国のGDPは、全て対前期比の実質GDP成長率です。中国はこの実質GDP成長率も、実数値も公表していないのです。
 三カ国の対前期比実質GDP成長率は、それぞれ日本(-3.2%)、ドイツ(-2.1%)、韓国(-5.6%)でした。(日本の数値は修正値でちょびっと上方修正されました。)
 果たして中国の対前期比実質GDP成長率はどの程度なのか。上記記事に載っている予想値は年率換算なので、純粋な前期比の数値に直すと、スタンダード・チャータードが約0.25%、モルガン・スタンレーが0.4%、メリルリンチが限りなくゼロ成長に近いと予想しているようですね。
 当ブログと同じく人気ブログランキングの「社会・経済ニュース」にエントリーしている「経済ニュースゼミ」さんは、中国の前四半期の実質GDP成長率は、対前期比で-0.65%、年率換算で-2.6%ではないかと推測されています。 http://blog.livedoor.jp/columnistseiji/archives/50800143.html
 ゼロ成長と言われようが、マイナス成長と言われようが、数字を公表していない以上、中国当局は何も文句が言えないでしょう。まこと、中国の最悪の輸出品(※注:数字)は、文字通り「最悪」です。 
 
 さて、中国の08年第4四半期実質成長率(対前期比)がゼロ成長、もしくはマイナス成長と仮定しましょう。ご存知、中国は輸出対GDP比率が四割に近い、正真正銘の外需依存国です。さらに産業別のGDPを見ても、何と中国は製造業が55%ものシェアを占めます。
 08年11月の中国の輸出は対前年同月比で2.2%減少、12月が2.8%の減少になりました。(10月は増加でした。)つまり、中国の前四半期の輸出は、必ずしも「崩壊」という状況ではなかったのです。にも関わらず、中国の実質GDPは対前期比でゼロ成長、もしくはマイナス成長に落ち込んでしまったわけです。
 今年の中国の輸出の状況はどうなっているでしょうか。

■09年1月 対前年同月比でマイナス17.5%
■09年2月 対前年同月比でマイナス25.7%

 中国の今四半期の実質GDP成長率は、大変な状況になりそうです。当局はどうせ適当な数字(の一部のみ)を報道するだけでしょうが、失業者の爆発的な増大だけは隠しようがありません。
 この状況で「中国は世界経済を救う」などと妄想を語っている人は、冗談抜きで小学一年生からやり直すべきでしょう。

 中国経済、マジでwktk!と思った人は↓このリンクをクリックを。
    http://blog.with2.net/in.php?636493  
 ※人気ブログランキングの「ニュース部門」で一位を継続中です。皆様のご協力に御礼申し上げます。m(_ _)m 

 新世紀のビッグブラザーへ ホームページは↓こちらです。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/index.htm
 新世紀のビッグブラザーへ blog一覧は↓こちらです。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/blog.html
 関連blogへのリンク一覧は↓こちらです。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/link.html