コメントで何人の方からご指摘頂いていますが、日本政府の債務について総負債・純負債(わたしの言う、粗債務・純債務)を取り違える財務省プロパガンダについて発言した政治家は、恐らく麻生幹事長が始めてだと思います。

<麻生自民幹事長>財政再建優先論に反論…大阪での講演
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080807-00000092-mai-pol
 自民党の麻生太郎幹事長は7日、大阪市で講演し、国・地方を合わせた財政赤字に関して「800兆円の借金があって大変だという話が出回っているが、あれは総負債だ。総負債と、(資産を含めた)純負債を取り違えるかのごとき話は、不必要に世の中の不安をあおっている」と述べた。麻生氏は財政再建より景気対策を優先させるべきだと主張してきており、政府・与党内にある財政再建が喫緊の課題との意見に強く反論した格好だ。
 麻生氏は「日本は『悪い、悪い』という話が多すぎる」と指摘。「日本人にはいくらでも良いところがあるが、戦後60年間あまり評価の対象にされなかった。もっと自信を持ってやっていくことだ」と強調した。』
借金強調「不安あおる」=麻生自民幹事長
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080807-00000160-jij-pol
 自民党の麻生太郎幹事長は7日、大阪市内で講演し、国の財政に関し「『800兆円借金があって大変だ』というのが今一番出回っている話の一つだが、日本は資産もあり、収支は黒字だ。こういう話は不必要に世の中の不安をあおっている」と述べた。』

 麻生氏は確かに物事の本質を見抜く目を持っており、わたしが最も評価している政治家ですが、時々「この人は経済が苦手なのではないか」と思う時があります。麻生氏は自著の「とてつもない日本」において、所得収支と経常収支を混同していらっしゃいましたが(まあ、確かに国際収支はややこしいんですが)、今回の発言「日本は資産もあり、収支は黒字だ」も、日本政府の資産の話と、日本国の経常収支を混ぜてしまっているような気がします。経常収支は、主に日本の民間企業などの海外との経常的経済活動の収支ですから、日本政府の資産の話と並列に置いてはいけないと考えるのです。
 
 もちろん麻生氏の知識の緻密性はともかく、全体的な問題の捉え方は決して間違っていません。
 日本政府の資産規模や負債規模はどのような状況なのか、内閣府の国民経済計算の統計から引っ張ってきましたのでご覧下さい。ソースは内閣府の公式統計です。(リンク先参照)
 面倒なので、中央政府・地方政府は合算しました。そのため、政府の負債総額が例の800兆円より多くなっています。(地方政府分を追加してあるため
 データは残念ながら平成十八年までしか掲載されていないのですが、資産と負債の差額の大きさは、恐らく同年がピークです。(平成十九年以降の政府の金融負債増加のペースが落ちたため)

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_10.html#Shisanhusai01

 この数値から地方政府分の資産と負債を差し引くと、例の「政府の金融資産500兆円超」「政府の金融負債800兆円超」の数値になります。(時間のある人は、内閣府のソースで確認してみてください。)
 最新のデータですが、国の借金・金融資産(地方政府分を抜いてある)については、日本経済復活の会の「借金時計改良版」ですぐに確認できます(推定値ですが)。

http://www.tek.co.jp/p/debt_time.html

 これによると、日本政府の最新の負債額は841兆円、金融資産が548兆円、純債務額が293兆円というところですね。ちなみに、「何だやっぱり債務超過なんじゃないか!」などと言う無かれ。世界の主要国の中で、政府の金融資産が負債を上回っている国など、わたしの知る限りただの一国もありません。
 ちなみに、政府の金融資産の額がGDPに匹敵するほど莫大な国も、日本ただ一国を除いて他にはありません。
 先の内閣府のデータによると、平成18年の国の純債務(地方政府分を資産、負債から控除)は約302兆円。それほど劇的に減少しているわけでは無いですが、純債務は間違いなく減り続けています。理由は上にも書いたとおり、平成19年から政府の負債の増加ペースが落ちたためです。
 これまでに何度も述べてきたように、わたしは以下の全てが満たされている以上、日本政府の債務問題は解決に向かっていると考えています。(安心です、などという気は、さらさらありませんが)

純債務額が減少を続けている
粗債務がGDPに占める割合が減少を続けている

 細かい分析は、以下のエントリーを参考にしてください。

日本の財政は結局どうなのか?(上)
http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/11054539.html
日本の財政は結局どうなのか?(下) 前編
http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/11114354.html
日本の財政は結局どうなのか?(下) 後編
http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/11114651.html

 少なくとも一つだけ確実なのは、上記のようなデータを無視して、殊更に「日本政府の債務総額は800兆円は超えている!日本オワタ!」と煽り立てるメディアや評論家、それに消費税増税を目論む財務省は「卑怯者」であるということです。
 財務分析においては、貸借対照表の資産の部、負債の部を平等に扱い、分析するのが常識(と言うか、あまりに基本すぎて、留意点にすらならない)ですが、なぜ日本政府の財政問題の場合は、負債の部にしか目がいかないのでしょうか? まさか日本の財政問題を語るほど経済に秀でたメディアや評論家の皆さんが、財務分析の基本すら知らない無知で無能な人々なんて、そんなはずないですよね(笑

 いずれにしても、麻生氏のような政治家が出てきたことは、心強いことです。何しろわたしは07年6月発売の「本当はヤバイ!韓国経済」から上記の論を展開していましたが、今年の三月に発売された高橋洋一氏の「さらば、財務省」を読むまでは、同論を展開する書物を読んだことがありませんでした。ましてや政治家がこの手の発言をしてくれる時代になったとは・・・。

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