http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_01.html#kakukoku

 最近三ヶ月の各国の為替レートを、対ドルでまとめてみました。
 スイスフラン、日本円、オーストラリアドル、ユーロなどが軒並み対ドルで5%以上の上昇となっているのに対し、英国ポンド、南アフリカランド、そして韓国ウォンが下落状況になっています。
 特に韓国のウォン安は、実体経済のほうにも既に多大なる悪影響を与えています。韓国の貿易収支は昨年12月から(CIFベースで)赤字化していますが、原因は輸出の減少ではなく、輸入の増加によるものです。

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_01.html#BOPQ307-Q108

 この資源高の中、通貨安が韓国の経済にネガティブなインパクトを与えているのは、間違いありません。特に、外需依存度が日本の倍以上の韓国で、貿易収支が赤字というのは、なかなか洒落になりません。

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_02.html#GaijuIzon

 ちなみに、国内総生産は内需(消費+投資+政府支出)+ネットの外需で求められますが、このネット外需とは「貿易・サービス収支」を示します。韓国のサービス収支は赤字が恒常化していますので、この上、貿易収支まで赤字化すると、貿易・サービス収支が赤字化するということになります。(当たり前ですが)
 つまり、このままいくと韓国のネット外需が純輸入化してしまい、GDPの押し下げ要因になってしまうのです。
 別にアメリカやイギリスだって、貿易収支は赤字で、ネット外需がマイナスだから、韓国も大丈夫。などという理論はあり得ません。アメリカやイギリスは輸出対GDP比率が日本並に低く、そもそも外需依存国ではありません。真の意味で、内需が弱い外需依存国である韓国で、貿易収支が赤字化し、ネット外需がマイナスになってしまっているのは、さすがに異常事態だと考えます。

 この韓国の通貨安ですが、幾つか理由を考えてみます。
?韓国の政策金利が5%と、他の新興高金利国並には高くないから⇒しかし、この三ヶ月、アメリカは利下げを続けています。米韓の金利差は開き続けているにも関わらず、ウォンが対ドルで下げているのは、金利差では説明できません。しかも、韓国以上に高金利(約10%)の南アフリカのランドは、韓国ウォン以上に強烈に下げています。
 結局、サブプライム危機から始まった信用収縮が、高金利通貨国からの資金の引き上げをもたらしたようです。要するに、ここ二年ほどの韓国ウォンの上昇は、通貨バブルだったのです。
 朝日新聞などは、韓国が経済強国化しているので、株式と通貨の高騰が起きていると何度も報道し、韓国経済を褒め称えていましたが、今の状況をどう言い訳する気でしょうか?
?韓国の過剰な対外債務が、韓国への投資リスクを上昇させ、キャピタルフライトを招いた⇒これは無いことはないでしょうが、どちらかというと通貨安を促進した要因のような気がします。
?通貨安が韓国の対外債務のウォン建額面の上昇をもたらし、返済の際に、より多額のウォンのドル化が発生し、それが更にウォンの下落をもたらしている⇒もし本当にこの悪循環が起きているとすると、大変危険です。ウォン安がウォン安を引き起こすため、通貨当局が外貨準備を取り崩して防衛していかねばなりません。

 ちなみに、よく「ウォン安になると、韓国輸出企業が復活し、貿易黒字も復活する」などという意見を耳にしますが、これはナンセンスです。
 理由は、
?現状でも、韓国の輸出金額はそれなりの伸びを見せている。貿易収支の赤字化をもたらしたのは、輸出減少ではなく、輸入増加である。
?IMF以降の韓国輸出企業は、確かにウォン安のおかげで復活した。しかし、このときは原油価格が1バレル$20と、現在の五分の一!であった。
?韓国の原油消費に対する生産性は、日本の三分の一。ここに原油価格の高騰が来る上に、ウォン安で原油価格が上昇すると、当然ながら高生産性の国々に対する競争力が落ちる。
?IMF以降と異なり、韓国製品の主要市場であるアメリカの消費が落ち込みつつある。
などになります。
 原油だけではなく、日本の鉄鋼メーカなども資源高騰を受け、容赦なく生産財の値上げを行っています。この状況でウォン安になると、ただひたすら韓国の輸出企業のコストを押し上げるだけに終わるでしょう。

 韓国経済はいよいよ正念場を迎えたようです。