三橋貴明診断士事務所を開設しました。お仕事のご依頼はこちらから http://takaaki-mitsuhashi.com/
SPA12月30日号にインタビュー記事が掲載されています。(P6です。) http://spa.fusosha.co.jp/
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 新年早々、メディア凋落のニュースが立て続けに報道されています。まあ、基本はJ-Castですが、このこと自体が、2009年を象徴しているように思えます。ちなみに、わたしは2009年は、日本のマスメディアの「リセット」元年になると確信しています。
 アメリカや韓国では、いち早くネットメディアがレガシーメディアよりも社会に大きな影響を与える状況が進み、レガシーメディアの淘汰が始まっています。(果たしてNYTは生き残れるのでしょうか) 
 日本におけるマスメディアの凋落は、確かに捏造情報やミスリードを繰り返す、極めて質の悪いメディアの蔓延が理由の一つですが、それ以上に彼らレガシーメディアのビジネスモデル崩壊の方が、原因としては大きいでしょう。そしてビジネスモデルの崩壊である以上、例えば毎日変態新聞の朝比奈が退陣し、よりネットに迎合する経営者がトップについたところで、流れを変えることは不可能であるということを意味しているのです。
 既存の広告モデルが崩壊しつつあることもありますが、やはりレガシーメディアのモデル崩壊の最大のポイントは、情報の拡散性のスピードが劇的に上がったことと、及びそれに伴い消費者のニーズが多様化し、速報よりも分析にシフトしてきていることです。
 新聞の本来の意義は、文字通り「新しい聞」、つまり新しい情報を届ける事でした。ところがネットの発展により、重要なニュースは新聞よりも数時間、下手をすると数日も速くユーザの間に広まるようになり、「記者が書き⇒紙に印刷し⇒販売店が配る」このモデルでは太刀打ちできなくなったのです。
 ユーザにとっては既知の情報ばかりを、紙に印刷して配ったとしても、そんなものにお金を払う人はいません。しかしそれが、現在の新聞のビジネスモデルのそのものなのです。
 もう一つ、ユーザのニーズが多様化し、分析にシフトしている点ですが、情報化社会と言われてすでに久しく、現代社会では膨大な情報が駆け巡っています。そんな中で、一般の消費者は自分に必要な情報(のみ)と、その情報が自分にどのように有益かにまで踏み込んだ分析記事を強く欲しています。
 しかし現実には、新聞記者には、少なくとも消費者のニーズを満たすレベルの質を伴った分析は不可能なのです。なぜならば(これは実際に元某新聞の記者さんから聞いた話ですが)新聞記者はそれこそ社会で日々発生する、様々な事件や現象について追いかけ、記事を書かねばならず、深い分析など行う時間も無いし、そもそもその能力さえ持っていないのです(別にけなしているわけではありません。人間の能力には限界があって当たり前です)。
 要は専門性に欠けるわけですが、これは記者が一人の人間である以上、当たり前の話です。例えば日夜、新しい話題を追いかけ続ける新聞記者が、「ドル崩壊!」クラスの金融の細かいプロセスに突っ込んだ記事を書けるはずが無いです。時間的にも能力的にも無理でしょう。
 わたしは以前も書いたように、「メディア業界」が無くなるなんて、一度も思ったことはありません。メディアは新しいビジネスモデルを構築し、しっかりと生き残るでしょう。近々、消滅するのは、旧ビジネスモデルに固執しているレガシーメディアだけです。
 消費者のニーズを真正面から見据えれば、次世代メディアのビジネスモデルは何となく分かります。
 専門的な記事や分析はその道の専門家に任せ、それを巧みに結びつけ、デジタル速度で配布するモデルであれば、消費者はお金を払う価値を認めるでしょう。要するに、小さな(それこそブロガークラスの)メディアがネットワークで結び付けられ、互いの長所を活かして一つの「新聞」を作り上げるモデルです。そしてユーザ側は、自分が必要なコンテンツだけを選択し、ペイパーリードでお金を払うのです。
 韓国発のオーマイニュースは、新しいモデルという点で方向性は正しかったのですが、少なくとも日本のユーザは素人が書いた記者の記事にでお金を払うことはないでしょう。(オーマイニュースは広告モデルでしたが)ペイパーリードでお金を払うということは、コンテンツの筆者に継続性が無ければならず、次から次から登場する素人記者ではダメなのです。
 また、メディアのビジネスモデルが変化するに従い、これまでのように「情報を獲得する」行為も、記者の特権ではなくなっていくでしょう。アメリカではすでに、有名ブロガーがレガシーメディアの記者と区別されず、当局に対し質問をする機会を得ています。今後の日本でも、今までのような巨大なメディア企業のモデルではなく、より小さなメディア(しかも継続的に書き続ける、専門性が高いプロフェッショナルのメディア)の有機的な結合が、消費者の支持を獲得しえる有効なモデルになるのではないでしょうか。
 メディアのフラット化ですね。

 ところで、未来のメディアのモデルは置いておいて、日本の五大新聞と言える読売、朝日、毎日、産経、日経の五社も、ビジネスモデルが崩壊する中、それぞれ独特の対応を示していて、診断士としては大変興味深いです。
 ■ネット興隆に対し、合従連衡で乗り切ろうと試みているANY(朝日、日経、読売)
 ■ネット興隆に対し、それを機会として捉え、新たなビジネスモデルの模索で生き残りを図っている産経
 ■ネット興隆に対し、頑なに背を向け、ネットを敵視する姿勢を崩さない毎日変態新聞
 彼らのそれぞれのソリューションの結果は、確実に今年中に明らかになるでしょうが、とりあえず一番下の変態は破綻するでしょう。先日、「誰が給料を払ってくれるのか?」というエントリーを書きましたが、毎日変態新聞は「誰が給料を払ってくれるのか」を理解していないどころか、「給料を払ってくれる人」を敵に回しているのです。
 改めて考えると、凄い新聞社です、ここは。

後編に続く
http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/22494239.html