三橋貴明診断士事務所を開設しました。お仕事のご依頼はこちらから http://takaaki-mitsuhashi.com/
 Voice3月号に、筆者(紙媒体)初のシミュラフィクション「1ドル70円台の日本経済」が掲載されています。
 http://www.amazon.co.jp/dp/B001QCGI1Q/
 また、本シミュラフィクションをお読み頂いた方は、是非とも以下のPHPのメールアドレスまで、感想を送って下さいますようお願いいたします。
PHP研究所Voice編集部 voice@php.co.jp

 「麻生内閣の国民対話 ~強く明るく これからの日本~」で内閣府が意見を募集しています。
http://www8.cao.go.jp/taiwa/theme20090219.html
 本ブログで知ったこと、気がついたことを参考に、経済対策、マスメディア対策などなど、応募して頂くと大変嬉しいです。
 参考↓第3弾「麻生太郎総理に質問! ・・・ 2009年2月10日 自民党広報は麻生太郎総理に直撃 (情報提供たかおん様 多謝!)
http://www.nicovideo.jp/watch/1235009786

 昨日の続きです。企業の財務分析を行う際は、多面的に指標を見ると書きました。例えば収益性、健全性、効率性、生産性などの面になります。(これだけではありませんが) 代表的な指標を上げておきますね。

収益性を測る指標:売上高対当期純利益率、売上高対営業利益率、自己資本利益率(いわゆるROE)、総資産利益率(いわゆるROA)
健全性を測る指標:流動比率、自己資本比率
効率性を測る指標:総資本回転率、売掛金回転期間
生産性を測る指標:売上高対人件費比率、付加価値比率

 これはあくまで企業の財務分析の際の指標で、当然ですが国家経済の場合は同じ指標は使えません。が、シンプルな効率性の指標などは参考になるかな、とも思います。
 マスメディアが大好きな「国(正しくは政府)の借金対GDP比率」にも、それなりに意味はあるのです。企業の効率性の指標風に言うと、「公的債務対GDP比率(注:命名三橋。以下同)」といった感じでしょうか。要は「公的債務額÷GDPx100%」なのですが、これが日本は160%だか170%に達しています。
 他主要国の「公的債務対GDP比率」は100%を下回っていますので、確かに日本の公的債務の効率性は低いと言えます。但し、だからといって「日本は財政破綻だ!」にはなりません。企業の財務分析にしても、効率性の一指標が悪いからといって「破綻しますね」になったりはしません。効率性が悪ければ、「じゃあ、効率性を改善する施策を打ちましょう」となるだけです。
 「公的債務対GDP比率」は日本の公的債務の効率性が悪い事を示しているに過ぎず、「財政破綻するかどうか?」を判断するには、健全性の視点で分析し、判断する必要があります。
 国家経済の場合は、政府が「紙幣発行権」を持っている以上、対内債務の償還不可で財政破綻などありえません。アルゼンチンにしてもロシアにしても、対外公的債務のデフォルトをしたわけであって、別に自国通貨建て国債の償還ができずに破綻したわけではないのです。
 健全性を見る場合の指標は、何になりますでしょうか。(あ、今更ですが、わたしは財務分析手法を国家経済に応用することを「模索」している途上なわけで、何事においても「○○です」などと断言する気は全くありません。)
 例えば、「純資産対GDP比率=純資産÷GDPx100%」あるいは「対外債務対GDP比率:対外債務÷GDPx100%」などになるでしょうか。あるいは、「対外公的債務対GDP比率=対外公的債務÷GDPx100%」が最も適切かも知れませんね。
 それ以前に、GDP(フロー)と国の債務(ストック)を比較し健全性を測るのが適切か、という疑問もありますが、とりあえずはこのまま話を進めます。
※「国家の純資産って、何だっけ?」となった方は、↓こちらで復習を。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_16.html#BSJP08
 事実上破綻したアイスランドは、対外債務がGDPの9倍(通貨暴落前のレートで)になっていました。すなわちGDP対 対外債務比率900%超です。
 日本の同数値は120%未満なので、日本よりもアイスランドの方が危険である事は誰でもわかります。しかし、この対外債務はあくまで「国家の対外債務」であり、アイスランド政府の対外公的債務とイコールではありません。
 実際、アイスランドは銀行がデフォルトになっていますが、政府のソブリン債は(まだ)デフォルトにはなっていません。アルゼンチン、ロシアの例のように、いわゆる「経済破綻」は政府の海外からの借り入れ、すなわち対外公的債務のデフォルトを意味します。
 また、日本の財政問題と同じように、アイスランドの対外債務は確かに巨額ですが、対外債権がゼロというわけでもありません。国家の財政問題に論じるときは、バランスシート全体で評価し、かつ対外債務と対内債務の問題を分別する必要があるわけです。
 アイスランド政府のソブリン債が、果たしてデフォルトするかどうか。真面目に分析すれば読めそうな気もしますが、今日の本題ではないのでここまでにしておきます。
 昨日と同じこと書くのも何ですが、公的債務、対外公的債務、デフォルトなどについて詳しく知りたい方には、廣宮氏の「国債を刷れ!」をお奨め致します。

国債を刷れ!「国の借金は税金で返せ」のウソ  廣宮孝信著(彩図社)
http://www.amazon.co.jp/dp/4883926788

後編に続く
http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/24678798.html