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 さて、日本の財政は結局どうなのか、の[下]でございます。長すぎて、前編後編に分かれてしまいました。

 財務省や日本のメディアが財政破綻を散々煽り立てていますが、そもそも「財政破綻」の定義とは何でしょうか?
 とりあえず、数字に弱いメディアが囃し立てている
「政府の負債増加」「国民一人当たりの借金増加」でないことは確かです。なぜならば、世界中の国々を見渡しても、政府の債務が増えていない国など殆ど無いからです。「増加」だけに注目するなら、年率何%なら駄目なのか、GDPが巨大な国と小さい国で、その%が同じでいいのか、金額には注目しなくてもいいのか、注目するなら幾ら以上が駄目で、幾ら以下は安全なのか、人口との関係はどうなのか、などなど、様々な要因について定義しなければならないはずですが、今までこの手の議論は聞いたことがありません。日本のメディアの論調は、ひたすら「債務が増えているから財政破綻!」です。幼稚園児ですか。
 また、財務省式に
「粗債務が対GDP比でxxx%以上だから、財政破綻」とやるなら、このxxxの数値が減少している今の日本は、財政破綻していない、あるいは順調に財政再建中ということになります。そもそも、このxxxの数値について、なぜxxx%だと財政破綻と言えるのか、論理的な説明を聞いたことがありません。100%なら駄目なのか、160%なら駄目なのか、何%なら安全なのか、論理に基づいた定義が必要ですし、当然ながら莫大な金融資産を政府が持つ国と、持たない国で、同じ%で比較していいのかという疑問も沸き起こります。

 財政破綻の簡単な定義の一つに「海外から借りた政府の債務」が外貨準備やGDPに比して相当な割合にまで高まったケース。これはさすがに財政破綻と呼んでも構わないとは思います(相当な割合が何%なのか、IMFかどこかに決めてもらう必要がありますが)。ただ、海外からの借入と十杷ひとからげに呼んでも、当然、短期と長期では問題の質が異なりますので、単純に「政府の対外債務対外貨準備高が何%以上は駄目!」と決めつけられるものでもありません。細かい定義が必要でしょう。
 日本の場合、何度も書いたように日本政府の債務の九割以上が国内債務、つまり日本国民からの借入になります。そのため、この外債絡みの定義は、いずれにしても日本政府には当てはまらないことになります。
 あるいは、国債の償還ができなくなった、つまりデフォルトしたら、これはさすがに間違いなく財政破綻でしょう。しかしこの定義に沿うと、国債をきちんと償還している日本は、財政破綻していない、という結論になってしまいます。

 わたし個人としては、財政破綻の正しい定義は以下になると考えています。

「政府の純債務額が増加し、かつ粗債務の対GDP比率が増加している」
 なぜ「考えている」になってしまうのかと言えば、最近まで日本の経済学者やメディアが、誰も日本政府のバランスシートに注目してこなかったため、粗債務の総額以外の論調を聞いたことがないからです。(まさかわたしが勝手に定義を決めるわけにもいきませんし)
 実は、それ以前に(信じがたいことに)
日本政府は(と言うか、財務省は)2005年まで、国のバランスシートを作成していませんでした。わたしや高橋洋一氏のデータがいずれも05年なのは、それ以前の日本政府のバランスシートが存在しないためでもあるのです。
 ちなみに、高橋氏によると、
財務省(当時は大蔵省)理財局が95年に日本国のバランスシートを作成しようとしたところ、省内の他部局から猛反発を受け、挫折したとのことです。反対理由は、何と「バランスシートを作ると、国の隠れ資産と隠れ負債が白日の下にさらされてしまい、我々(財務省)に都合が悪い」というものだったそうです。
 ・・・ふつふつと沸き起こる財務省に対する怒りは抑えて、財政破綻の定義について話を進めたいと思います。
 わたしがなぜ財政破綻を
「政府の純債務額が増加し、かつ粗債務の対GDP比率が増加している」と定義したのかと言えば、単純に企業の財務分析と同じコンセプトで考えているからです。(予め書いておきますが、「企業と国家を同じ土俵で比べるな!」と反駁する人は、企業と国家のどちらが破綻しやすいか、どちらが長期安定的か考えてみてください。一般の企業には、国民から強制的にお金を巻き上げる「徴税」という必殺技はありません。)
 例えば、ある企業が、幾ら毎年負債額が増加していたとしても、

(1) 負債も増えているが、それ以上に資産が増えている
(2) 負債が増えているが、それ以上に利益が増えていて、負債対利益の割合が減り続けている

 場合、企業が破綻に向かっているとは誰も考えないでしょう。(資産をオフバランス化し、バランスシートを圧縮してRoAを高めた方がいい、という議論は当然ありますが、それはまた別の話です)
 国家についても、

(1) 政府の債務は増えているが、それ以上に政府の金融資産が増えており、純債務額は減り続けている
(2) 政府の債務は増えているが、それ以上にGDPが増えており、政府債務対GDP比率が減り続けている
 
 場合、幾ら粗債務が増えていようとも、「財政破綻だ!」と主張するのは無理があるでしょう。
 (1)について更に突っ込んで考えると、例えば政府の金融資産の増加速度が、負債の増加速度を上回っているのであれば、政府はいざというときは金融資産を売り払い、負債を返済するという手段が使えるわけです。(日本の六百兆円もの金融資産の買い手がいるわけない!と思った人は、日本政府の八百兆円を上回る国債、つまり日本国民の債権について、一体日本政府以外の誰がこれほど巨額の円を借りれるのか、という疑問にも答えなければなりません)
 次に(2)ですが、たとえばプライマリーバランスが均衡した場合、政府債務の増加は国債などの金利のみになります。この場合、GDPの成長率が金利を上回っている限り、政府の債務対GDP比率は下落していきます。しかし、プライマリーバランスが均衡しなくとも、金利分を合わせた政府の債務の増加率を、GDP成長率が上回れば、政府の債務対GDP比率はやはり下落します。実は今の日本は、ちょうどこの状況(プライマリーバランスは均衡していないが、政府の債務対GDP比率が減っている状況)なのです。
 特にプライマリーバランスの均衡を目指すことに反対はしませんが、何か微妙に目標がずれているなあ、とも思います。なぜなら、たとえプライマリーバランスが均衡しても、金利がGPD成長率を上回っていれば、政府の債務対GDP比率は上昇してしまうからです。
 確信犯の財務省やメディアはともかく、日本の経済学者がなぜこの点(たとえプライマリーバランスが均衡しても、金利状況によっては、政府債務対GDP比率が上昇する可能性はある)に言及しないのか、不思議です。
 プライマリーバランスが均衡したとしても、日本政府の粗債務がGDP比率で増加していったら、これはむしろ財政破綻状態だと思うのですが。


(下)後編に続く
http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/11114651.html