最近はすっかり新聞紙上から姿を消してしまった気がする「ジニ係数」ですが、大きな原因は昨年十月にIMFから報告書が出て、ジニ係数を調査した結果「日本の格差は世界的に極小」と評価されてしまったためだと思います。
 http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_03.html#IMF
 このときのIMFの調査で、結局のところ日本のジニ係数は幾つで、他の国はどうだったのか? どこのメディアも掲載していませんでしたので、実際のIMFのページに報告書を見に行ってみました。
 http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_03.html#GINI07
 ご覧頂いたとおり、日本のジニ係数はフランス、ドイツと並んで先進国では最低のレベルになっています。先進国の中ではやはりアメリカが断トツで数値が高いですが、それよりも右側の新興マーケットのジニ係数が軒並み高いのに目を奪われました。
 ブラジルや南アフリカは元々格差が大きかったのですが、最近の中国の格差拡大は凄いものがあります。さすがに暴動が年間に十万件ペースで起きている国だけのことはあります。中国の場合、最貧地域である貴州省と、最も富む上海の間で、平均所得の差が13倍にまで開いています。(ちなみに日本の場合、平均所得の差は最低の沖縄と最高の東京間で、2倍程度)中国を褒め称える人たちは、よほど中国のような超不平等格差社会が大好きなのでしょう。日本は見習いたくないものです。

 さて、このジニ係数ですが、日本で騒がれ始めた当初は、メディアや政治家が実にご都合主義な扱いをしていました。
 ジニ係数とはそもそも社会における所得分配の不平等を計る指標で、係数の値が0に近いほど格差が少ない状態、1に近いほど格差が大きい状態である事を意味します。例えばジニ係数0.5の場合、その国の25%の人々が所得の75%を得ている事を意味します。実は日本のジニ係数は、当初所得だとだいたいこの数値(0.5)になります。
 この「0.5」という数値だけを捉え、恥知らずな日本のメディアや政治家が、もう騒ぐこと、騒ぐこと。実際にはこの0.5は「当初所得」で、納税や社会保障給付後の「再配分所得」を考慮していません。つまり、所得再分配の効果を考慮していないのです。所得再分配後の日本のジニ係数は、IMFの調査どおり0.3前後になります。(当たり前ですが、IMFの調査における各国のジニ係数も、全て再配分所得です)
 しかし、そんな細かい説明は省き、メディアや政治家が「ジニ係数0.5!」「日本は格差社会!日本は格差社会!」のキャンペーンを繰り広げたわけです。
 民主党の前党首の前原氏は、何と国会で「日本のジニ係数は0.5!日本は格差社会」と無知を晒していましたし、現党首の小沢一郎氏も「日本は世界で最も格差のある国」と、現実を無視したキャンペーンで政府を糾弾していました。
 ちなみに、この小沢氏の主張は未だに彼のホームページに載っています。

 http://www.ozawa-ichiro.jp/massmedia/contents/appear/2007/ar20070208152420.html
「戦後日本の「中流社会」は、世界で最も豊かで、最も平等な社会と言われ、長い間、日本人の誇りで
もありました。ところが、小泉・安倍政権の6年間で、日本は世界で最も格差のある国になり、安定と安
全を誇ってきた日本社会は、根底から覆されようとしています。」

 一体、小沢氏はどこのパラレルワールドの日本に住んでいるのでしょうか?
 IMFの調査を見るまでも無く、日本が世界で最も安定した格差の「あまり無い」資本主義国家であるのは明らかです。先日も書きましたが、日本はたとえ下位10%の貧困層であっても、年間所得が世界第三位、人口5000万人以上の大国ではぶっちぎりでトップなのです。
 わたしは別に自民党のシンパでも何でもなく、健全な政権交代を強く望む一人ではありますが、こんな妄想的な持論を展開する人物が党首をつとめる政党には、さすがに政権を委ねたくはないですね。
 それとも「格差社会!格差社会!」と騒ぐ人々は、要するに格差を人為的に解消した社会、すなわち共産主義社会の実現でも目指しているのでしょうか? もしそうならば、日本で実現する可能性は限りなくゼロに近いので、朝日新聞が褒め称えた「地上の楽園」にでも移民する事をお奨めします。


*三橋貴明のホームページ「新世紀のビッグブラザーへ」を開設しました。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/index.htm