三橋貴明診断士事務所を開設しました。お仕事のご依頼はこちらから http://takaaki-mitsuhashi.com/
SPA2月17日号にインタビュー記事が掲載されています。「今週の無軌道 ロバート・ムガベ」(P5です。)

 Voice3月号に、筆者(紙媒体)初のシミュラフィクション「1ドル70円台の日本経済」が掲載されています。
 http://www.amazon.co.jp/dp/B001QCGI1Q/
 また、本シミュラフィクションをお読み頂いた方は、是非とも以下のPHPのメールアドレスまで、感想を送って下さいますようお願いいたします。
PHP研究所Voice編集部 voice@php.co.jp

 最近、固い話題ばかり続いていましたので、本日は柔らかめに。
 いわゆるメディアの「中の人たち」でも、現在のメディア産業がこのまま衰退していくことは認識しています。(まあ、数値データを見れば誰でも分かるのですが)しかし、「メディアという機能」がなくなるとは誰も考えておらず、以前書いたようにわたしもそれには同意します。
 先日、日本が尖閣諸島周辺に海上保安庁がヘリコプター搭載の大型巡視船を常時配置する体制に切り替え、両国の間で
「事実ならば中国の領土主権への侵犯に当たる。日本側がこの問題で行動をエスカレートさせるならば、中国側は強い反応を出さざるを得ない」
「尖閣諸島は日本の領土であり、中国側の申し入れは成り立たない」
 というやり取りがありました。これを共同通信風の記事に仕立て上げると、

『日本の日本の海上保安庁がヘリコプター搭載の巡視船を東シナ海の尖閣諸島(中国名・釣魚島)に常時配置した問題について、中国側は「(巡視船常置が)事実ならば中国の領土主権への侵犯に当たる。日本側がこの問題で行動をエスカレートさせるならば、中国側は強い反応を出さざるを得ない」と述べ、日本側に冷静な対応を求めた
 それに対し日本サイドは「「尖閣諸島は日本の領土であり、中国側の申し入れは成り立たない」と反論している。
 中国側の反発は必至だ。

 こんな感じになるでしょうか。あたかも「これは『日本側の問題ですよ~』『このままだと中国様がお怒りになりますよ~』と、中国共産党の機関紙のごとく日本に非があると強調し、日本人の「加害者意識(悪いことしているんだなあ・・・、日本は・・・)」を高めていくわけです。
 新しい時代のメディアでは、上記『共同通信風』の記事の、どの部分が不要だと思いますか。わたしは「全部」いらないと思います。
 外務省のWebページに、
『日本政府は尖閣諸島周辺に海上保安庁がヘリコプター搭載の大型巡視船を常時配置する体制を構築することを決定した。これに対し中国当局は、
「事実ならば中国の領土主権への侵犯に当たる。日本側がこの問題で行動をエスカレートさせるならば、中国側は強い反応を出さざるを得ない」
 とコメントし、対する日本側は、
日「尖閣諸島は日本の領土であり、中国側の申し入れは成り立たない」
 と回答した。』
 という事実のみを明記した報道発表があれば充分です。この件について、各日本国民がどう思うのか、それは日本国民それぞれが考え、判断するべきであって、共同通信の一記者の「個人的な感想」は要らないのです。
 しかし、もしもメディアの記者が一般の広報では知りえない情報を、取材などにより得ることができた場合はどうでしょうか。その場合は、その情報を「記者の個人的な感想」抜きでそのまま報道すれば良いのです。一般の人々と、情報ソースのチャネルとしての役割を果たすことで、メディアは今後も生き残っていくでしょう。
 わたしが毎日変態新聞の中で読むに値すると思うのは、「首相VS記者団」だけです。「首相VS記者団」は麻生首相と記者たちの生のやり取りを、そのまま掲載しているだけですが、それ故に変態新聞社の記事の中で唯一価値を持つと思っています。

http://mainichi.jp/select/seiji/primeminister/index.html

 一般人が首相にくっついて、コメントを録音して書き起こすのは中々難儀ですので、それを代行してくれる機能ということで、メディアに「付加価値」が生じているわけです。
 別に対首相に限らず、企業のトップや行政の要人など、社会の「要」になる人々と一般国民を「瑕疵なく」繋ぐチャネルとしては、今後もメディアは価値を持ち続けるでしょう。
 あるいは、社会の「要」が隠したがる情報をうまく引き出すことも、今後のメディアの重要な役割だと思います。しかし、隠されていた情報を報道する際に、記者の個人的な感想は要らないのです。その「要」が情報を隠していた件について国民がどう思っていたか、それは国民が「話し合って」判断すれば良いのです。
 今や、あらゆる情報について万を超す一個人が、互いに情報や意見を交換できる場が存在しているわけですから。

後編に続く
http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/24465734.html