「ドル崩壊! 今、世界に何が起こっているのか?」が正式に発売になりました。
http://www.amazon.co.jp/dp/4883926583
http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/32119420

 ちょうど一年前くらいまででしょうか。世界のエコノミストたちの間で、所謂「デカップリング」論が大いに蔓延していたのは。
 ちなみに、デカップリング論とは「アメリカの経済が悪化しても、中国やインド、ロシア、中東などは高成長を続ける。アメリカ一国の経済が落ち込んだとしても、世界経済全体は成長を続ける」という、おいおい、世界の経常収支の赤字の八割をアメリカが引き受けている状況で、何言ってんだ、こら!という、今にして思えば完璧なお花畑理論でした。

http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_02.html#sekaikeijou
 
 結局のところ、経済のバブル化が明らかになり、崩壊を避けられなくなった状況で人々が考えることは、どんな時代でも似通ってしまうということだと思います。
今度は大丈夫さ。なぜなら、○×だから
 21世紀初頭のITバブル崩壊直前には、今にして思えば得体の知れない「ニューエコノミー論」なんてのが流行ったなあ(遠い目)

米国発、日欧・新興国へ 景気悪化、連鎖の懸念
http://www.nikkei.co.jp/kaigai/us/20080906D2M0601P06.html
 景気悪化の玉突きが世界経済の前に立ちはだかりだした。米国では金融不安が収まらないなかで、雇用の悪化が鮮明になった。日欧景気も失速、中国やインドの成長率も減速しだした。世界同時株安と長期金利低下、原油など商品の下落という「新たな3低」は、市場が不況の影に身構えだしたことを示している。
 政府部門と教育・医療部門のかさ上げ分を除くと、8月の非農業部門雇用者は前月比15万6000人の減少となる――。米大手証券メリルリンチはそう指摘する。米雇用悪化を受け、米市場関係者の間でインフレに代わって景気後退が主要なテーマとなっている。』

 例により日経の記事は冒頭のみしかオンラインで掲載していませんので、この報道の続きの要旨をいかにまとめます。

米企業がリストラを強め、米国の失業率が6.1%に上昇し、米国GDPの七割を占める個人消費の先行きが厳しくなっている。
■米消費減は米国向け輸出減少という形で、玉突きのようにアジア諸国に影を落としている。日中印などアジア十八カ国から米国へのコンテナの荷動きは、今年上半期、前年比7.4%減になった。
■特に六月の荷動きが18.4%減と、統計が始まって以来の減少で、中でも中国からの荷動きが20%強減少になった。
■2006年後半以降、米国の外需はGDP成長率を1.1%下支えした。が、7-9月期は世界的な需要の縮小で、米国の外需がこのまま増加するとは限らない
■資源を輸入に頼る東アジア諸国で、通貨や株価の下落が生じている。
商品相場も下落に転じた。市場では、原油価格の1バレル100ドル割れが視野に入った。商品高は調整局面を迎えた。
■低金利の円で資金を調達し、高金利通貨や商品で運用する円キャリー取引も解消を余儀なくされている。
■結果、外国為替市場でドルや円が上昇する一方、ユーロや資源国通貨の下落が目立つ

 この記事からは、まさに今日、世界経済のパラダイムシフトが起きていることが分かります。
 日本経済に絞って見てみると、円高及び商品高の頭打ちにより、CPI上昇率はせいぜい現状維持で推移するでしょう。但し、輸出に関しては、もはや成長の牽引車には成りえないと覚悟する必要がありそうです。日本経済が成長するには、成長の源泉を内需に求めるしかなく、その意味で福田首相が辞任し、内需拡大論者(に見える)である麻生氏が首相の地位に近づいているのは、非常にラッキーに思えます。
 間違っても、この状況で消費税を上げる財務省理論に組し、外需に成長の源泉を求める与謝野氏には首相になってもらいたくありません。もはや、「インフレなき世界経済の成長」の甘い夢の時代は終焉を迎えたのです。

 内需が大きな日本を除くアジア諸国は、残念ながら今後数年間はインフレ、通貨安、失業率上昇の悪夢に悩まされることになるでしょう。

アジア通貨動向(9日)=総じて下落、景気懸念の再燃と米ドルの上昇で
http://jp.reuters.com/article/domesticFunds/idJPnJS823869420080909
 9日午前のアジア通貨は、前日の上昇から一転し、総じて下落。米政府による政府系住宅金融機関(GSE)救済策発表の効果も薄れ、景気への懸念が再燃している。
 米ドルは、主要通貨バスケット.DXYに対して、1年ぶりの高値を記録。米政府によるGSEの連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)(FNM.N: 株価, 企業情報, レポート)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)(FRE.N: 株価, 企業情報, レポート)の救済策が、米ドルの上昇を支援している。
 前日には、米GSE救済策を受けて、リスク志向の復活や金融セクターへの信頼感回復から、アジア通貨や株式市場が上昇したが、きょうは早くも楽観的な見通しが後退した。
 韓国ウォン<KRW=>の下げがきつく、前日には対米ドルで過去10年で最大の上昇幅を記録したが、きょうは約2%安。米ドルの上昇と、ソウル株式市場の軟化が嫌気された。また、外国人が保有する大量の国債の償還期限を迎えるにあたり、資金流出懸念が広がっている。(中略)
 アジアの中銀がインフレ問題に対応しきれていないとの懸念が、アジア通貨の重しとなっている。輸出促進のため、通貨当局は故意に自国通貨を低水準にとどめているとの見方すら出ている。
 アジア各国の中銀による度重なるドル売り介入にもかかわらず、韓国ウォン<KRW=>は対米ドルで2カ月で9%下落したほか、フィリピンペソ<PHP=>は対米ドルで1カ月で4%下落。ペソはこの日、1米ドル=46.75ペソで推移している。(後略)』

 韓国当局は「九月危機は去った!」などと必死にキャンペーンを繰り返していますが、それこそ韓銀が為替介入しない限り通貨が下落していく今の状況こそが、まさしく「経済危機」なのです。
 韓国当局が本当に韓国経済は危機ではないと信じているのなら、「もはや為替介入はしない!」とでも宣言すればいいのです。為替市場は、韓国ウォンが上昇する可能性がゼロになったと判断し、韓国は一気に通貨危機に突入するでしょう。
 また、資源高の終焉は、通貨が下落していない国にとっては恩恵ですが、それよりも資源国(ロシア、中東など)の購買力が縮小する悪影響の方が大きいでしょう。
 特に、資源一本槍で影響力の拡大を図り、グルジアに侵攻したロシアは、戦略の変更を迫られる事になります。頭の良さだけは天下一品のプーチン氏のことですから、すでに戦略の変更も視野に入れているのではないでしょうか。ここ一ヶ月以内に、ロシアが西側諸国に妥協する姿が見れるような気が致します。
  
 世界経済のパラダイムシフトは、世界の歴史をも大きく揺り動かします。インターネットの普及により、日本人は以前よりも世界を視野に入れた戦略的な、マクロ的な思考ができるようになったと確信しています。メディアは相変わらずダメダメですけど、楽観的に考えれば、このような大変動の時代に、膨大な日本人が互いに高度なコミュニケーションを取れるというのは、ある意味チャンスのような気が致します。色々な意味で。

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